加奈子
受験勉強の合間を縫って、気ままにささっと書かせて頂きました。テーマが「一途な愛」なので、ジャンルは「恋愛」としましたが、まあ…どうなる事やら(笑)。小説とは言い難い拙いものですが、読者の方々を数分間の「一途な愛」の世界へ誘えたらなと思います。
結婚をする前から、加奈子はこう言っていました。
あなたとは、いつまでも仲良くしていたい。結婚しても、子供が出来ても、お爺ちゃんとお婆ちゃんになっても、深く愛し合った事を忘れず、いつまでも一緒にいたい、と…。
もちろん私も、そう思っていました。
だから、結婚してどんなに忙しくても、暇を見つけてはデートに誘っていましたし、毎年の結婚記念日には、二人の初めてのデート場所に行って、必ず記念写真を撮っていました。
…海の近く、潮風の吹く小高い丘にある、小さな公園でねぇ…写真を撮る度に、加奈子がすごく幸せそうに笑うんですよ。あの場所、あの瞬間にしか見る事の出来ない、世界で一番幸せな加奈子の姿。写真を撮り終わる度に、大好きだと、愛していると、頬を染めながら言う可愛い加奈子。私の加奈子。愛しい加奈子。…そんな加奈子を、今年も見られるはずだったんです。
先日の結婚記念日も、加奈子はとても喜んでいました。
この記念すべき日に、初めて子供と三人であの場所にいけると。
娘の恵は、七歳とは思えない程のしっかり者で、加奈子によく似た可愛い子です。私と加奈子の愛の証。私と加奈子が愛し合っていたという、確かな愛の証。その恵と加奈子が、お揃いの白いワンピースを来て麦わら帽子を被り、幸せそうに手を繋いで公園のブランコで遊ぶ姿。それを見ながら、私は泣きそうになりました。自分がこんなに幸せなのが、とても恐くなりました。
二人を見守る私を、恵が手招きをして誘います。そして私のポケットからカメラを取り、
「写真撮ってあげる!」とかまえました。思わず顔を見合わせて、微笑む私と加奈子。笑顔で恵の方を向き、シャッター音を待ちます。恵は私達をもっとくっつくようにと囃したて、加奈子が少々照れくさそうに、私の右腕に手を絡めてきました。それを見た恵が、笑いながら片手でピースのサインを作り、シャッターを切りました。
その瞬間。
私のすぐ横を、とてつもなく強い風が通り過ぎました。
ふっと腕が軽くなり、次の瞬間に鳴り響く轟音。
恵が目を見開いて、その場にへたりこむのが見えました。私が右を向くと、今までそこにいたはずの加奈子が見当たりませんでした。変わりにそこにあったのは、横転した状態の大型トラック。しかし、そんな事はどうでも良いのです。問題は、加奈子がいないと言う事です。私はゆっくりと後ろを振り返りました。はたしてそこには、気息奄奄と言った風の加奈子が、公園のフェンスに寄り掛かるように倒れていました。私は叫びながら加奈子に駆け寄りました。しかし近寄って加奈子の現状を目にすると、私はその場に崩れ落ちました。
大型トラックとまともにぶつかり、美しかった加奈子の顔は、半分が原型を止めぬ程に潰れていました。右腕はちぎれ、突き飛ばされた後に公園のフェンスに激突したのか、足や腕、体のあちこちがあらぬ方向に折れ曲がっていました。もはや私が愛していた“加奈子”はそこにはおらず、ビクビクと痙攣しながら血と泡を噴き出すソレは、“加奈子だった何か”になってしまっていたのです。
私は泣きました。天を仰ぎ、出せるだけの大声を上げて、泣きました。
私が吠えるように泣いている間も、恵はずっと変わらず放心状態で、その場にへたりこんでいました。
私はね、思うんですよ。なぜ加奈子だったのだろう、と。別に加奈子が死ぬ必要は無かったのではないか、と。
あの場所には、恵もいました。
別に、死ぬのは加奈子でなくても良いじゃないか。恵で良かったじゃないですか。
加奈子は、私と写真を撮るのを楽しみにしていたんだ。私だってそうだ。加奈子のあの笑顔を見る事が出来ると思うと、楽しみで仕方なかった。加奈子のあの愛の言葉を聞けると思うと、嬉しくて仕方なかった。私と加奈子がいれば、世界は満たされていた。他には何もいらなかった。そう、他には何も…。
加奈子、愛してる。
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最後にもう一度。御一読下さり、誠にありがとうございました。




