雨宿りの、最適解
チャイムの音で、眠りから覚めた。防災無線のスピーカーからのようで割れた音だ。
時刻を確認してみると、12時。
一瞬目を閉じただけのはずだったが、昼になってしまっていた。1時間以上眠ってしまったようだ。
自転車に跨がり、坂を下って行く。
登りと違い快適だか、肌寒い。
汗に塗れたシャツのせいかとも思ったが違うようだ。
空が曇り、太陽も隠れていた。
気づかないうちに急激に天候が変わっていたようだ。
一昨日も夕方にゲリラ雷雨があったのを思い出す。
平地に達した頃に、行く先の空に黒い影があるのがわかった。
そのまま進むと通り雨に遭うかも知れないが、周囲は畑ばかりで脇道も無い。
逆戻りして図書館を再訪しようかとも思ったが、苦労して坂を登っている途中で雨に降られるのが一番悲惨だと思い足が止まってしまう。
今まで悪い選択肢を選んでばかりだったので安全策を取ることにする。
どこか屋根のある場所を探してしばらく待ってみよう。
山の麓にバス停はあったが、看板が立っていただけだ。
来た時、森の間を抜けるような場所があり、そこを抜けると山に続く坂道が見えたのを思い出す。あそこまで行って木の下で雨宿りするか。
車道両脇に木立が並んでいる。
密集して生えている上に草が繁っているので入り込めそうに無いし、虫に刺されそうだ。
道は緩やかなカーブを描いているようで、進んでいる途中に脇道があるのがわかった。
車両が通れるような幅がある。
来た時には車道側に膨らんだ場所の間だったので気付かなかったのだろう。
そこは舗装道では無く、剥き出しの地面だ。私有地かもしれない。
樹木同士が互いに枝を伸ばし葉が重なり合っているので、空は覆われて見えなかった。
自転車を降りて、背中のデイバックをタオルで拭う。
目の前の地面に、黒い斑点が現れ始める。
雨が降り始めたが、ここは、ときおり雨粒がしたたるだけで濡れずに済みそうだ。
突然、豪雨へと変わった。
さらに雨は勢いを増し、空も轟き出す。
アスファルトを叩き割るような勢いだ。
脇道は舗装道路より地面が下がっているようで、足下へと水が流れてくる。
雷光。
瞬間的に、世界が白く発光する。
その瞬間、あるものが浮き上がって見えた。
木立と脇道の境界に木製の看板が立っていたのだ。
今までは、半ば草に埋もれていたので見逃していたのだろう。
矢印の形をしており奥の方を示しているようだ。文字が描かれていたようだが薄れていて読めない。
奥に店舗のようなものがあるのだろうか。
水溜まりがこちらに迫って来ていたので自然と脇道の奥へ追いやられていた。
これも、運命が僕をどこかへ導こうとしているのだろうか。