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水曜日の彼女  作者: 揣 仁希
冬の始まりから新たな始まりへ
96/98

水曜日の誕生日 後編

次回よりエピローグです(〃ω〃)



ケーキを食べ終わりテーブルを片付けて僕と鈴羽はソファに並ん座ってコーヒーを飲んでいる。


何となく僕が緊張しているのが鈴羽にもわかるみたいでちょっと妙な空気になっている。


「えっと、鈴羽。あのね」

「うん」


僕は覚悟を決めて鈴羽に話しかける。

鈴羽もそんな僕を正面から真っ直ぐに見つめてくれる。


「っ、鈴羽、改めてお誕生日おめでとう。それから・・・これを」

僕は鈴羽の手のひらにそっと小さな箱を乗せる。


「開けてもいい?」

「うん」


鈴羽は丁寧に丁寧に包装を解いて箱を開ける。


「・・・皐月君」

「ちょっと気が早いのはわかってるんだけど・・・受け取ってほしいんだ」

「・・・・・・」

「僕はまだ学生で鈴羽を幸せにすることが出来ないかもしれない。もしかしたら不幸にするかもしれない」

「そんなこと・・・」


何か言いかける鈴羽を遮って僕は続ける。


「でも仮にそうなったとしても僕は鈴羽に側にいて欲しいと思ってるし不幸にした分幸せにするようにするつもりだ」


「うん・・・」


「一緒に暮らすって決めたときからずっと考えてたんだ。いや・・・多分はじめて逢ったときから」


「うん・・・」


「だからね、鈴羽。今すぐにってわけじゃなくていいんだ」


「うん・・・」


僕の話を聞く鈴羽の目にうっすらと涙がたまっている。

僕は一度息を吸ってからそんな鈴羽の目を見て大切な言葉をつむいだ。



「鈴羽・・・僕と・・僕と結婚してほしい」



「・・・・・・」


鈴羽は涙を浮かべてなんて表現したらいいのかわからない顔をしている。

でもそれは困ったような、否定するような顔じゃなくて。


嬉しいような、笑っているような、そんな顔。


「鈴羽?」

「あのね・・・皐月君」

「うん」

「私ね・・・幸せよ。皐月君に出逢えて、あなたに出逢えて。あなたを好きになって。あなたの側にいれて」


鈴羽の瞳から涙が滑り落ちる。


「だからね・・・私を・・・私を皐月君の奥さんにしてください」


「鈴羽っ・・・」

答えは初めから決まっていた。

僕の答えも、そして鈴羽の答えも。


永いキスの後、鈴羽は柔らかな笑顔を見せて僕に指輪の入った箱を押し付けたて呟いた。


「指輪・・・皐月君がしてね」

そう言って細くしなやかな左手を差し出す。


「うん」

その手を取り、そっと薬指に指輪を通す。

決して高価なものでもなく煌びやかなものでもないけど。

「ふふっありがとう・・・ありがとう」

指輪をした手と指輪を大事そうに胸に抱く。


たまらなく愛おしい彼女を僕は胸に抱き寄せもう一度言う。


「改めて言うね、鈴羽」

「うん」

「僕と結婚してくれる?」

「はいっ!」


鈴羽は僕の背中に手を回し思い切り抱きついて、最高の笑顔でそう言ってくれた。


ほんの一年前はただ遠くから見ているだけだった彼女。

言葉を交わしたこともなく、もしかしたら一生交わらなかったかもしれない僕と鈴羽の道はあの日、あの時に偶然にも交わり絡み合い・・・決して解けることのないひとつの道になった。


僕の胸で左手の指輪を眺め最高の笑顔を見せてくれている鈴羽。

その最高の笑顔を僕はずっと守りたいと心から思った。







お読み頂きありがとうございます(〃ω〃)

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