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乙女ですもの清らかに恋したい  作者: summer_afternoon


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13/15

ハニトラ人材不足です

(おう)の国と北の国は、現在概ね良好な関係です。しかし、長い歴史の中には大きな戦争が何回もありました。隣国同士とはそういうものです。北の国は、国土の北半分が荒地で、太陽の恵みが少なく、作物を育てることが難しいのです。なんとか南へ国土を広げようと画策しています。周辺諸国の情報はそのために必要でした。なのでハニートラップまで使うのでしょう。


ハニトラ男は、エレーヌではなくジジを狙っているようです。


「城内について簡単に説明しておきます」


と、ジジに蝋燭(ろうそく)でゆらゆら揺れる瞳を傾けます。ジジは冷静でした。


「先に、エレーヌ様をお部屋に」

「そうですね。では、その後に」


ドアが開けられ、エレーヌの部屋の蝋燭に火が灯されました。豪華で広い部屋。天井には絵が描かれています。

ジジは、きびきびとベッド、ベッドの下、クローゼットの中、窓の施錠を確認します。そして、部屋を出てドアを閉じました。


『ハニトラ!』


エレーヌは興味津々です。大急ぎでドアにぴたりと耳をくっつけました。


「OK? じゃ、君の部屋で説明しよう」

『きゃー、部屋へ入ろうとしてる』

「いえ、ここでお願いします」

「そうだね。この廊下の突き当たりを左に曲がったところにレストルームがある」

「はい」

「ここから見えるドアは中庭へ出る。ほら、見てごらん?」

「暗くて見えません」

「そうかな。もういちど、じっと」


ばしっ


『なんの音?』

「失礼。」

「な、何をするんだ! 唇が腫れるじゃないか」

「では、その汚い唇とやらを近づけないでください」

『へ? 唇を近づけた?』

「不意打ちでキスすれば、大抵の女は落ちるのに」

『ええーっ。キスしようとしたの?』

「大抵の女でなくて申し訳ありません」

「君、綺麗なのに男慣れしてないのかな? こーゆーときは、さりげなくキスしながら部屋の中へもつれ込むもんなんだよ」

「北の国は人材不足ですね」

「は?」

「その程度で全ての女が落ちると思ってらっしゃるなんて」

「なっ」

「私は、いつも美形を見ております。美しき血筋と名高い央の国の王族イケメン、護衛&御者は顔採用と囁かれるほど」

「顔採用なのか?」

「笑止。胸板もフェロモンも不足」

「えっ、部屋へは……」

「顔変えて出直してきな」


足音が1人分、とぼとぼと遠のいていきました。さすがジジです。


エレーヌは、蝋燭を消してベッドに横になりました。しばらくすると、ジジの声で目覚めました。


「エレーヌ様はお休みになられています」


部屋の外から、張りのある大きな声が聞こえます。またまたエレーヌは耳をドアにくっつけました。

答えたのは小さなぼそぼそした男の声でした。


「私は北の国の王子。控えなさい」

「王子ではございません」


エレーヌは北の国の王族の家系図を思い浮かべます。王子はいるはずです。亡くなった先の妃の息子が3人。


「王子も同然だよ」

『同然ってことは、え、王子じゃないの?』

「3人の王子はこの城からお出になりました。この城にいらっしゃるのは、現在のお妃様の連れ子です」

『え、ちょっと待って。妃って20代に見えたんだけど。聞こえるの、大人の声じゃん。妃っていったい何歳? @_@』

「なーんだ。自己紹介するまでもないのか。じゃ話が早い。君は知らぬふりをすればいいだけ」

「エレーヌ様は疲れています」

「だいじょーぶ。だったらすぐ済ませる。仕込むだけだから」

『? 何を仕込むのかしら』

「ご冗談が過ぎます」

「そっちだって有難いだろ? 女の子が生まれたらラッキーじゃん」

『ひっ』


目的を知ったエレーヌは固まりました。ハニトラどころではありません。犯罪です。


「切り捨てますよ。王族でもない男を切ったなら、正当に裁判が行われるはずです。北の国は厳格な法治国家」

「ほ、ほ、ほ、本当に切ることないじゃないか!」


どたどたたたたた


廊下を走って逃げていく足音が聞こえました。エレーヌは思わずドアを開けます。床には、金髪がとっ散らかっていました。


「エレーヌ様」

「ジジ、ありがとう」


エレーヌは全てを理解したという視線を送りました。

と、そのときです。護衛が走ってきました。


「ご無事でしたか、エレーヌ様。おっと。さっすがジジ」


護衛は床にとっ散らかった金髪を見て、ジジが害獣駆除をしたと察しました。護衛がこちらに来たということは、


「お兄様に何かあったのですか?」

「ベッドに真っ裸の女がいました」

「大変!」


央の国の王子がスキャンダルに見舞われるなどもってのほか。エレーヌは走り出しました。


「お兄様」

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