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タカさんの出会い。居場所がなくなった奴らの楽園

好きな事を書いているだけで突っ込みどころがいっぱい。でも、おそらく50000文字くらいにおさめるため突っ走ります

 マースは森の中を一人で歩いていた。もう何も見えない。ここで死んでいい、今でも生きているかどうか解らない。思えば自分は望まれて生まれてきたわけではなかった。


 母さんは父さんが好きだっただけで、僕の事は愛していなかった。父さんとの絆として僕を育ててくれてただけだった。


 攫われて、あそこで一回死んだ……僕は死んでいた。だから、夢を見たんだ。


 いる筈もないのに、そんな夢を見てしまったんだ。


 誰かに必要とされる夢を見てしまった。アラン、リリア、大好きだった。必要とされた。そう思った。思っただけだった。


 加護などなくて当たり前だ……僕は生きていないんだから……


 結局僕は一人で暗い森を歩いている。救いなんてない。何も見えない所でべたべたと裸足で歩いているだけだ。


 もう……いいや……終わろう……いい夢を見れて……ありがたい事に、最後にとびきりの失望をくれた……未練などなにも残らないように丁寧に、丁寧に破壊してくれた……


 全部、悪夢のまま、終わることができる……終われる。


 僕は大きな木の下で座り込んで、その木と一緒になれるように願った。無界の木……人間を拒み続けてきた森の木は、今までの何よりも優しく僕を受け止めてくれた。


 ・・・


 ・・・・


 ・・・・・


 グルルルルルルル……


「んあ?どうした?まる子?なんか見つけた?」


 キューン……


「へ?人間?まる子。人間はもうここには来ないべ?さんざん脅してやったんだから。そこまで馬鹿な奴……いたよ……随分汚いのが……」


グキュウ?


「助けないよお。別に義理ないもん。……あん?こいつ匂い違うな……女神臭くねえ……」


 グルグル♡キューン♡


「ちょっと見せろ……おいおいおい!!こいつ加護持ってないぞ!!へえ!!まだこんな奴がいたんだな!!……それに、とんでもねえ目をしてやがる。生きたまま死んだ目をしている……こいつは……ちょっと面白いかもな……」


 クルワアアアアン♡


「まる子、お前もこいつ気に入った?そうだよな、お前は人間もどきは好きじゃないもんな。本当の人間が好きなんだよな、うん、こいつは……人間だ。本物の。よくこの年まで死ななかったものだぜ。気が変わった。こいつ拾っていくぞ。まる子、こいつ背負ってとんでくれ」


 キュウワアアン♡


 そう無くと巨大なドラゴン、古代竜と呼ばれる白銀の美しい竜はマースを背中に乗せて羽ばたいた、そして、森の奥深く、神殿と呼ばれる住処まで飛んでいった。


 古代竜をまる子と呼んでいた男は竜の速度にも負けず、森の中を追い抜かんばかりの速さで駆け抜けていった。途中で魔獣にもであったが男を見ると急いで道を開け、男と一緒に走り出した。恐怖など一つもない目で、男と一緒にいたいと思って男の後を追った。


 人間に入れない森、その森には遥か昔に絶滅した神話の生物が住んでいる、古代竜、魔狼王フェンリル、白猿ハヌマーン、森の賢人ホルムッド、神鳥ジャータユ、マースが寄り添った木は昔にはマザードーラーと呼ばれる世界樹の一つであった。


 神話の生物を引き連れて、男は神殿に向かっていた。


 ……マースが目覚めたのはそれから三日後だった。


 何か顔を舐められて、ふわふわなベッドに寝かされているような……


 どんなベッドより柔らかく、暖かく、包み込むようにマースを癒してくれるような、そんな母の胎内にいるような感覚を覚えながらマースは目を覚ました。


 虚ろな目で自分の顔を舐めている生物を確認すると、巨大な狼がマースの顔を舐めていた。見た事もない程の巨体。体長は5mはあるだろう。普通に出会ったら即逃げだすか、諦めて死を覚悟するか、それほどの力秘めている事が解った。どんなにエルドラが、勇者の加護を持ったエルドラが頑張っても到底この狼に勝てる事は無いだろう、そう思う程に……


 だが、狼は敵意の欠片もなくマースの身体を柔らかい体毛でくるみ尻尾でマースの身体を冷やさないようにした。


 周りにはさまざまな生き物がいた。巨大なシロクマのような生き物。頭が二つある巨大な犬、人間くらいの大きさだが、身体中に入れ墨を入れた昆を持った白い猿、空には幻想的な赤い鳥が飛んでいる。


「ああ、気が付いたか?」


 そう言ってくれた人は、僕が見た事もな透明な雰囲気を持った人だった。中年で間違いないだろう。でも、年齢なんか関係ないほどの魅力にあふれ、子供のような稚気を持っていた。


 大きい体、おそらく2メートル近くはあるだろう。体重は僕の倍くらいはありそうだった。僕と同じく黒髪黒目、そんな身体なのに怖さなど人つもなく、身体から生気のような物が溢れていた。


 僕は反応できなかった。現状を理解できなかった。


「お前、死にそうな感じだったから連れてきた。感謝しろよ?俺がつれてくる事なんかまずないんだからな。お前は特別なんだぜ?おお、自己紹介がまだだったな、俺はタカフミってんだ。まあ、気軽にタカさんとでも呼んでくれ」


 ニカリと本当にいい顔で笑った。


「もう体も動くだろ?随分酷い状態だったが、薄めたまる子の血を飲んだんだ。たいていの怪我とかは治ってるはずだぜ?」


 確かに痛みはなかった。それどころか、身体に力がみなぎってきていた、ここ5年位で一番状態がいい位だった。


「……あの、まる子って」


「うん?お前を見つけた奴だよ。おーい!!まる子!!目を覚ましたぞ!!」


 キュウウンン


 そんな泣き声が聞こえて、僕の前に巨大な白銀の竜が舞い降りてきた。美しい、本当に美しい竜だった。


 おとぎ話にしか出てこない、伝説の生物……本物の竜。この世界でも竜はいる。トカゲのような地竜、ワイバーン、炎竜、どれも危険度は最高の凶悪な魔獣たちだった。

 

 しかし、目の前の竜は正に別次元の存在だった。神聖な雰囲気を持ち、何よりも美しい、理性の溢れた眼差し、怖さなどない……僕は見とれた。


「こいつはまる子、まあ、本当の名前はマーリシオ・ドュミエリ・シェフィリシアとか言う長い名前なんだがな。ちなみに意味は神聖なる乙女とかそんな意味らしい。めんどくさいからまる子って呼んでいるww性別はないみたいだけどなww」


「本当に……竜……僕の知っている竜とは……」


「ああ、そいつらは亜竜だろ?なんか世代を経るたびに劣化していったなれの果てみたいなもんだ。まる子は古代竜って言ってな。本物の竜だ。多分お前が知っている竜とは桁が違うぞ?」


「……本物の、竜……」


「そう、元々この世界に住んでいた本物の竜だ。女神や魔王の馬鹿垂れが入ってくる前のなww」


「……え……あなたは……」


「おいおい、俺に聞く前にまずお前さんの事を教えてくれよ?久しぶりに興味の持てる奴なんだ。長い事いきているからな。刺激が足りなくてよ?まる子が助けようなんて奴は久しぶりなんだ」


「……あ、僕の名前はマースです。あの、騎士団に所属してたんですが、斥候を命じられて……ここに来ました……」


「ふうん、なるほどな、お前、捨て駒にされたってことか」


「……はい、僕は何も役に立てないから……」


「俺たちが見つけた時はお前武器も何もなかったしな。そんで一人でこの森へ入るなんて事はあるわけがない。ここへ入った人間は帰った事がないしな。なあ、マース、お前武器や鎧持ってなくて良かったな。だからお前生きれたんだぜ?」


「え?」


「ここの奴らはな、敵意に敏感なんだよ。鉄や金属の匂いが大嫌いなんだ。武器を持って入った奴は問答無用で攻撃する。特にくだらない功名心を持ってる奴や住処を争うとするやつには容赦しねえ。もしお前が武器を持っていたら3秒立たないうちに殺されてたぜ?」


「……そうなんですか」


「それにこいつらはな、他の奴の痛みが解る。こいつらも元々は別な場所で生きていたんだが、住みにくくなってな、それで最後の場所としてここに住んでいる。だからこの場所を争うとするやつには容赦しない。だからだろうな、何となくお前から同じ匂いを感じたんだろうよ。ここはな、居場所がなくなっちまった奴らの最後の楽園なんだ」


「……僕も……仲間……」


「マース、どこの世界にもあぶれた奴ってのはいる。頑張ってもどうしようもない事なんていっぱいさ。でも、あぶれた奴らだって生きているんだ。そいつらはどこへ行けばいい?俺も昔色々あってな、今じゃこの森の管理みたいなことやってる。ここでいいんだよ」


「……僕も……」


「お前に何があったのかは知らねえ。だけどな人間の子供が此処に一人で送られたって事は生半可なことじゃねえ。完全にお前を殺す気だったんだろ。お前は居場所がなかった。違うか?」


「……」


「なあ、マース。逃げたっていいんだぜ?戻る事なんかねえ。俺もこいつらももう居場所がなくなっちまった奴らだ。だからみんなでここを作った。誰からも相手にされなくなって、一人きりになった奴らの楽園を作った。もし、お前がもう一度立ち上がりたかったらその時は出て行けばいい。だからマース、お前が何かしたくなるまで」


 ……ここにいねえか?


 マースはその言葉を聞いて手で顔を覆った。追い詰められていた精神は壊れ、まともに表情も作れなくなっていた。へらへら笑い、自分を嫌い、過去に縋り、未練たらしく縋り付いて、最後に裏切られて、なんで生きているか解らなくなっていた。


 その言葉は救いだった。もはやこの場所がどこであるのか、目の前の人が誰であるのか、竜、魔獣、異形の者たち、そんな物は関係なくなっていた。


 あるのは同じ気持ちを持っている。みんな居場所がなくなって集った仲間たち。人である事、そんな物よりも大事な物がある。


 マースは、初めて生きる場所を手に入れた。


身に余るご評価ご感想ありがとうございます!!私の話しの中では非常にライトなお話ですが、最後まで

お付き合いいただければ幸いです

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