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水曜日の彼女  作者: 揣 仁希
秋の訪れとそれぞれの冬
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月曜日のバイト先にて


「ありがとうございました〜」


夕方のピークもようやく終わり、お客さんがいなくなった店内を見て一息つく。


「いつもですけど、ほんと忙しくなりますよね?」

「ああ、そうだね。立花君がいてくれて助かってるよ。あの時間は慣れた子じゃないと捌き切れないからね」

店長が、そう言って僕の肩をたたいて笑いながら休憩に行ってきたらと言ってくれる。


「じゃあ、ちょっと休憩してきますね。すぐ戻りますから」


バックヤードの休憩室でコーヒーを入れて一休みする。

「ふう、疲れた・・・」

「おっ、立花君おつかれさん」

「こんばんは、斉藤さん。今からですか?」

「おう、ちょっと講義に出てたら遅くなっちまって、忙しい時間に間に合わなくて悪かったな」

「いえ、なんとかなりましたし大丈夫でしたよ」

斉藤幹也さん。バイト先の先輩で都内の大学の3年生だ。高校の時からここでバイトをしているらしく一番の古株で面倒見もよくていい先輩だ。


「さってと今日も頑張りますか」

「あはは、頑張ってください。今日は朝までですか?」

「ああ、6時までな。明日は講義ないからガッツリ働いてやるぜ」

手をひらひらと振り休憩室を出ていく。


「さてと僕も、もうひと頑張りしようかな」



「お疲れ様でした」

「はい、お疲れ」

「お疲れさん、またな」


10時少し過ぎにバイトを終えた僕は、店長と斉藤さんに挨拶をして店をでる。

バイトで遅くなる日はさすがに鈴羽もうちにはこないので今日は1人だ。


と、店を出て帰ろうとした時、道路脇から声をかけられた。


「立花皐月君で間違いないかな?」

道路脇の駐車スペースには黒塗りの高級車が止まっており後部座席から、老人がこちらを向いて聞いてきた。

「はい?えっと、そうですけど?どちら様でしょうか?」

その筋の人には見えないけど、見たことない顔だ。


「ああ、すまん。すまん。ワシは門崎という。立花和先生のご指導を拝しておる」

「母さんの?」

「いかにも、なんなら聞いてみるといい。貴登喜もよう知っとる」

「父さんまで?」

何者だろう?両親を知っていて、父さんを名前で呼び捨てにするくらいの人だ。かなりの方なのだろう。


「僕が立花皐月に間違いありませんが、どういったご用件でしょうか?」

僕は姿勢を正して門崎さんに向き直り聞いてみた。


「ふむ・・・」

門崎さんは、そんな僕をじっと見つめてから大きく頷いた。


「すまんかったな。もう用件は済んだわ」

「えっ?」

「合格じゃ。さすがは和先生の息子さんじゃ。呼び止めて悪かったな。またそのうち会うじゃろうから楽しみにしといてくれ」


呆気にとられている僕を置き去りに門崎さんはそれだけ言うと走り去ってしまった。


「何だったんだ?今のは?」

僕は狐につままれたような気分で帰路についたのだった。













お読み頂きありがとうございますm(_ _)m

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