レベル20万
私は宿に入りすぐ張り紙の内容について尋ねた。
「張り紙に書かれていた個人の能力によって無料で泊まることができるシステムを利用したいんですけれど...」
「わかりました。」
そうして「少々お待ちください」と言われ、受付奥でレベルカードを読み始めた。
すると、奥から『はぁ!?』と声が聞こえた。
「このムギって言う方のレベル、世界記録大幅更新ですよ!」
ムギのレベルについて話しているみたいだ。
ただ、入口には能力と書いてあったし、異世界には今日来たばかりでレベルは1なはずなのだが、また別のレベルがあるのだろうか。
「レベルカードの提示ありがとうございます!ムギという方、お強いですね!いつも町を守ってくださりありがとうございます!」
なぜ能力だけで無料になると思ったら、この町を守ってくれたお礼とかの意味合いを含めている様子だ。
申し訳ないから明日そこら辺の敵を頑張って倒そうと思った。
でもどうやって倒そう...武器とか持ってないけど。
宿に着いた私はさっき案内所でもらったレベルカードを確かめることにした。
まずは私のレベルカードから確認してみたら、冒頭から引っかかるところがあった。
名前:マコ・ニャン
「いや、確かに『にゃぁおーん』じゃなくて、名前も『マコ』だけど...」
英語風の表記はいいとしよう。
おそらく、さっき私が「にゃんと鳴いた」と言って『にゃん』にしたのだろう。
そもそもなぜペットの鳴き声を拾って名づけようとしたのか気になるが、ムギという名前も元は私が勝手に付けたし、さらにムギが名付け親と考えれば悪くないのではないのだろうか───という猫の下僕であった。
次にレベルだ。
レベル:21
体力:520
攻撃力:52
防御力:31
魔力量:16
固有能力:私の宝物・ムギがどこに行っても居場所がわかり、連れ戻すことができる。
私のレベルはアズーロさんから聞いた話、ここら辺の平均レベルが20だと聞いたから平均程だ。
しかも、ムギが万が一どこかに行っても連れ戻すことができる固有能力はありがたい。
レベルも私の年齢も21だから、レベル=年齢参照みたいだ。
つまり3歳のムギはレベル3になるのだろうか?
ということでムギの巻物のようなレベルカードも見てみることにした。
名前:ムギ
レベル:200,032
「えっと?20万?なんで?」
私は驚いて目を見開いた。何度も確かめるように見返した。
草原の先にあった危険とされている森でさえも推定50レベルだというのに、その4000倍も上回る20万だというのだ。
しかし20万という数字、どこかで聞いたことがある気がした。
「もしかしたら、記入ミスかもしれない。だってこんなに横に長かったら間違えている可能性もあるし!」
私は続きを見た。
しかし___
体力:4,000,640
攻撃力:800,128(能力補正により二倍)
防御力:300,048
魔力量:200,042(能力補正により二倍)
私と比べたら霞むくらいステータスが高くなっていた。
なぜこんなにステータスが?と思った時、下に何か書いてあることに気づいた。
すると...
固有能力:愛で育む・1人に愛されるごとにレベルが1上がる
固有能力を見たとき、私ははっとした。
いままで聞き覚えがあると思っていたものは、異世界に行く前、つまり現世のフォロワーの数だったのだ。
文章にも書いてあるとおり、つまりムギは愛された人数分だけレベルがあがるということだ。
「まさか、ムギにそんな力が...」
それよりも、よく見てみると固有能力の下に『獲得能力』と書いてあることに気づいた。
説明には『レベルが上がった際に、確率で獲得できる能力』だそうだ。
つまり、なぜか私はもらえていないがムギの場合はレベルが上がれば上がるほど能力がもらえるらしい。
「もしかして、この獲得能力のせいでレベルカードが長くなっているってこと!?」
能力:ムギムギ・力2倍
能力:食事補正・食事から悪い影響を受けない
能力:負けられない猫・HPが2分の一になった時、ステータス10倍
など、挙げても挙げてもきりがないほどの量だった。
というか能力も一つ一つ絶対に強い。
その中に何個か気になるところがあった。
能力:翻訳・飼い主が読めるように周りのものが翻訳される
能力:常識知能・知能が人並みになる
つまり、この世界の言語が日本語だったのも、すべてムギの能力だったわけだ。
さらに喋らなかったからわからなかったが、知能も人間くらいまで上がっているらしい。
ただ、見た目はいつも通りのもふもふでかわいらしい見た目の猫だ。
そういう雰囲気も貫禄もないから、強いとは思えない。
ただ、まずは寝ようと私はベッドに大の字で寝転がった。
2025/07/02 一部誤った内容があったので修正しました。