ヴェーラ国へ
100PVありがとうございます!
「あの森はなぜ危険なんですか?もしかして、迷うとか?」
私は港町に行く道中にアズーロさんに質問した。
「実は森の奥に推定レベル50越えのモンスターが大量にいるんですよ。そして、この周辺の人たちは平均レベルが20なので到底太刀打ちできません。なのでほとんどの人は入らないどころか、近寄らないようにしているんですよ。」
レベル...ゲームでよくある強さを示す数値だろう。
町の名前や人名は英語っぽいけど、日本語が通じてほっとした。
「私にも質問をさせてください。あなたの名前は?」
私が質問の答えに相づちを打つと、今度はアズーロさんから質問が来た。
「大杓 彩子です。彩子って呼んでください!」
「彩子さんですね!どこからきたのですか?」
正直に言っていいのだろうか、と少し無言の間を入れて私はそのまま現世の母国の名前を使った。
「日本...っていう村から来ました!辺境ですので、知らないと思いますけど...」
国にすると地理に詳しい場合嘘って言われる可能性があるから村ということにする。
「ニホンですか...おっしゃった通り知らないです。」
当然ないみたいだ。
するとムギは私に抱きかかえられながらあくびをした。
日差しを浴びて、心地よさそうにまばたきを繰り返した。
「かわいらしいですね~。ペットですか?」
アズーロさんが微笑みながら言った。
「そうです!ムギって言います!」
ムギはアズーロさんをじっと見つめながら、返事をするようにまばたきをした。
それに応じて彼も手を振った。
この世界のことをいろいろ聞いていると、ヴェーラ国に着いた。
「では、私はここで失礼します。もし国自体初めてであればあちらの案内所に行ってさっき紹介した『レベルカード』を作ることをおすすめしますよ。」
レベルカードとは、強さを示す名刺のようなものでお金を稼いだり自分の証明などに役立つらしい。
具体的にはレベルを測ってゲームのステータスにある体力や魔力量などを知れるそうだ。
「わかりました!ありがとうございます!」
私がお礼を言うと、アズーロさんは入口から続いている右の通路に進んだ。
当然初めてなので、私は案内所に行くことにした。
外観は白がベースで、文字は「ヴェーラ国案内所」と書いてある。
「こんにちはぁー」
早速中に入ると受付の人が眠そうなで言った。
「こんにちは!レベルカードを作りたいんですけどお願いできますか?」
と私が言った矢先、受付の人がカウンターのテーブルで寝落ちしてしまった。
おそらく睡眠不足だろうか。
「すいません!レベルカードを作ることは可能でしょうか!?」
私が尋ねると、眠気を引きずるように頭から体を起こした。
「あぁ、ごめんなさい。2日連続寝てなくてすっっっごく眠いんですよ...で、レベルカードでしたっけ?」
やはり睡眠不足のようだ。
そういえば、私も仕事帰りで異世界に行ったから眠い。
手続きをしたら宿屋か何かに泊まって、早めに寝よう。
「はい!手続きとかありますか?」
「手続きは名前とレベル測定だけです。名前を聞く前にまずはレベル測定ですが、ペットをお連れになられているようなのでペットの測定も行いますか?」
どうやらムギのレベル測定もできるらしい。
「お願いします!」
「では、そのままでレベル測定を行います。動かないでくださいね。」
と言って何かを唱え始めた。
そうすると触れていないのにも関わらずペンが動き、カードと横に長い紙を広げ高速で何かを書き始めた。
___10分ほど経ったがまだ終わらない。
そろそろ端から端まで書き終わりそうだが、受付の人は半分眠りながらも「長いな...」と小声で呟き、普段はこんなに長くないとわかる。
ムギも飽きたのか膝の上で寝ている。
ただ、記入のペースが落ちることはなく、常に一定の速さで書き続けている。
そもそも、カードなのになぜか片方だけ紙になっているところ何かある気がする。
そして、右端まで書き終わるとペンが縦向きのまま止まり、横に倒れた。
終わったと気づくと、受付の人とムギは同時に目を開けた。
「測定が終了しました。次に、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「わかりました。こちらのペットの名前はムギで、私は...」
「にゃぁおーん」
自分の名前を言おうとした瞬間、ムギが鳴いた。
「ペットの名前がムギで、あなたのお名前は『にゃぁおーん』ですか?」
突然言われたので私は戸惑いつつも自分の名前をもう一度言おうとした。
「いえ、にゃんと鳴いただけなので違います。私の名前は...」
すると今度は奥からガラガラと何かが雪崩のように落ちる音がなり、ムギはびっくりして目を丸くさせた。
「あちゃー...」
音がなった先にはには新人のような人が、やってしまったという顔をしていた。
「どうした?」
「先輩、ごめんなさい!この前紙を仕入れたじゃないですか。その箱が落ちて...」
「おまえそういうのよくミスするよな~。わかった、受付交代してくれ。眠いから箱戻し終わったら寝る。」
「わかりました。お願いします!」
そして受付の椅子に座った。
「お名前はもう二人とも聞きましたので大丈夫ですよ。」
「本当ですか!?名前は『にゃぁおーん』じゃないですよ!彩子です!」
「お名前は彩子さんですね。わかりました。」
なんとか名前を訂正できてよかった。
というか、紙とペン渡して書かせてほしい。
「では、こちらで手続き完了です。こちらがレベルカードです。」
と言ってカードと長い巻物のようなものを渡された。
「ありがとうございます!そういえば宿屋はどこにありますか?」
「宿屋はすぐ隣ですよ。」
「わかりました!」と言って受付を離れた。
そうして出て右隣に宿屋を見つけた。
(宿屋いくらかな...いくら...ちょっと待って!?)
そういえば、お金がないことに気づいた。
当然、お金がなければ泊まることができないだろう。
その時、入口の右に張り紙を見つけた。
内容は『レベルカードを提示した場合、その個人の能力によって無料で泊まることができます。興味のある方は受付まで』と書いてあった。
個人の能力ということは、レベルカードで優秀かどうかを決めるということだろうか。
___ただ、お金がないのでこれに懸けるしかない。