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虹のしずく
何もない場所に水は生まれてこない
ふとした瞬間に湧き出してくるのは
どこかで降り注いだ雨が
大地に染みて地の底で眠りについていたから
どこで降った雨なのか
どんな色をしてたのか
そこに何が溶けていたのか
水に記憶は残ってないけど
その内側には確かに跡は残されていて
長い長い時を経て
小さな粒に磨かれて
不純な物質は削ぎ落されて
綺麗な一つの雫になって
不意に湧き上がってくる
汲み上げた雫は
どんな色味をしてるんだろう
透き通った球体の内側には
どんな世界が映し出されているんだろう
雫の世界の中にはきっと
見たこともない知らない景色が広がっていて
そこから零れた水がまた
地に染み込んで眠りについて
同じように時を経て
どこかできっと不意に湧き上がってきて
数多の雫が雨となったその先の空には
きっとまだ見ぬ世界へ渡る虹がかかってる




