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水曜日の彼女  作者: 揣 仁希
秋の訪れとそれぞれの冬
73/98

火曜日の合格発表


12月3日。今日は朝から鈴羽と大学の合格発表を見に行くことになっている。

昨日の夜から鈴羽はそわそわと落ち着かない様子で、まるで自分が受験したかのようだった。


「そろそろ見に行こうか?」

「う、うん。」

「ははは、鈴羽がそんなに緊張してもしょうがないよ」

「え〜だって気になるじゃない」

鈴羽の頭をくしゃっと撫でて僕は玄関のドアを開ける。

「もぅ、皐月君が落ち着きすぎなのよ」

そう言って鈴羽が僕の手をとり指を絡ませる。


「電車で行く?」

「う〜ん、車出そうかな?」

「そっか、じゃあお願い」

鈴羽が僕の家によく来るようになってからハイツの駐車場を借りている。

元々各部屋に一台づつ付いていたんだけど僕は必要なかったから返していたのを借り直したわけだ。


鈴羽のアルファに乗って一路大学へ。

僕の受験した大学は都内の郊外にありかなりの規模を持つ中高一貫の付属校をもつ。


距離的には僕の家から電車で駅5つ先、車では20分くらいなので結構近い。


「鈴羽は自分の受験のときもこんなにそわそわしてたの?」

「そんなことなかったんじゃないかなぁ。皐月君の発表だからよ、私の時はむしろお父さんが・・」

ああ、確かにお父さんならあたふたしてそうな気がする。


車ならあっという間についちゃうんだな。

大学の、敷地内駐車場に車を止める。

いつものことなんだけどこの車目立つんだよなぁ。合格発表を見にきたらしき学生達がこちらを注目している。

まぁもう慣れたけどね。


「皐月君、行こう」

「うん」

で、今度は今度で鈴羽が注目されるんだよなぁ。

僕と鈴羽はしっかりと手を繋いで正面入り口の方に歩いていく。

これはこれでまた視線を浴びるんだけど。


正面入り口前はかなりの数の学生が掲示板をみていた。

歓声を上げているもの、がっくりとうなだれて無言で去っていくもの。

僕と鈴羽はそんな彼らを見ながら掲示板を見上げる。


「皐月君、番号何番だっけ?」

「えっと・・11903番だね」


2人して順に番号を見ていく。


11890・・11896・・11897・・

11898・・11900・・11901・・


「11902、11903・・あった・・」

掲示板には僕の受験番号11903番がしっかりと載っていた。


「わぁ!やったぁ〜!皐月君〜おめでとう〜!」

鈴羽は辺りを気にせず僕に抱きついて歓声を上げる。

「うん、ありがとう。鈴羽」

僕もそんな鈴羽をしっかりと抱きしめる。

当の本人より鈴羽の方が大喜びなんだけどそれはそれで嬉しいし。


・・・周りの視線がやけに痛いけどそんなことは気にしない。


「もぅ、心配したんだからね」

「あははは、ごめんね」

髪を撫でながら僕は改めて掲示板を見る。

はぁほんと良かったよ、これで心置きなく歳が越せるよ。


正面入り口から少し離れたところで僕はリョータと高山君、それに担任の先生や両親に連絡する。


「今日はお祝いしないとね!」

「うん、そうだね。鈴羽が晩御飯作ってくれるの?」

「えっ、えーと、作るのは皐月君だね?」

「いつも通りだね」

「もぅイジワルしないでよ!」

すっかり気持ちが軽くなったので2人してはしゃいでしまう。


その後、リョータや高山君に先生方からお祝いの電話やメールが届いてひとしきり喜びあったあと僕たちは大学を後にした。


晩御飯の買い物をして家に着くと鈴羽が聞いてきた。


「ご両親からは?」

「母さんらしいメールが返ってきたよ、ほら」


スマホのメール画面を鈴羽に見せる。


『おめでとう』


ただそれだけの返信。

「随分とあっさりしたメールね」

「母さんならこんなものじゃないかな」

そもそも返信が来ない時の方が多いくらいなんだから返ってきただけでも上出来だと思う。


その日の晩御飯はいつもよりちょっとだけ豪華に作った。普段はあまりお酒を飲まない鈴羽も珍しくほろ酔いになっている。


「えへへ〜もぅほんとに心配したんだょ〜」

食後のリビングで鈴羽が甘えてくる。

「うん、うん」

「皐月君が変に〜落ち着いてるからぁ〜」

酔うと鈴羽って子どもっぽくなるんだよなぁ。

「むぅ〜〜ちゅっ。えへへ〜」

さっきから抱きついてキスをして、にへらっと笑ってキスをしての繰り返し。

「もう鈴羽ちょっと酔ってるだろ?」

「うぅ〜ん、そんなころないよ〜」

ゴロゴロと可愛く甘える鈴羽をお嬢様抱っこして寝室へと連れていく。


「えぇ〜まだ眠たくないよぉ〜」

「酔っ払いにはおしおきだよ」

ベッドに鈴羽を押し倒して唇を重ねる。

「んん〜ぅ、うふふふ。だぁいすき」

「知ってる」


合格発表の日の夜はまだまだこれからだった。




お読み頂きありがとうございます(//∇//)

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