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夢の幕開け
まどろみの中
夢とも現とも
判然としない
境界線上
夢を見ていた
寝転んだまま外を眺めれば
窓はブラックスクリーンとなって
冴えない自分の表情だけが
音も無く映り込むだけ
わずかに浮かぶ小さな光点が
かろうじて、その先に
外の世界があることを教えてくれる
寝返りを打とうとして
背中に何かが当たる感触
それはくぐもるような音に合わせて
背中を撫でるように動くと
背中にあった感触の一部が
ふっと消えて影に変わる
包まれるような温もりと
触れる柔らかな温もりと
ブラックスクリーンに映り込む影
身体に隠れて見えないけれども
そこにいるのが君だと知って
何も言わずに、ただ手を握る
目を閉じるほどに
君が見えて
静かなほどに
聞こえる心音
確かにそこにいてくれること
ただそれだけで
幸せに包まれ
そのまま意識は夢の果て
夢を見ていた
寝転んだまま外を眺めれば
窓はパープルスクリーンとなって
幕の僅かな隙間からは
黄金色の光が漏れる
仄かに差し込む時の輝きは
窓に映り込む姿を消すと
「今日という日の幕があがるよ」、と
笑顔を浮かべて、私に告げた
はじまりは常に新しく
けれども、
連綿と続く歴史の続き