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乙女ですもの清らかに恋したい  作者: summer_afternoon


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2/15

不治の病に罹った兄達

「え、いいんですか?!」

「いーんじゃない? 星宿る海が見つかるとは思えないけど。貴方は、いずれ、この央の国を治める身。いろんな国を見てくるのはいいんじゃないかしら。でもね、1人じゃ危ないわ」


北の国には1番目の兄、西の国には2番目の兄、南の国には3番目の兄、東の島国には4番目の兄が一緒に行くことになりました。兄達には勉学や公務があるので分担です。兄達の分担は、将来、それぞれがその国の外交を主に担当する、という見聞を深める意味もありました。


こうしてエレーヌは、星宿る海を探しに行くことになりました。


「旅先で恋してできちゃったら儲けもんだから! 頑張りなさい」


女王の見送りの言葉に辟易しながら、エレーヌは旅立ちました。




最初の旅のメンバーは5人です。エレーヌ、1番目の兄のファウスト、護衛、御者、侍女。

季節は秋。耕された小麦畑が広がり、遠くに黄金色のブドウ畑が見えます。


「今年は小麦もブドウも豊作だ。いいワインができるね」


車窓から景色を眺め、ファウストは眩しさに目を細めました。

エレーヌは大人になりたくはありませんが、お酒には興味があります。恋愛小説に「酒の上での過ち」という言葉があったからです。とても猥雑(わいざつ)な響きでした。お酒によって、いったい体にどのような変化が起こるのか興味があります。


「ワインを飲んでみたいな」


そう言うエレーヌにファウストは微笑みます。


「あと何年かしたら、だね。ほら、そんな口を尖らせて。ああ、かわいい」


4人の兄達は、同じ不治の病に侵されていました。ファウストは、兄弟全員がその病だと知っています。なので、形式だけの挨拶しかできなかった他の兄弟達を思って、ゆっくり話す機会を設けてありました。


最初の宿は王家の別荘です。見慣れた建物に向かう馬車に、エレーヌは困ってしまいました。


「お兄様、これではお忍びになりません。せっかく変装までしてるのに」

「最初から(わら)のベッドに寝るつもりかい? これから厳しい旅が始まるんだ。まずは、星宿る海がどこにあるのか、情報を集めよう」

「はい。」

「それにエレーヌ、出発が急すぎて、別れを惜しむ時間もなかったんだ」


旅は突然でした。エレーヌの逃亡が失敗した3日後だったのです。逃亡の次の日には王立学園の友達や先生方、教会やお世話になっている方々に挨拶をし、その間に侍女が荷造りするという状態でした。2日後には友達とのお茶を飲みながらの送別会。その次の日、つまり今日の朝が出発でした。


別荘では、すでにパーティが始まっていました。

親しい友達は学園を休んで朝からこちらに向かいました。朝、見送りをしてくれた3人の兄達は、馬をとばして来ていました。


『だからか』


エレーヌはやっと、自分達の馬車がちんたら走っていた訳を知りました。


「エレーヌ!」


がばっ


『う”』


2番目の兄は馬車から降りたエレーヌを抱きしめました。容赦のないハグにエレーヌの骨が軋みます。


「君が危険な目に遭うんじゃないかと心配で、このまま連れ戻したいくらいだよ」


3番目の兄は、ほんのり涙を浮かべ、揺れる瞳でエレーヌを見つめます。


「な、この髪、おもしろいな」


4番目の兄は、エレーヌのポニーテールをくりんくりん触って遊びます。

4人の兄達が揃いも揃って患っているのは、シスターコンプレクスという病でした。本人達に自覚症状はありますが、誰も治す気はありません。


4人の兄達の麗しさと愛情深さに、その場にいる女の子達が「はぁぁぁ」とうっとりです。エレーヌの女友達は、兄達やその男友達に密かに色めき立っています。


食事をしながらの談話が始まりました。もちろんテーマは「星宿る海」。


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