束の間の、目覚め
元の世界に、戻って来た。
不寝番が交代した後に変化は無かったので、眠れないとは思いつつも横になっていた。
草原が奏でる音と、室内の人々の呼吸に身を委ねている内に、いつの間にか眠りにつけたようだ。
まだ、真昼間だ。
少し昼寝をしようと目を閉じたことを思い出す。
枕元に置いていた本を手に取る。
勇者が魔王討伐隊と共に旅に出たと記されていた。
その一団には、旅人が含まれていたとも。
やはり、物語は進んでいる。
眠りについた時に、二度と向こうの世界に戻ることが無ければ、あの時感じた不安は解消されるのだが、再び舞い戻ってしまうような予感がする。
午前中に小屋を訪れた際には老人は不在だったが、午後に、もう一度訪ねるべきだろうか。
もし、老人に会えた上に、あの世界を訪れた旅人であったことが判明したとしても、この世界との関わりまでは知っていない可能性の方が高い。
どうするかは、明日起きた時に考えよう。
向こうの世界での緊張感が、目覚めてからも肉体に残っていたからだ。
疲労を回復するための睡眠が、疲れの原因になっていたのだ。
夜までは勉強に集中しよう。
意外に、母親が夕飯が出来上がったのを告げに来るまで没頭出来た。
食事を終えて、風呂に入ったらやることも無くなってしまう。
携帯でネットニュースを検索するが、その内に飽きてしまった。
覚悟を決め、眠りの世界に入る。