え、こんなチートいらないんですが!?
「さて……これから、どうするかね」
王都ホルワース。
その街並みを、俺は行く宛もなくさまよっていた。
ギルドを追放されたせいで、住居すらも失っちまったからな。いままで住んでいた寮からも追い出されてしまった。
仕方ない。
適当にそのへんの魔物でも狩って、いい感じの素材でも採ってくるか。それを売れば、すくなくとも今日の宿代と飯代くらいは賄えるだろう。
明日のことは明日考えればいい。
そう判断した俺は、ひとまず王都を出る。王都周辺は魔術師の結界が張られていることもあり、魔物はほとんど出没しない。だが結界の外にさえ出てしまえば、戦い甲斐のある奴がわんさか出てくるはずだ。
だからまずは街道を進んでいこうとした――のだが。
「……おい」
俺はぴたり足を止めると、近辺に潜む気配に向けて声を投げかけた。
「気づいてんぞ。……おまえら、ヴィケンズの手先かよ」
「…………っ」
「馬鹿な、もう気づかれるとは……!」
そんな声とともに、背後から数名の男たちが姿を現す。
相手は盗賊――か。
黒ローブを身にまとい、それぞれに高価そうな剣を携えている。ちなみにあいつらが黒ローブを身につけているのは、あれ自体に潜伏効果があるからだ。
……まあ、俺はこれでも前世でそこそこ名の通った剣士だったからな。この程度の奴らなら、気配察知は容易だ。
俺は振り返ることなく、声だけを盗賊どもに投げかける。
「……殊勝なことだな。首領の仇討ちか?」
「当然だ! あのヴィケンズ様がやられて、なにもしないわけにゃいかねえだろうが!」
「…………なるほどな」
単なる仇討ちか。
だが、さすがにこいつらとて馬鹿じゃあるまい。
首領ヴィケンズですら敵わなかった相手に、ただ考えなしに突っ込んできたわけではなさそうだ。
「へへ……動くなよ。ヴェルス」
盗賊のひとりが嫌らしい声をあげる。
奴の片腕には女性が抱かれていた。そしてもう片方の手で、女性の頬にナイフを突きつけている。
「ん、んー!!」
一方の女性といえば、口をテープで塞がれており、叫ぶこともままならない様子。かといって盗賊の力も強いので、暴れることもできていなようだ。
「はっ。姑息な奴らだな」
俺を倒すためだけに、わざわざ人質をさらってきたのかよ。いかにも盗賊のやりそうなことだ。
そして厄介なことに、こいつらは俺の間合いも把握しているようだな。俺の剣がぎりぎり届かない位置に、奴らは立っている。
さすがはヴィケンズどもの手下か。一筋縄ではいかないな。
「ふふ、ははは……っ」
俺は額に手をあてがい、小さく笑ってみせる。
「な、なんだ!? なにがおかしい!!」
「いやな。今日はどうも、クズどもに縁のある日らしい」
「ク、クズだと!?」
「てめぇ、状況わかってんのかよ!?」
なおも怒声を発する盗賊どもだが、俺は動じない。
「……わかってるさ。さしずめ、無駄な策を弄したクズどもに歩み寄られているっていう状況――ってところか」
「てめぇ……!」
お、効いてる効いてる。
だいぶ怒ってるみたいだな。
これでも俺は前世において《闘神》と呼ばれてたようだからな。ちょっとしたピンチでいちいち取り乱すことはない。
もちろん、人質に危害が加えられることのないよう、必要な警戒心は向けている。
「ふふ、盗賊どもよ」
俺はにやりと笑いながら、空を仰ぎ見る。
「なにか見えないか? ――向こうから、俺の援軍がやってくるのを」
「な……んだと……?」
もちろんこれはハッタリだ。援軍なんて来ない。
だが盗賊どもは俺に煽られまくった結果、冷静な判断力を失ってしまったらしい。馬鹿正直に上を仰ぎ見ることで、数秒間の隙が生じた。
――いまだ!
「はぁぁぁぁぁぁああ!」
俺は咄嗟に駆け出しながら、剣の柄に手を添える。
そしてそのまま抜きざまの一撃を見舞おうとして――
――――――
創造神より下記の能力が授けられました。
・攻撃力アップ(超・特大)
――――――
視界に表示された文字列に、俺は目を見開く。
「は……?」
おい。
おいおいおい。
なんだよこの超・特大って。
攻撃力アップというスキルなら聞いたことあるが、最大でも《大》までのはず。それが超・特大って……
「ヴェルス。聞こえますか。私です。創造神イレーナです」
次いで、聞き覚えのある女の声が聞こえてきた。
直接、頭のなかで響いている感じだった。
「前世であれだけの徳を積んだにも関わらず、なぜかご自身に呪いを課したのは納得できなかったので……。内緒で、沢山の最強能力を授けておきました」
「は!?」
いやいや、なにしてくれちゃってんの!?
男のロマンは?
戦闘のスリルは?
これじゃ呪いをかけた意味がないじゃんか!!
「ぬぎぽるぁぁぁああああああ!」
果たして、攻撃力アップ《超・特大》の剣を受けた盗賊のひとりが、空高く飛んでいって星になった。
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