氷
身体に血が巡らなければ感覚が麻痺するように
心にも温もりが通わなくなれば麻痺するのです
心が傷付き温もりが外へと流れ出さぬよう
自ら心を閉ざし、
温もりが抜け落ちぬかわりに
何も受け付けなくなった心もまた
壊れぬままに冷えていくのです
笑うことが上手くなった
その場に合わせた乾いた笑いはなくなり
心から楽しいと思えるような
そんな笑い方が出来るようになった
言葉が柔らかくなった
冷たく切り裂く言葉はなくなって
温かみのある柔らかな
そんな言葉を使えるようになった
時が過ぎて
痛みが薄れて
変わらない日常を過ごせる
そう思えるようになった
心を包む温もりは
冬の日だまりのように優しい
けれど本当は「そのまま」だと
誰より一番私が知っている
芯は冷たく凍ったままで
溶ける事などないだろう
抑えることが上手くなった
抑えているとわからぬように
周りも自分も気付かないよう
心を抑えられるようになった
憤る事が上手くなった
怒りはなくても合わせるために
何かを伝えるためだけに
怒った言い方を出来るようになった
時が過ぎて
痛みが薄れて
全てを悲観するような
そんなことはなくなったけれど
心に残る冷たさは
冬の雨のように…
時が過ぎて
痛みは薄れて
変わらない日常を過ごせる
そう思えるようになったのに
心に残る寂しさは
雪が舞い散る原野のように
一人だけだと感じさせる
あの頃と変わらず「そのまま」で
痛みは途切れず消える事などないと
誰より一番私が知っている
心を覆う氷は厚く
芯は冷たく凍ったままで
溶ける事などないだろうけれど
それでも温かくありたいと
私は望み続けるだろう
微笑んでほしいと思うから
最後までお読みいただきありがとうございます
凍りつき、麻痺した心も
人の手当と温もりで
また元のとおりに癒やされることもあるのです




