1.妖精が見える。
なかなかに人生ハードモード(*'▽')ノ
「気持ち悪いんだよ、テーニャ!」
「母親が死んで、頭でもおかしくなったか?」
僕を足蹴にしながら貧困街の少年たちは笑う。
お母さんが死んでからは、僕を守る存在がいなくなった。この街では弱い者はみな、良いように利用されるか、そうでなければこのように鬱憤の捌け口にされるのが常だ。こうやってこちらを馬鹿にしている彼らもまた、大人の指示のもと窃盗を行っている駒に過ぎない。
だけど僕は、そんな彼らからしてみたら格下なのだろう。
もうこの世にいない母親の言葉に従って、道を外れることをしようとしない。貧困街という特異な場所での『正しい生き方』で考えれば、馬鹿でしかなかった。
「ほら、やり返してみろよ。一緒にいるのと、さ!!」
「見えてるんだろ、その『友達』って奴が!!」
「…………!」
そして、彼らが自分を標的にするもう一つの理由。
それはお母さんが亡くなって以降、僕の身に起きた変化にあった。僕自身、最初こそ信じられずに見て見ぬ振りをしていたが、彼らの存在は本物だ。
だけど、そのことを証明する手段もなければ方法も思いつかない。
それもそのはずだ。頭がおかしい。
「マジで『妖精が見える』なんて、気持ち悪いんだよ!!」
気色が悪いと、思われて仕方がなかった。
僕はそう感じながらも、周りを心配そうに飛び回っている彼ら――妖精の姿を見る。妖精たちはみな手のひらに乗るような大きさをしており、小さな羽で宙を舞っていた。
色は各々に異なっており、それが何を示しているのかは分からない。
分かったところで、何もできないと思った。
「ちっ……冷めた。そろそろ行こうぜ」
「そうだなー」
そのまま、どれだけの時間が経っただろう。
少年たちはみな飽きたのか、そう吐き捨てるように言ってどこかへ行ってしまった。僕は痛む身体を庇いながら、ゆっくりと起き上がる。だが、上手く立つことができない。
どうやら脚の骨、そのどこかが折れているらしい。
思わず表情を歪めると、一人の妖精が慌てたようにこちらへ飛んできた。そして、
「え……キミ、怪我を治せるの?」
痛みの強い場所に、その子が身を寄せる。
すると、間もなく僕の脚から痛みは引いていった。
「…………ありがとう。助かったよ」
嬉しそうに笑っているように見えるその子に、僕は素直に礼を言う。
すると、妖精たちは何かを話し合った後に――。
「え、あの……? もしかして、ついてこい……って、言ってる?」
僕を先導するようにして、市街地の方へと向かっていくのだ。
いったい、どうしたというのだろうか。
僕は首を傾げながら、仕方なしに彼らの後を追いかけた。
そして――。
◆
「ねぇ、いったい何があるの……?」
ちょうど、市街地と貧困街の中間。
あるいは少し貧困街寄りの路地裏で、彼らはピタリと止まった。どうやらこの先に、何か見てほしいものがあるらしい。
僕は不思議に思いながらも、妖精たちの導く場所へ向かった。
そして最後、一つ角を曲がると――。
「え……?」
――そこにいたのは、一人の可愛らしい女の子。
僕なんかとは身分が異なるのだろう。一般市民のような服装にフードを被っているが、まるで高貴さが隠せてはいなかった。金の髪に青の瞳。歳のほどは僕と大差ない。そんな彼女は、ちょうど良い高さの樽に腰かけながら笑っている。
そして、その笑顔の先にいたのは……。
「妖精と、話してる……?」
僕が見ている彼ら。
不思議な存在である妖精に、他ならなかった。
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