シスコン兄妹愛茶番劇
「星宿る海」の話は、央の国に住む者なら誰もが知っています。ただ、どこにあるのかは誰も知りません。
「海と言うからには、海なんだろうな」
央の国は海に面している部分が限られています。南側が少しと東側だけ。
「もし央の国だったら、場所が分かってると思わないか? 央の国の海沿いは、港や街がある。街道もある」
そうなのです。だからこそ、エレーヌは北の国、西の国、南の国、東の島国に旅をしようと思ったのです。
北の国は凍てつく寒さ。大地をつっきって北の端へ行くと、冬には凍ってしまう海があります。西の国との国境を越え、西に進むと鮮やかな海があります。波も気候も穏やかで美味しい木の実がたくさん採れる場所です。南の国の海は央の国との貿易が盛んです。央の国と東の島国との間には、ときに恐ろしく荒れ狂う海があります。
エレーヌは、東の島国との間の海のどこかではないかと思っています。激しい波に星々が吸い込まれる光景が容易に想像できるからです。ただ、星が生まれるなら、穏やかな海なのではないだろうかとも思います。
「昨日、王立図書館で調べたんだ」
「私はご老人に聞いたわ」
「家の書庫を探してみたの」
それぞれ、様々な方法で調べてくれていました。けれど、もっとも有力な情報は、食事をしたかどうかも忘れてしまう老人が自分の曽祖父から聞いたという話でした。
「羊飼いが道を教えてくれたんですって。ただ、ご老人のご家族は『また言ってる』って苦笑いしていたわ」
エレーヌは信じました。
「ありがとう。『また言ってる』ってことは、きっと、若いころから話していらっしゃったのね。手掛かりになると思う」
誰かが冷静に語ります。
「星が消滅して生まれる場所なんてないよ。だったら、船乗りはどうやって航海するんだ? オリオン座も北斗七星もずーっと同じ形じゃ……な……もごもご」
その発言は、途中で口を塞がれてしまいました。ファウストはいらんこと言う誰かの口を塞ぎながら被せます。
「北の国には、夜空に光のカーテンができるらしい。それのことじゃないかと思うんだ。光のカーテンに星が隠れて消え、カーテンから星が生まれる」
「「「すてき!」」」
その場にいた女の子達全員が、幻想的な空を見てみたいと思いました。
「北の国で星宿る海が見つからないことを祈るよ」
「そーだね。見つかったところで旅が終わってしまう」
「東の島国まで、バトン、繋いでよ」
4人の兄達は、星宿る海を口実に、エレーヌと旅をしたいだけでした。困ったものです。
その場にいる何人かはエレーヌよりもずっと大人で、繰り広げられている兄妹愛茶番劇をほほえましく見守っていました。




