え、英雄だと?
あ、ありのまま今起こったことを話すぞ。
俺は隙を見て盗賊に斬りかかった。
そしたら、すんでのところで創造神の余計なお世話が発動。
この世には存在しないはずのスキル――攻撃力アップ《超・特大》を授かった俺は、盗賊のひとりをぶっ飛ばしてしまった。
っていうか、あいつ、帰って来られるのだろうか?
だいぶ遠いところに行ってしまった気がするが。
「う、嘘だろ?」
「アーレが簡単に吹き飛んでいきやがった……」
さしもの盗賊たちも、これにはびっくり仰天したらしい。
仲間が飛んでいった方向を見上げながら、ぽかんと口を開けている。
「おい」
「ひ、ひいっ!!」
俺が一声かけると、盗賊たちが怖じ気づいたように後ずさる。
完全に戦う気をなくしたようだな。うちひとりが、拘束していた少女をあっさりと手から離した。
「や、やばいぞっ……! さすがはヴィケンズ様を倒しただけはある……!」
いや。
まあな。
俺がヴィケンズを倒したのは間違いないんだが……なんか違う。
創造神の奴が余計なことをしやがったんだ。チート能力で敵を蹴散らすなんて、俺の矜持に反する。
だがまあ……ひとまずそれは置いておこう。
いまは他にやるべきことがある。
「く、くそっ! かくなる上は……っ!」
盗賊どもは完全に戦意を喪失したようだな。
俺に反撃してくるどころか――むしろ逃げようとしているんだが。
「させるかよ……っと」
俺は地を蹴り、盗賊たちの前に回り込む。
「ひっ……! 早え……っ!」
「マジで化け物だっ……!」
自分を殺そうとしていた奴を、まさかこのまま逃がすわけにはいかない。こいつらは盗賊だし、また復讐しにこないとも限らないからな。
「じゃ、申し訳ないが逝ってくれ」
容赦なく剣を振るう俺。
すると再び視界に下記のメッセージが表示された。
――――――
創造神より下記の能力が発動されました。
・攻撃力アップ(超・特大)
――――――
おい。
またあの創造神、余計なことを……!
だがいまさら攻撃を止められるはずもなく、俺の剣は盗賊どもに直撃し。
「うぬぎゃああああああ!」
残りの盗賊たちもまた、空高く飛んでいくのだった。
★
「ふう……」
大きく息をつく俺。
――終わった。
取り立てて苦戦したわけではないのだが、なんだかどっと疲れた気がする。この短時間でいろんなことがあったからな。
やはり気がかりなのは、さきほどの創造神の能力か。《内緒で最強能力を授けておいた》とか聞こえた気がするが……いったいどういうことなのか。
だが、それを考察するのは後回しにするべきだろう。
「ん、んー
」
さきほどまで盗賊に拘束されていた少女を、俺はひとまず助けることにした。
口に貼られていたテープを剥がし、後ろ手に縛られていたロープも解いてみせる。
と。
「うあっ……はぁ、はぁ……」
少女はしばらく荒い呼吸を繰り返したのち、改めて俺に頭を下げる。
「あ、ありがとうございます……。あの、えっと……」
「いや、いいよ。そのままで」
へたり込んだまま喋るのを無礼だと感じたんだろう。咄嗟に立ち上がろうとする少女を、俺は右手で制した。
どう見ても疲弊しているからな。
無理に立ち上がらせる必要はない。
俺はその場に座り込み、少女と目線を合わせる。そして懐からハイポーションを取り出すや、彼女に手渡した。
「ほら。これを」
正直、数少ない回復薬なんだが……この際、仕方あるまい。
「え……でも、悪いです……」
「気にするなよ。その傷をそのままにするわけにはいかんだろ?」
「は、はい……すみません……」
こくりと頷き、少女はポーションをゆっくりと飲み干す。即効性はないものの、上質な薬だ。じきに彼女の体力は戻るだろう。
「はぁ……助かりました……。ありがとうございます。あなたは命の恩人です……」
ふうと息をつく少女。
……よくよく見ると、かなり可愛いな。
年齢は――だいたい18歳くらいか。
可愛らしい顔と、そしてやたら大きな胸部に目がいってしまうが……なにより特徴的なのは耳だな。キツネのようにモフモフした耳が、後頭部から飛び出ている。
「君は……まさか」
「はい」
少女は恥ずかしそうに頷く。
「私は人間ではありません。フィーネ族……そう呼ばれています」
「フィーネ族……」
マジか。
フィーネ族といったら、滅多に人前に姿を現さない種族ではないか。
そんな彼女が、いったいどうして盗賊なんかに。
「改めまして、助けてくださってありがとうございます。えと、あなたのお名前は……」
「あ、ああ。ヴェルス。ヴェルス・イアードだ」
「ヴェ、ヴェルス? え? 本当ですか?」
「ん?」
なんだ?
なにをそんなに驚いている。
「いえ、私たちの英雄――闘神様と同じ名前だったもので。びっくりしたんです」
な、なぬ?
思わぬ単語に、今度は俺が目を見開いてしまうのだった。
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