プロローグ 母との別れ。
修繕師が完結して。
もう一つの物語を書くべきだと思いました。
応援よろしくお願いいたします(*'▽')ノ
「こほっ……けほっ……!?」
「お母さん! お母さん、大丈夫!?」
僕の呼びかけに、お母さんは何も答えない。
いいや、正確にいえば答えることができないのだ。絶え間なく乾いた咳をし続けて、痩せた身体を苦痛によって屈めている。隙を見て水を飲ませようとするが、その中に混じっていた砂利のせいでまたむせ返ってしまった。少しでも楽になってほしいと願うけれど、貧困街で手に入るものには限界がある。
「こう、なったら……!」
数ヶ月、良化の兆しが見えないお母さんの容態。
それを目の当たりにして、僕はついにあることを決心した。もとより貧困街で暮らしているのだから、今さら堕ちる場所などない。それこそ『盗み』を働いたって、誰も不思議に思わないはず。だったらいっそのこと、僕は――。
「いけ、ないわ……テー……ニャ」
「え……お母さん、どうして?」
だけど、そこまで考えた時だ。
お母さんが苦悶の表情を浮かべながらも、僕の手を取ったのは。そして、こちらの考えを見透かしているかのように首を左右に振った。
細く皺だらけになった手で僕の頬を撫でて、こう言うのだ。
「道を外れては、ダメよ? 戻れなく、なる……から、ね」
「でも……そんなこと言っていたら、お母さんが……!!」
死んでほしくない。
たった一人の、僕にとっての家族だった。
それでも、そんな大切な人の願いを無碍にすることもできない。僕はもうどうすれば良いのか分からなくなり、唇を噛んで拳を震わせるしかできなかった。
そうしていると、お母さんは何かを決心したように口にする。
「あぁ、テーニャ……優しいあなたになら、託せる」
「…………え?」
意味は分からなかった。
それでも、何か大切なものを託されたのだと思う。
頬に触れるお母さんの手から、ほんの微かな温もりを感じた。胸の奥に何か火がともるような感覚があって、でもいったい何が起きたのか分からない。
そう思っているうちに、小さく微笑んだお母さんはまた咳き込み始める。
「お母さん! 待ってて、また水を……!」
薄汚れた小屋未満の家の中から、僕は外に出ようとした。
すると、その直後――。
「……おかあ、さん…………?」
ベッド代わりの段差から、何かが落ちたような音。
すぐに理解できた。だけど理解したくない。
ゆっくり振り返ると、そこにはピクリとも動かなくなったお母さん。
僕はその場で膝から崩れ落ちて、ただ涙するしかできなかった。
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