剣と、魔法の十二人
双王の両翼へと、勇姿が並び立つ。
全部で、 十二人だ。
王に近い方が年齢が高いように見える。
「まずは、王宮の兵士から紹介しよう。頼むぞ」
上手側、右端の人物が一歩前へ出る。
「ジョンズです。どうやら、新人代表として選ばれたようです。みなさんのように経験を積んではいませんが、頑張ります」
金色の短髪で、勇者と同じぐらいの年齢に見える。
顔つきは幼いが、視線は真っ直ぐに据えられている。
「あたしの名は、ケイス。あたしとあたしの剣を信頼しれくれて、ありがとう。後は、それに報いるだけね」
魔王討伐隊の兵士のなかでは唯一の女性のようだ。
深緑色の髪を首筋で切り揃えている。
「サンダムだ。よろしく」
それだけを口にすると、すぐに下がってしまう。
無口だ。
小柄で、茶褐色の目元まで伸びた髪の奥に、小さな瞳が隠れていた。
「タウゼンでありますわい。力を貸してくれと王様に頼まれたのだが、ずいぶんと重いものを背負わされたよう気がするのう」
長身で怪力そうに見えたが、口調も動作も、のんびりとしとしている。
頭に布を巻きつけていた。
「ダルトレイと申す。王宮騎士団の部隊長をしている。選ばれた者には、それぞれの理由があるはずだ。その力を合わせれば、この国の危機は必ず救えるはずである」
目立ちたがりなのか、他の者よりも前に出て、声も大きい。
青空のような色をした短髪を後ろに撫で付けている。
均整がとれ、鍛錬された身体つきをしていた。
「ウルスイで、ございます。王国への最後の奉公と思い、尽くす覚悟です」
痩せた体躯の白髪の老人だが、誰よりも目つきは鋭かった。
「王宮の兵士は以上だな。続いて、魔法使いの紹介だ」
大臣が下手側へ声をかけると、左端の少女が怯えたように歩み出してきた。
「マッホです。たくさんの方がいらしているのですね。あの、よろしくお願いします。みなさんのように得意なことはありませんが、一通りの魔法は出来ます」
僕よりも、年下そうに見える。
人目を避けるように、漆黒のローブのフードを目深まで被っていた。
「ジョリスと申します。わたくしは普段は古の魔法の探究をしておるものです。力では頼りにならないと思いますが、知識で困ったことがあれば相談して下さい。旅の間、よろしくお願い致します」
おだやかな微笑みを浮かべ、丁寧にお辞儀をする。
ひとりだけ、全身が白い衣装だ。
長く伸ばされた髪も銀糸のように白く輝いている。
「ゴスタだ。魔力比べならば魔王には負けない自信はあるが、それだけでは魔王には勝てぬそうだな。勇者のお供が出来るとは、名誉なことだ」
他の魔法使いとは違い、灰色で薄手のローブを羽織っている。
褐色の短髪で、魔法だけではなく腕力にも自信があるようだ。
「ジェムズと言いますわい。もう少しで隠居生活を送れたのだが、どうも、うまく行かんもんだわな。王様に頼まれてしまったら、断れんわ。ま、とっとと片付けてしまいましょうや」
酔ったような赤ら顔をして高い声をしている。
麦藁色の中途半端な長さの髪は手入れをされておらず、寝癖のように所々で跳ねている。
それ程、年寄りには見えなかった。魔法使いは寿命が長く、その分、見た目も老けないのだろうか。
袖の長い黒のローブで全身を覆っており、フードは首筋に留まっていた。
「レイノンじゃ。ジェムズ、おまえさんとは長い付き合いになるが、まさか、ともに魔王退治の旅をするとは思っておらんかったわ。後の世に禍根を残さぬよう根を断つのも、年寄りのせめてもの役目じゃよ」
幼馴染なのだろか。
同じような格好をしているが、細部は異なっている。
様式や流行の形があるのだろうか。
髪も髭も眉毛も白く、長く伸ばし顔を覆っているので表情がわかりにくい。
「マジクルである。普段は、王宮魔法学院の校長をしておる。一部で、わしを大魔法使いと呼ぶものがおるようだが、年を重ねるうちに、仲間たちがいなくなっただけである。孫のマッホの方が、余程素質に恵まれておるわ」
体格が良く、ローブの縫い目が破けそうに布が張り、杖も撓っていた。
最年長とは思えないほど皺も少ない。
幅の広い三角帽子に髪の毛を押し込めているようだが、使い古されたのか縁が解ていて、先端が力なく下を向いていた。
体格に似合わず、足取りは軽いようだ。
「以上が、魔法使いの紹介である。魔王討伐隊は以上の者達である。大義であった。席に戻られよ」
その言葉に従い、王宮兵士と魔法使いは階段を降り、最前列の席へと戻る。
「この後は、晩餐会の用意が待っておる。質問があるのであれば、その後にしてくれ」
大臣の言葉が終わると、出入り口の扉がゆっくりと開き、楽団員が楽器を構える。
「王が退出なされる。参列者一同、起立されよ」