表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
乙女ですもの清らかに恋したい  作者: summer_afternoon
北の国

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/77

自分の存在が咎ならば


気づけば、護衛とジジは寒さに震えていました。御者はその場で駆け足をして寒さをしのいでいます。獣を注意する北の国の兵士は、空など全く見ていません。


狐火はかなり動きました。普段の夜空の部分が増えてきました。まだまだ緑色の光は広がっていましたが、この後は部屋の中から見ることにしました。


部屋の中、暖炉の前で体が溶けるように温まってきます。

護衛、御者、ジジは隣の部屋で休み、ファウストとエレーヌは2人、子供のころのように暖炉の前で並んで床に座りました。暖かいレモネードの入ったカップを床に置きました。お行儀が悪いので、大人になってからはしなくなったことの1つです。


「エレーヌ、狐火が出て良かった。救われたよ」

「救われた? お兄様が?」

「ああ」

「何か悩みでもあったのですか?」

「私は自分の存在が間違いではないかと、ずっと思っていた」

「そんなはずないじゃないですか。お兄様は、誰よりも……」


ファウストは自分が女に生まれなかったことを呪っていました。自分が女だったなら、母親は1人目の子で後継を産むという使命から解放されたのです。


「エレーヌは、私の父親が誰か知ってるかい?」


父親達の話は城内でタブー。


「いえ」


ファウストの父親は、プレイボーイと名高い貴族でした。実名を聞いて驚きました。今では辺境の地の老人だからです。

央の国は女王の国。女王は自分の娘に後継となる女の子を産ませなければなりません。相手は問いません。遥か昔、女性が集落の外の男と関係して身籠るという形でした。それを受け継いでいるのですから。

エレーヌの母親は、14歳のとき、女性の扱いに慣れているというだけの理由でプレイボーイと名高い、要するに、ヤリチン野郎をあてがわれました。女王はヤリチン野郎と部屋に軟禁状態。妊娠の兆候が現れるまで部屋を出ることが許されませんでした。


「地獄だったと思うよ。私はそれを知ったとき、母の顔をまともに見られなかった」


ファウストが生まれました。


「それでも母は私に優しかった。いつも『貴方が男の子でよかった』と言ってくれたんだ。……。ごめん、エレーヌ。こんな言葉」


母親は、ファウストの父親を拒みました。そして、城への出入りを禁じました。それでもファウストの父親はますますモテ、城以外で開かれる舞踏会では引っぱりだこでした。王家に選ばれたというハクがついたのです。

母親は、女王として即位すると、ファウストの父親を辺境の地へ追いやりました。それほどまでに辛い経験だったのかもしれません。


ファウストは父親のようになりたくないと思いました。モテるとかチャラいとか(ヤリチン野郎とか)、そういった部類に「絶対なるまい」と自分を律しました。勉学に励み、心身を鍛え、人間としての品性を身につけようと切磋琢磨しました。


「お兄様は、望んだ通りの人になっていると思います」

「エレーヌは優しいね。そう言ってくれてありがとう」


どれだけ頑張っても、ファウストにはゴールが見えませんでした。女王となった母親の接し方は変わらず慈愛に満ちていました。しかしファウストは、いつもどこかで自分の存在が(とが)である気がしていたのです。


「今夜、空からの緑の光を受けて、許された気がしたんだ。それはただの気のせいとか勘違いかもしれない。けれど、波が凪ぐように、とても心が楽になった」


それを聞いたエレーヌは、母親にも狐火を見せたいと思いました。


「エレーヌ……。私は決して権力や王座が欲しいわけじゃない」


ファウストはそう前置きしてから語りました。


「私は、女系継承を考え直してもいいんじゃないかと思ってる。国の統治が、1人の不幸の上に成り立つのは間違いだ」

「お兄様、そこだけは強硬派すら意見しない部分ではありませんか」


それは全ての人が決して触れない、央の国の聖域です。


「エレーヌ自身が女王になることを望まないなら、私は母上を脅してでも、女系継承という制度を変える。央の国を取ることも辞さない。それが私のエレーヌへの愛だ」

「……お兄様」


なんという深い愛でしょう。エレーヌは、ファウストの正義に満ちた愛の前で怯みました。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ