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終末の人々  作者: こっこ治郎
第一章 終末の科学者
2/3

加賀見 冬雪(中)

『えーこれを見ているそこの君、多分はじめましてではないだろう?1回目の映像を見て、来てくれたと思って話を進めるけどいいな?


 ――というわけで、前の映像ぶりになるだろう。冬雪だ。おそらく話の続きが気になってきた来てくれたのか?それともこれを生き甲斐にしてくれたか?まあ今の私には分からないから一旦いいか。


 ああそうだ忘れる前に、この先を少し行ったところに川がある。体を流したり水を飲みたかったら行くといい。


 ――じゃあ前の映像で話すと言っていた面白い話だが……そんなものはない!けどまあ2個くらいなんの面白みもない話をするとしようか。まず1個目はとある科学者の話だ。


 あるところに一人の科学者がいた。その科学者は天才と呼ぶにふさわしき才能と知恵を持っていた。

 科学者は世紀の大発見や大発明を幾度もやってのけた。科学者は満たされていた。万能感に支配されていた。


 ……けどその科学者はとある研究で失敗してしまった。絶望してしまった。信じてしまった。何もかもできると思っていたのに裏切られてしまった。


 絶望と憤り、その2つの感情が交差する。起きている時は子供が癇癪を起こした時みたいに泣いて、怒って、泣き喚いて、最後は布団に包まり穏やかな表情で眠りに着く。そんな怠惰な生活を繰り返していた。


 涙が枯れてもう泣くことができなくなった後、科学者は絵物語の世界へ逃げるように足を運んだ。

 今まで非科学的で、非現実的ゆえ科学者は絵物語をあまり好まなかった。しかしその時の科学者は現実逃避をするための手段を選ぶほどの余裕は無かった。

 

 そんな中でその科学者は一つの物語に手を出した。人が永遠に生きれる技術。禁忌と呼ばれた技術。人として、科学者としての終わりが書かれた物語にね。


 それは絵空事だった。空想に少しの現実を入れただけのファンタジーだった。

 その科学者にはやる意味のない、文字通り無意味な研究だった。しかし科学者はそれに異様に惹かれてしまった。


 そしてその科学者は作ってしまった。作れてしまったんだよ。禁忌と呼ばれるそれを。絵空事だったそれを。


 ……けどそれは動かなかった。

 設計は完璧で、理論上間違いはなく、動かないのは誰から見てもありえない完成度で。完璧を体現しているようだった。


 けどそれは動かなかった。

 そしてその後すぐに科学者は死んだ。


 しかし、問題はその後だった。禁忌と呼ばれるそれが動き出した。科学者が死んだ数十年後に。そしてそれは最後にこう言った。

 「そういうことだったのか」とね


 よし。1個目の話終了。さて少し休憩がてら音楽でも聞こうか。

 ……ん?ああこのレコードは作ってもらったんだ。いいだろ?私が会った人の中で作曲家がいてね、その人に無理言って作ってもらったんだ。


 他にも色んな人と会ったんだ。

 ――じゃあ2個目はこの作曲家の人たちの話をするとしようかな。


 私は人の作るものが好きだった。もちろん自分で作るのも好きだがね。人の作ったものにはその者の心が詰まっていると感じるんだ。

 私は科学者だがその前にそんなことを考えるのが好きなロマンチストだったんだ。


 けどこんな世界じゃもう歌なんて聴けないと思っていた。私は歌の才能がなかったから自分で作ることは考えなかった。


 けどそんな時に会ったのがこのレコードを私に作ってくれた人だ。その人の名前は確か……「不破 晴也」さんだったかな?

 晴也さんは作曲と演奏をして、もう一人妹さんが歌を歌ってくれた。妹さんの名前は「不破 月那」さんだったはず。


 素晴らしい兄妹だったよ。お互いにない才能をお互いで補ってまさに理想の兄妹像みたいなものだった。

 彼らには希望と夢があった。こんな世界でも十分に生きていける力も持ち合わせていた。だから私は彼らに知恵を貸した。


 他にもいろんな人に知恵を貸した。つなぐために生きる人。自分の欲のためだけに生きる人。自分の理想に近づく人。

 彼ら、彼女らも等しく希望と夢に満ち溢れていた。それはそれは大層輝かしく光っていた。


 ふう。一気に喋りすぎたな。さすがに疲れた。

 じゃあこの映像もここまでとしよう。実は最初に話した川の近くに私の研究所があってねそこで色々話をしよう。できるだけ早く来てくれよ?


 君と会うのが待ち切れない。幸運を祈る』

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