男は権力と美女が好き
セカンドの言った通り、セカンド父はさすらい人でした。家を訪ねていくと、小屋。長期で生活している様子は全くありません。エレーヌ達5人が入ると、ぎゅうぎゅうでした。
「家は狭い方が楽なんだ。はっはっは」
細かいことを気にしなさそうに見えます。が、様々な国の情勢には精通していました。
「北の国は周辺から狙われている。南の方の穀倉地帯が特に。今では内部が腐って賄賂と汚職三昧。法治国家で名を馳せたのは遠い昔だ。今の妃を迎えてから、国王は妃一族の傀儡に成り下がった」
エレーヌは、セカンド父に最新情報を伝えました。
「実は、……(省略)……ということがありました。これから第1王子が即位し、北の国は変わると思います」
「ほう。そんなことが。エレーヌ様、あっぱれ。はっはっは」
ばん
「こほっこほっ」
背中を叩かれ、エレーヌはむせてしまいました。セカンドの骨が軋むハグに通ずるものがあります。
「おっと失礼。しかし男というものは権力を好きすぎる。実現したいことのために権力を使うのは分かるが、どーも男は、権力自体に固執する。でもって、それを利用する女ってのが一定数いる。北の国の妃は、民から搾り取った税で豪華絢爛な暮らしをしていたらしいじゃないか」
「きんきらきんでした」
「傾国の美女とはよく言ったものだな」
エレーヌは、万が一自分が女王になったとしても、傾国の男には気をつけようと思いました。
「一国を傾けるとは。理解に苦しみます」
とセカンド。
「男はな。理屈じゃなく本能が抑えられんときがあるもんだ。権力、金、戦、女。その点、女という生き物は現実的。男絡みで政権を左右させるなんてことはしないだろう。まあ、央の国の場合、その点を防ぐために子の父親が分からないとか、中央から遠ざけるといったことをするのだが」
「そうなのですか?」
エレーヌは初耳でした。てっきり、母親が個人的に望んで男達を遠ざけたのだと思っていました。
「ああ。オレの場合は、自分から去ったわけだが」
「では、央の国の女王は、特定の伴侶を選べないということですか?」
「そんなことはない。子供の父親でなければいい。それから、政治的に力を持つ可能性のある身分、つまり、貴族以外は問題ない。だから、もう後継者がいる女王は気に入った男を傍に置ける」
『女王だからってイケメン侍らせるなんて、そんなあからさまなことできないって』
エレーヌはそう思うのですが、央の国以外、国王は男。皆、美女を周りに侍らせています。西の国はその最たるところ。有名です。
「それにしても、父上。北の国の内情は筒抜けだったのですね。北の国は央の国の友好国。できれば父上の情報網を使って、北の国が立建て直すだろうことをお伝えください」
セカンドは北の国を案じました。
「それは危険だ。今がチャンスと攻め込まれる危険がある。……そうだな、恐ろしい病が流行っていて、北の国の空気を吸うと、体の中から腐ってしまうとでも噂を流そう」
「「ええっ」」
「実はこれ、昔、央の国の君らのお婆さんが使った方法だ。海から攻められそうになったとき、河口に死体を浮かべて噂を流した」
『なんて罰当たりで大胆な』
敵は逃げたそうです。エレーヌは戦わずして戦を収めた祖母の作戦にしびれました。
ふと、チェストの上に広げられた地図を見て、セカンドは尋ねます。
「父上はまた戦に行かれるのですか?」
「オレンジ海の海賊討伐の話が来ている。でもな、オレ、船酔いするんだよ。はっはっは」
セカンド父は、現在、ナッツ海で船酔い克服中とのこと。実績を積み、歳を重ねても尚、新しいことにチャレンジする向上心こそあっぱれです。
エレーヌ達は最後に忠告を受けました。「ハレムには気をつけろ」と。ハレムとは、国王の周りに侍る美女達がたーっくさんいる場所です。護衛と御者は「ハレム」という響きだけで、目をハートにし、じゅるるっとヨダレを垂らしました。
馬を休憩させるとき、セカンドはハレムについて説明します。
「お前達はハレムを勘違いしている」
主に、護衛と御者に。
「「勘違い、ですか?」」
「そーだ。ハレムのことをどう聞いている?」
「美女が山のようにいっぱいいて、国王が、その……あっはーんなことをするところ」
「国王は手当たり次第ヤリたい放題」
ジジはエレーヌの両耳を塞ぎます。が、聞こえています。
『ジジったら。それくらいの知識、私だってあるんだから』
「ハレムってのは、正当で優秀な次期国王を作る場所だ」
「「ほら、作るって」」
護衛と御者はお互いに肘で「うえ〜い」とつつきあいます。




