礼儀知らずの幼き王女。やり直しで王妃として目覚める! ~今度こそ生き残って見せるわ!~
ヤングスブルク家の長女マリアンヌは、政略結婚のために十五という若さで、隣国のテレルテバ王室へと嫁いだ。しかし、まだ幼き娘。礼儀というものを知らない。おまけに、王室では派手に振舞い、ごろつきの貴族も集る始末。
熱心に取り組んでいたことといえば、教会のミサだけである。こんなに恵まれているのも神様のお陰。祈っていればこそ。マリアンヌは、そう思っていたのだ。
しかし、そんな日が長く続くわけもなく。
貧困で飢えた者たちによる革命が起こった。王室の者たちはこっそりとマリアンヌが寝ている間に城から抜け出す。もぬけの殻となった城の中に押し寄せる人々が言った。
「マリアンヌを殺せ!」
と。
「そんな。私は好きにしろっていうから好きにしただけ! 私は何も悪くないわ!」
マリアンヌはもともとよそ者。しかも市民たちの税を優雅に使っていたことがよく思われていなかった。執行日。ギロチンに掛けられる瞬間にマリアンヌは断頭台で涙を流しながら、
(もう一度、やり直したい!)
そう願った。
◇◆◇
「ようこそ、マリアンヌ様」
母に手を繋がれてテレルテバの城に入城する光景。どこか見覚えがある。
(私、死んだんじゃなかったの?)
周囲をキョロキョロしながらマリアンヌは、見たことのある顔をちらちら見ては挨拶をした。目の前にはテレルテバの王が居た。自分より随分年寄りな男。彼はニコニコしながら彼女のことを受け入れた。
(そうよ、この扱いで私勘違いしてしまって)
マリアンヌは、きっとこれは「やり直せ」という神様のお告げなのだろうと信じた。今度こそは絶対に死ぬルートを避けよう! そう心の中で決めた。
まず初めに、自分の性格の悪さ……というより見栄っ張りな所を直した。例えば……。
「あら? 王室の者にしては随分貧相な身なりをしておりますね~」
王室の者たちからの嫌味に耐えることから始めたのだ。
(黙れケバケバ女!)
「私の様な者がそのような豪華なお洋服を着られるわけないじゃないですか~」
心の声を隠しながら。
次は、自分に集って来る輩だ。彼らが物をせがむ度に、「これは市民の税であることを忘れてはなりません」と、そう言ってマリアンヌは、自分の欲しい物も我慢した。
あとは、市民を味方につけること。彼らは怒ると怖く、切羽詰まると革命という恐ろしいことをする。そのせいで一度マリアンヌはギロチンに掛けられたのだから。そこで王に相談するマリアンヌ。
「私、この国の民を救いたいのです!」
「突然どうしたのだ。熱でも出たのか」
「民は今、お腹を減らしています。この土地の畑が日照りのせいで乾いてしまったからです。だから、わが国だけでなく、いろんな国の小麦農家から国名義で倍の値段で小麦を仕入れ、パンやお菓子を造る店に無料で配るのです。足りない場合は国の備蓄も民に無償で与えましょう。その際、配給用のパンも造ってもらいます」
「そうなると国庫が……」
(よくわかんないけど、私が平穏に暮らせるまで持てばいいのよ!)
「私の発想はまだまだ幼いわ。だから、頭の切れる者に調整してもらえばいいのです」
「ふむ……」
マリアンヌの案は調整されたうえで行われた。このおかげで飢えで死ぬものは少なくなった。中には、「マリアンヌ様万歳!」というものも現れたとか。
(まだ、安心できない)
マリアンヌは、城の中で民の生活をよくするための国政を考えていた。全ては生き残るため。勘違いされた挙句、彼女に付いたふたつ名は、「市民の天使」である。
まぁ、本人にとってはどうでもよいことであるが、彼女は最後まで民のことを考え寿命を全うしたという。
初の(私の中では)本格令嬢もの。
最後まで読んでくれてありがとうございます!
ご意見や改善点等ありましたら感想欄を開けていますのでどなたでも仰ってください!
※メッセージをいただき、沢山の改善をしました!
前のに比べて、だいぶ良くなったと思います。小麦の仕入れの話も、以前と比べると自然な感じになりました!アドバイスをくれてありがとうございます!