《月子》 決意
「や、大和……?」
震える声で尋ねる。
名前を呼ぶので精一杯。
あたしたちは、呆然としながらもお互いを確認するように見つめあう。
大和の瞳から、ぼたぼたと涙が散っていく。
同じようにあたしの頬も涙が走っていく。
お互いに、大泣きしている。
鏡に映る大和は、当たり前だけれど4年前よりもずっと大人びた。
すごく素敵に成長して、男らしくなった外見や伸びた髪が、あたしと大和の間の時を否応なしに強調する。
恐らく大和も、あたしを見て離れていた時の長さを感じているのだろう。
大和はあたしを見つめながら、さらに涙の量を増やしている。
ぼろぼろと散るその涙を拭ってあげたいのに、手が、届かない。
指先が冷たい鏡に触れて、すぐ傍にいるわけではないのだと現実に引き戻される。
「本当に大和……?」
「うん……。そうだ。ごめん、月子」
ごめん、という言葉に、胸騒ぎを覚える。
何か悪いことが起こって謝っているのか、
それとも今まで心配させてごめん、のごめんなのか、わからなくて戸惑う。
大和の様子を見ていたら、何か悪いことをあたしに告げようとしているように感じた。
怖くなって、抗いたくなる。
「な、んで謝るの? ねえ、どこにいるの!? 大和!!!」
焦って思わず叫ぶけれど、大和はさらに涙をこぼし、あたしから目を逸らして逃れるように俯く。
「……ま、だ……700年前の日本にいる……」
「早く、早く帰ってきてよ!! 寂しいよ!!! 寂しい! 大和!!!」
大和に会いたくて、たまらない。
こんなにも会いたいのに、どうして帰ってきてくれないの?
今すぐに、ここに帰ってきて。
あたしの傍に帰ってきて。
お願いだから、大和――。
「ごめん。俺は帰らない」
「え」
「俺は、この時代で生きるよ」
さあっと血の気が全身から引いていく。
信じたくなくて、両手で耳を強く塞いでしまいたかった。
でもこれは、予期していた言葉。
どこかで覚悟していた言葉。
できれば聞きたくなかったのに――。
「なに……言ってるの……?」
大和は自分が一体何を言っているのかわかっているのか。
あたしを、家族を置いて、もう二度と会えないかもしれないのに、戻らないなんて、どういうつもりで言っているのか。
悲しみが怒りに変わる。
あたしは大和がいないと死んじゃうのに。
「俺はここで生きる。月子。ごめん」
大和はもう一度謝った。
揺らぎのない声。
その両目はまっすぐにあたしに向かっている。
大和の姿から、その決意は揺らがないと伝わってくる。
あたしが何を言っても、もう無駄なのかな。
寂しさが、さらに大きくなって胸を圧迫して切ない。
大和は勝手すぎる――。
大和の帰りを待っている人がたくさんいるって、理解していないの?




