表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/28

その先で、待っているもの

鐘が、鳴っている。


細く高い尖塔(せんとう)(いただき)を支える四本の柱の間で揺れ、陽の光が当たると金色に輝く。


「ちょいと、そんなところで立ち止まらないでおくれ。間に合わなくなってしまうよ」


背後からの言葉で、僕は往来の只中、ひとり立ち尽くしていたことに気付かされた。


反射的に謝って、脇へと移動する。

そのせいで人波に乱れが生じたようで他からも同じような文句が出てしまい、何度も謝罪の言葉を繰り返す。


すれ違う際に見た姿は老婆だった。

一枚の白布から織り上げたような服を纏っており、肌と髪も同じような色だったが、瞳だけが赤く印象に残った。


通りかかる他の人々も似たような格好や人種のように見える。


言葉が通じたのかわからないが、相手の言葉が理解出来たのだから問題は無かっただろう。


やがて、老婆は人波に紛れて見えなくなった。


皆は、鐘の音のする方を見上げるような姿勢で足早に進んでいるようだ。


ここは、どこだろう。

世界の、どこかの国なのか。

気が付いたら、ここに立っていた。


それにしても言葉が理解出来たのは何故なのだろう。


往来(おうらい)の隅に寄り、立ち止まってこの状況を把握しようとするが、絶え間なく後から人が現れ、その川の流れのような一方的な勢いに押されて前方へと進んで行ってしまう。


両脇には石造りの建物が続いている。軒先が広く開いており、品物が並べられていた。

また、建物のない路上には木製の台を置いたり、敷物を地面に敷いただけの仮設の店舗を広げているものも多いようだ。


ここは商店街か市場だろうか。


鐘の音に釣られて、店主が飛び出して来る姿も見かけられた。


しばらく流れに身を任せていると、人々は壁にあるアーチ型の門扉に吸い込まれて行くのがわかった。

僕もそちらへと近づいてゆく。


その先には、何が待っているのだろう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ