博士の発明
「やったぞ!ついに、ついに完成だ!」
研究室の一室で、博士はそう叫んだ。その声を聞き、急いで来たのは博士の助手だった。
「ど、どうしましたか博士!今度は何を作ったんです!」
助手は、慌てながら博士を問いただした。毎回と言っていいほど、博士の実験に巻き込まれていた助手からしたら、慌てるのも無理は無いことだった。
「おお。そこにいたのか助手。ちょうど良かった、今呼ぼうとしていたところだ。早速だが、これを見てくれ。」
そう言い博士は、博士の目の前にある巨大な機械を見せた。その機械にはタッチパネル式の操作機器と巨大な培養槽がついており、その培養槽には何やら生き物らしいものがぷかぷかと浮かんでいる。
「これは…デイノテリイム…いやナウマンゾウでしょうか?長鼻類の一種だということは分かりますが、これは一体何なんですか?」
助手の問いに博士は答えた。
「流石、研究者なだけある。君の推理はほとんど当たりだ、これは氷付けになったマンモスの細胞を復元したものだ。私は、そこから研究を重ね、ついに恐竜まで復元することができた。私がこのボタンを押せば、彼らの眠りは覚める。そうすれば彼らは今すぐにもこの培養槽を破壊するだろう。そして…」
「ちょ…ちょっと待ってください!」
助手は、淡々と話す博士に対し怒りながらこう言った。
「そんな事したらこの国、いやこの世界が混乱します!多くの人が死に絶え、まともな生活を人類は送れなくなるでしょう。そんなことをして、誰が得をするんですか!」
博士は冷静を崩さず再び話し始めた
「…私は疲れたんだよ。この腐った世界に。私を便利な道具だとしか思っていない愚かな人間どもに。楽な方に逃げたいがために次々と無理難題を吹っ掛けてくる、そのくせ何か不都合があるとすぐ環境問題がどうのこうのと…それを望んだのは紛れもなく我々だと言うのに…そうだろう?助手?」
「………」
助手は何も言えなかった。博士の話す避けようのない事実に。見て見ぬ振りをする自分達の愚かさに。博士は続けて話した。
「…手や頭を動かさず、口だけ動かすもの達にはちょうど良い制裁だ、何せ頭だけではなく足も動かす羽目になるだろうからな。」
博士は少し笑った後、機械の方に身を向けた。そして機械の作動の準備をし始めた。
「助手、君はさっき『誰が得をするんですか』といっていたな。教えてあげよう、これは人類のためなんだ。もう一度やり直しのチャンスを与えているんだよ。私だって死にたいわけではない。しかし安心はしている、何故なら私達生物は容易く絶滅するものではないからさ。機は熟す。いつかね。」
そう言い博士は最後のスイッチを押した。
…恐竜の猛威により生物は皆、死に絶えた。その後しばらくは恐竜が地球を支配していたが、元々汚染されていた環境や氷河期の到来により
恐竜は絶滅した。そして誰も居なくなった地球から新しい生物が誕生した。その生物はとても、とても小さかったが強く、強く成長した。
そして時は流れ…
「やったぞ!ついに、ついに完成だ!」