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乙女ですもの清らかに恋したい  作者: summer_afternoon


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10/16

皆さんお強いのですね

成金さんは、目ざとくファウストとエレーヌをロックオン。


「ご一行は、(おう)の国からいらっしゃったんですな? ふぉっふぉっふぉ」


どこか歯が抜けているのか、こもったような笑い声です。


「はいそうです」

「そんな(なり)をしておいでだが、実は高貴な方だろう。他の人を誤魔化せても、ワシの目は誤魔化せん。なんたって、ワシは金目のもの、、、うぉっほん、人を見る目がある。ふぉっふぉっふぉ」

「いえいえ、ただの旅の者です」

「では、アドバイスをしておこう。明らかに主人2人と共の者3人。服装を変えたところでバレバレだ。2人は色が白い。野良仕事とは無縁。おおかた、2人の屈強な男は護衛、女も相当な使い手。隙がない。高位の貴族か王族といったところ。んーむ。王族は出歩かない。貴族。ふぉっふぉっふぉ。どーだ?」

『ブー。ハズレ』


エレーヌは心の中でジャッジしました。侍女は同い年。有能で清楚で品の良い女の子。エレーヌの部屋に花を生けてくれるような手弱女(たおやめ)。そして、護衛は1人だけなのですから。


そこへ、ガラの悪い男達が10人ほどやってきました。男達は、成金さんとエレーヌ達をぐるっと囲みます。


「よーよーよーよー。ピンハネジジイ」

「自分の懐だけ温っめてんじゃねーよ」

「オレらから取った金、返せや!」

「何を言ってるんだ。ワシは役人の仲介をしてやっただけ」

「つるんでる役人からも、奪いに行くさ」

「こ、こら、こんな往来で、誰か誰か」

「ははは、誰も来ねーよ」

「自分の身がかわいいさ」

「オレらは牢出た前科者」


しゅぱぱぱ しゅぱっ


御者と護衛が多勢を相手にします。

侍女はエレーヌとファウストをしっかりガードし、迫り来る男がいると、


どかっ


長いスカートを翻し、顔面に蹴り。男は5mほどフッ飛びました。

3人は、あっという間に10人ほどをやっつけました。全ては瞬き10回分ほどの間に起こり、エレーヌが「なにごと?」ときょとんしたときには、ごろりごろりごろごろり、と地面に男達が転がっていました。


驚いたのは成金さんです。


「なんと素晴らしい。ありがとうございます! 何かお礼をさせてください」


成金さんは、ふぉっふぉっふぉと笑うことも忘れ、ファウストの前に(ひざまず)きました。もちろんファウストは断りました。そのとき、家の中から使用人達が出てきて、今更「旦那様、大丈夫でしたか?」と成金さんを心配します。


「この役立たずめらが! この方々をおもてなししろ。失礼のないように。きっと相当な高位の、、、ワシを助けてくださった命の恩人だ」

「「「はい」」」


使用人達は、エレーヌ達の手から荷物を「お持ちします」と取り上げて屋敷の中へ持っていってしまいます。


「困った。しかし、ちょうど馬にも休憩が必要だ。お言葉に甘えることにしよう」

『荷物、持ってかれちゃったもんね』


エレーヌは侍女をなん度も見ました。しゃなりしゃなりと歩く姿は百合の花。さきほどの見事な蹴りは幻だったのでしょうか。


「実は強いの?」


エレーヌは侍女にこっそり尋ねました。


「とんでもありません」

「さっき、守ってくれてありがとう」

「お目汚しを」


侍女の名は、ジジ。1年ほど前からエレーヌの侍女の1人として働いています。


「ジジ、貴方は何者なの?」

「誰が聞いているか分かりません。それは別のときにお話しいたします」


おもてなしが始まりました。成金さんは、金粉を散らしたお酒を勧めてきます。エレーヌとジジはまだ未成年です。ファウストが断ってくれました。


長いテーブルに料理が運ばれてきます。突然の来客に、厨房はてんやわんやでしょう。ばたばたしている声が聞こえてきます。


「すぐ出せるのは果物だ。ブドウ出して。その間に料理を」

「はい。お皿は。はい、これですね」

「昨日のボルシチを温めなおせ。パンは硬くなったところを切り落とせ」

「デザートを作り始めないと、冷やす時間がありません」

「任せた。いそげ。そっち、金粉を忘れるな」


どうやら金粉はこだわりのようです。


エレーヌは金粉の浮いたブドウのジュースを飲みました。金粉に味はありません。


『もったいない』


感想はその一言に尽きます。

ファウストは情報収集を始めました。


「金は年間どれくらい採れるのですか?」


とか


「役人に人夫を紹介しているのですか?」


とか


「その人達は、元は農民ですか?」


とか


「採掘量のどれくらいを税として納めているのですか?」


など。もちろん、様々な会話の中に巧妙に紛れ込んでいます。


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