雲上から
槍ヶ岳でみた星空の景色は
今でも鮮明に記憶に残っています
機会があればまた行きたいものですが
過去にもそうやって、天候にて振られたことがしばしば
それでも、また行きたいと思うほどに
魅力的な景色です
目が覚めた時、辺りはまだ闇の中だった
周りを見れば、皆はまだ眠りの中のようだった
腕時計を見てみると、時間は深夜0時を過ぎたばかりだ
それでも、もう眠ってから数時間は経っているのかと思うと
なんだか不思議な感じがした
皆を起こさないよう、
音を立てずにそっと外に出る
靴を履き、軽く靴紐を締めた
じゃり、という砂の音が暗闇に響く
自分が砂を踏みしめた音以外にはただ風の音が聞こえるだけ
その風の音も耳を澄ませばようやく聞こえる程度のものだった
中にいるよりは外の方が少し明るかった
それでも、普段より暗闇が濃いのは
今日は月のない夜だからだろう
しばらく歩き、岩場に向かう
視線の先には山々の影がうっすらと見える
それらを包み込むかのように
薄い絹のような色をした雲が幾重も浮かんでいるのが見えた
山と雲が大地に飲み込まれるその境界線の先には
無数の光が瞬いている
それは天上までずっと続き、淡い光のドームを形成していた
小さな光を追って空を見上げれば
そこには夜空を埋め尽くすほどの輝きがあった
見渡す限り広がる無数の小さな光
その光に中てられたのか
ふわりと体が浮かんだかのような感覚に襲われる
それが無性におかしくて
気がつけば笑みが浮かんでいた
もっとその光を眺めていたくて
その場に座り、そのまま寝転ぶ
すると今度は光の海に飲み込まれるような感覚に襲われる
背中は確かに地面を感じているのに
まるでこのまま星の海に「落ちて」いきそうな、そんな感覚
それは、空と一体になったかのようにも思えた
--なぜ、山登りを始めたのか
以前、ある人に言われた言葉を思い出した
その時はこう答えた気がする
--勧誘の日に部室に連れ込んで強引に届出かかせたのはあなたでしょ
違いない、と笑われたのがつい昨日のようだった
あれから一年が過ぎた
それでも僕はここにいる
やりたいこともなく
学校に入った事だって、目的や目標があったわけでもない
ただ、何となく今に至り、ここにいる
それだけだった
--けれど・・・
星と一体になる感覚が薄れ
気がつけば、重力に引かれるように背中の大地が存在を誇示していた
無数の流れ星が流れていくのを眺めながら
ゆっくりと体を起こし
体についた砂を払い落とす
風が優しく吹きぬける
昼間は熱い焼けるような風も、今は心地いい
--また、見たいな
たったそれだけの理由だけど
またここに来よう
そう思った
最後までお読みいただきありがとうございます
みなさんにも、忘れられない景色、ありますか?