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回送
車窓を流れる景色を見てると
不意に違う景色が見える時がある
駅と駅の狭間には
ぽつりぽつりと民家が建ち
先にはいくつも田が広がって
遥か先には白い化粧をほんのり施す
山々が連なっている
田畑に変わって
民家が連なりはじめると
駅が近づいてきた証
人が降りては乗り入れる
やがていくつもの養殖の池が
辺りに見え始めたのなら
そこが僕の降りる駅
けれど、ここに池はない
進めばやがて空はなく
暗闇ばかりが続く景色になる
そうして僕は戻ってくる
昔の僕から今の自分に
昔を重ねてしまっても
戻れる時ではないのだけれど
最後までお読みいただきありがとうございます




