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土の音
ざりと鳴る音が好きだ
土を踏み
靴底の溝にいくつかの砂が入り込む
砂同士が擦れ合って
靴底と土が擦れ合って
踏みしめるたびに音が変わる
音が鳴るたび前に進む
進むたびに景色が動く
ざりと鳴る音が好きだ
踵をそのままにつま先だけで
砂を払って足場を作る
払われた砂がざらと音を立て
残された砂はさらと音を立て
ここに立って迎えるのだと
感覚が研ぎ澄まされていく
ざりと鳴る音が好きだ
ぱきりと踏み抜く音も好きだ
がさとかき分ける音も好きだ
草いきれが立ち込めて
絡みつくように下げられた熱の暖簾
踏みしめるたびに熱を潜って
時折抜ける涼風を噛み締めて
前へ前へ
上へ上へ
ただ一人で踏み越えていく
孤高の音のようで好きだ
視界がひらけた瞬間
聞こえないはずの音が聞こえるように
自分だけにしか聞こえない何かが
背を押してくれることもある
そんな気がする




