たどり着いた場所で、空を見上げる
そこには、山小屋のような建物があった。
転倒しそうなので、自転車を降り、押し歩きで進む。
樹木の間隔が、疎になり出したので雨粒が多く当たるようになってきた。密集していたのは道路際だけだったようだ。
その先に建物が見えた。
外観は、窓ガラス以外は、木材で作られているように見える。
三角屋根の一階建てで、山型の側面がこちらを向いている。そこにも窓があるので、屋根裏部屋があるのかもしれない。
玄関前はバルコニーになっていて日除けのような別の屋根がその上まで届いていた。
森は背後まで迫っているようなので、脇道はこの建物のためにあるのだろう。
案内看板があったのだから住宅では無く店舗と思われる。窓が暗いので今日は休業日か、現在は空き店舗なのかもしれない。
どちらにせよ一時的に雨宿りは出来そうだ。
少なくとも幽霊屋敷が待ち受けていたわけでは無かった。
自転車は木立に立てかけて、そちらへ向かって行く。
車が数台止められるような草地のスペースを横切ろうと踏み出した途端、そこは泥沼のようになっていた。
靴のなかにも水が浸み出してくる。
木製のバルコニーは、地面より半階分程高くなっていて、外階段が中央にあり、全体が手すりで囲まれている。
階段には屋根が届いていないので、両手を広げて手摺りを掴み、片足ずつ登って行く。柔らかい部分があったので木が弱っているのかもしれない。
バルコニーが泥に塗れないように、スニーカーと一緒に靴下も脱ぎ、裸足になる。
脱いだ靴は外階段一番上の段で雨曝しだ。
正面に扉がある。
上半分はガラス戸になっているが内側のカーテンは引かれていた。
右手側にあるドアノブを握ってみるが鍵は閉まっているようだ。
建て付けが悪いのか振動して微かに音がしている。
左右には喫茶店のような腰高の大きな窓があり、そこから室内を覗ける。
様々なものが置かれているのがわかるが、照明もなく周囲が悪天候で暗いので、その詳細まではわからない。
もしかしたら、アンティークショップなのだろうか。
すでに濡れた分だけでも立っていると足元に水溜まりが出来てしまう。
雨はまだ降り続いている。
誰も見ていないのを確認してからシャツを脱ぎ、手すり越しに腕だけを出して絞る。
身体をタオルで拭うが、下半身はどうしよう。
ズボンも肌に貼り付いている。いっそ脱いでしまおうか。その下は丈が長めのハーフパンツなので、スポーツウェアだと言い張れば通用するかもれない。
留め具のボタンを外し、膝までズボンを下ろした時に、背後の扉が開く音がした。