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水曜日の彼女  作者: 揣 仁希
秋の訪れとそれぞれの冬
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水曜日の晩餐会 後編

この後はちょっと時季外れのクリスマスから年末までです( ̄∀ ̄)



門崎会長に続いてホールに入る僕たち。

そこでは、大勢の男女がバイキング形式の会場で思い思いに談笑していた。


ホールにアナウンスが流れる。


「ただいま、本日の主催者であらせられます門崎商事会長、門崎総一郎が到着なされました。皆様、盛大な拍手を!」

するとホールにいたほぼ全員の視線が僕たちの前にいる門崎会長に集まり万雷の拍手が沸き起こった。


門崎会長は片手を上げそれを制止すると係の人がマイクを手渡す。


「あ〜今日は皆忙しい中こんな爺いのために集まってくれて感謝しておる。堅苦しいのはなしじゃ。ゆっくりと楽しんでくれい」

門崎会長の挨拶の後は先程と同じくバイキング形式の食事が始まった。


多分色々な会社の重役なのだろう、皆入れ替わり立ち替わりに門崎会長に挨拶にくる。

鈴羽は流石に会長秘書だけあってそんな人達とも和やかに談笑している。


それで僕はというと、興味の目を多方向から向けられ続けていた。

この会場で氏素性が不明なのは僕だけだからね。


「立花君!見違えるようだな!いやいや立派なものじゃないか!」

「喜多嶋の若い頃よりずっと立派だな!」

ビール片手に喜多嶋社長と桂木社長がそう言って声をかけてくれた。

「ははは、場違い感がちょっとあり過ぎて困ってますよ」

「そんなことないだろ?注目の的だぞ」

「ああ、なんて言ってもあの会長が九条君と一緒に連れてきたんだ。今頃君を知らない連中は情報集めに必死になってるぞ」

わはははと2人して大笑いしている。


「えっと?どういうことですか?」

「ん〜そりゃ決まってるだろ。会長には息子さんがいるが今は海外の支社を任されて不在だ。お孫さんは女の子が3人。わかるだろ?」

「・・・まさか?」

「周りの連中はきっと立花君のことを会長の隠し子かはたまた後継者かって勘ぐってるだろうさ」

「・・・勘弁してくださいよ・・」

頭が痛くなってきた。


周りの人達は、僕が喜多嶋社長と桂木社長て親しげに話しているのを見てまたザワザワしだした。


「わざとですよね?」

「はははは、わかるか?」

「そりゃわかりますよ。楽しんでそうですから」

僕は苦笑して喜多嶋社長にそう返す。


「皐月君!ごめんね!挨拶が多くて捕まっちゃってて」

「ああ、九条君、あちらはもういいのかな?」

「はい、桂木様。一通りのご挨拶は終わりましたので」

「そうか、おい、喜多嶋!会長のとこに行くぞ」

「はいはいよっと、じゃあ立花君、九条君、また」


そう言って2人は門崎会長の元に挨拶をしに行った。


「鈴羽、お疲れ様」

「皐月君も、でもすっごいパーティね、ちょっと普段お目にかかれない会社の重役さんばっかりよ」

「みたいだね、僕にはよくわからないけどね」

「そうよね・・ほら、例えばあの壁際で女の人と話してる人」

鈴羽のさす方を見ると女性と初老の男性が話している。

「梶原工業の会長さん。アポ取るにも2ヶ月先になるような人だし・・」

鈴羽が教えてくれる人は僕でも知ってるような会社の重役さんばかりだった。


「ふぉふぉふぉ、楽しんでおるかな?」

「楽しんでいるように見えますか?」

「まぁ社会勉強じゃと思うて見聞を広げるんじゃな」

門崎会長、僕に鈴羽。3人で話しているとまた周りがざわつく。

「ほら、また。会長さんは僕をなんて紹介したんですか?」

「何ても何も、まぁあれじゃ適当に誤魔化しといたぞ」

「適当にって・・・」

「その適当がややこしいことになるんじゃないですか?」

「ふぉふぉふぉ、細かいことは気にせんでよいではないか。のう」


門崎会長はそう言って笑いパーティの方に戻っていった。


この後、色々な人が僕と鈴羽のところに来て話をしていったのだけど、当たり障りのない会話に終始していて一体門崎会長が何て説明したのか結局わからずじまいだった。



「今日はどうもありがとうございました」

「気にせんでええよ、ワシも楽しませてもろうたからな」

「会長!私はともかく皐月君におかしなことしないでくださいね!」

「わかっとるわかっとる。しかしなんじゃ、こうしたちょっとした出会いがいずれ坊主の力になることもあるんじゃぞ」

「?」

「まぁそんなこともあるかもしれんという話じゃな」

門崎会長はそう言って僕の肩をポンポンと叩いて船の上に上がっていった。



「何だか余計に疲れちゃったね」

「うん。楽しかったといえば楽しかったんだけど」

僕と鈴羽は家に帰ってきてからお風呂の湯船に浸かって今日のことを話していた。


「気分的なものだよね、知らない人ばかりだったから」

「私だって普段なら滅多に会わない人たちばかりよ」

2人して、はぁ〜とため息をついて顔を見合わせて笑う。


「僕としては鈴羽のドレス姿が見れたから満足なんだけどね」

「もぅ私だって皐月君のカッコいい姿が見れたから満足だよ」

ドレス姿の鈴羽を思い出して顔が緩んでしまう。

「あ〜皐月君、なんかヤラシイこと考えたでしょ〜」

「えっ違うって」

アヤシイぞ〜と鈴羽にジト目で見られて僕は目を逸らす。


結局ちょっとのぼせてお風呂から上がり、今日は2人して早めの就寝になった。


因みに今日のドレス姿の鈴羽の写真を今後門崎会長がこそっとくれるそうだ。


ありがとうございます!会長!











お読み頂きありがとうございます(//∇//)

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