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水曜日の彼女  作者: 揣 仁希
秋の訪れとそれぞれの冬
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木曜日は誕生日準備中


あっと言う間に季節は移ろいもう冬の息吹がすぐそこまで来ている10月末。


僕の学校の3年生は受験を控えて現在は自由登校になっている。

かく言う僕も来月半ばには試験があるわけで、ちょっとプレッシャーなりなんなりがらあったりもする。


そのあたりはとりあえず置いておいて、明日は杏奈ちゃんと梓ちゃんの誕生日会を開催するので僕は料理の仕込みで忙しい。


色々考えた結果、ちらし寿司と後はチキン類のつまめそうなものを用意することにした。

大人7人なので結構な量になりそうだから前日である今日から準備をしているわけだ。


「ご飯足りるかな?高山君はともかくリョータは食べるからなぁ」


一応ある程度の計算はしてご飯は炊いているけどもうちょっと炊いておこう。


チキンは出来合いも考えたんだけどせっかくなので骨つきモモの照り焼きを作ることにした。

これもちょっと多めにね。


ポテトにするジャガイモは今日のうちにささがきにして下味をつけた後フリーザーパックに入れて冷凍しておく。


寿司ネタも今日のうちに用意しといたし、あとはケーキくらいか。


ケーキはリョータが明日買ってくるって言ってたから大丈夫だろう。

そういえば高山君の彼女、高遠先生がこっちに帰ってくるのが遅れたらしく今日か明日の朝になるみたいだ。

久しぶりに会ってみたかったけどそれも明日の楽しみにとっておこう。


僕はキッチンで明日の料理の下準備を終えてコーヒーを飲みつつリビングに戻る。


「ふぅ、疲れた」

ソファに深く腰掛ける。


窓から見える景色は夕暮れの空から星空へと変化する間くらい。


なんとも中途半端でそれでいて綺麗だと思う不思議な色をしていた。

僕はぼんやりとそんな空を見てコーヒーを啜る。



「皐月君〜ただいま〜疲れたよ〜」

玄関のドアを開ける音がして鈴羽が帰ってくる。

ここのところ忙しかったみたいで久しぶりだ。

といっても4日ほどだけど。


「鈴羽、お疲れさま」

カップをテーブルに置いて僕は鈴羽を抱きとめる。


えへへ〜っと僕の胸にすり寄って顔を近づける。

そっとその唇にキスをしてソファに倒れこむ僕たち。


「皐月君成分をちょっと補給しないと」

サラサラの髪の毛が首筋にあたりくすぐったい。


髪なの顔をうずめて胸いっぱいに鈴羽の香りを楽しむ。

「仕事忙しかったの?」

「うん、明後日有給でお休みにしたからその分を前倒しにしたから」

「3人とも?」

「そっ、私はともかくあの2人は明後日なんか仕事にならないと思うし」

「ははは、それもそうだね。リョータも大変だ」


ひとしきりソファで抱き合ってから晩御飯にする。


「明日と同じ料理になるけど、ごめんね」

「ううん、私こそいつも食べさせてもらうばっかりで」

テーブルにちらし寿司とチキン、サラダを出して2人で味見も兼ねて食べてみる。


「うん。まあまあかな。もうちょっとお酢をきかせてもいいかな」

「そう?私はこれくらいで十分だと思うけど」

我ながらいい出来だ。

「明日は何時くらいになりそう?」

「7時にはこれると思うわ、明後日休みだし夜ふかしも大丈夫よ」

「ほどほどにね」


キッチンでコーヒーを淹れて鈴羽に渡す。

「大勢で騒ぐのって久しぶりだわ」

「僕もだよ」

「皐月君と2人きりもいいけど、たまには大勢でってのもいいわね」

「うん」


いつものようにソファに並ん座って窓から見える夜景を眺める。

僕の方にもたれていた鈴羽から、小さな寝息が聞こえる。


「おつかれさま」

頬にそっと口づけをして、起こさないように抱き抱えて寝室にはこぶ。


明日は朝起こしてあげないと、きっと寝坊するなぁ。

気持ち良さそうに眠る鈴羽を見て僕はアラームの時間をちょっと早めにセットし直した。












お読みいただきありがとうございます(//∇//)

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