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水曜日の彼女  作者: 揣 仁希
第1章 出会いの春と進展の夏
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喫茶店の水曜日


「えっと、あの、ありがとうございまひゅ」

うわっ噛んだ。めっちゃ恥ずかしい!ダメだ、頭真っ白だ。


「ふふっそんなに緊張しなくてもいいわよ?大丈夫?」

「はい!だっ大丈夫であります!」

大丈夫でありますってなんだ?僕、何言ってるんだ?いやいやそれより、この状況が飲み込めない。


あの後、僕は彼女に傘に入れてもらい公園近くのお洒落な喫茶店に連れてきてもらっていた。

うん。1人じゃあまず入らないな、ここ。


「コーヒーにする?紅茶の方がいいかしら?」

「あっあの、えっと、その、こっコーヒーで」


彼女は僕に注文を聞き慣れた感じで店員さんにコーヒーを頼む。

その横顔につい見惚れてしまう。まつ毛長い・・・


「今日はお昼から雨予報だったから傘持ってきててよかったわ。他の日は車だから傘持ってないのよね」

彼女はそう言って優しそうな笑顔を向けた。


うわぁ、直視出来ない。近くで見るとびっくりするくらい綺麗な人だ。心臓が口から出そうでヤバイ。


「す、すみません。うっかり傘持ってくるの忘れちゃて・・・改めてありがとうございました」

僕は下を向いたままそう言って小さくなった。


「ふふっ、どういたしまして」


静かな店内は、ジャズが小さめの音で流れており雨の降る音と重なりゆっくりとした時間が流れているように感じる。


ふぅ、ちょっと落ち着いてきたぞ。これは奇跡的なチャンスなんだ!がんばれ僕!


僕は彼女にわからないように、深呼吸して意を決して話しかけた。


「あの・・・」

「僕君は・・・」


・・・被ったorz


「あはははっごめんね、なんだかおかしなことになっちゃったね」

「ははは、こちらこそ」


少し緊張がほぐれた気がする。結果オーライ!


「僕君は高校生だよね?近所の学校かな?」

「はい、都立藤花です」


うちの高校は、進学校ではあるんだけど生徒の自主性を重んじるらしく制服がないんだよね。


「おーっ有名進学校だね。頭いいんだ」


彼女は、少し大袈裟に驚いてみせた。

・・・そんな仕草もグッとくる。


「コーヒーお持ちいたしました。ごゆっくりどうぞ」

店員さんが、コーヒーを持ってきてくれる。


「お砂糖とミルクいる人かな?」

「あっミルクだけで・・・」

彼女はその白くてほっそりとした手でコーヒーにミルクを入れてくれる。


「僕君?・・・」

いかん!見惚れてた!


「ふふっそういえば名前、聞いてなかったね?わたしは九条鈴羽。すずははすずに羽で鈴羽ね。僕君は?」

「あっ僕は、立花・・・皐月です」

「さつき君?」

「えーっとはい、3月4月の皐月です。女の子みたいな名前でよくからかわれました」


父さん母さん、もっと男らしい名前プリーズ!


「キレイでいい名前ね、皐月君」


父さん母さん、グッジョブ!!


なんとか持ち直した僕は、それからしばらく高校生活についてあれこれ彼女、九条さんと話をした。


「あら、雨上がったわね」


喫茶店から見る窓の向こうを行きかう人達はもう傘をさしてはおらず、どうやら雨は上がったようだった。


「ごめんね、遅くなっちゃって。雨止んでるうちに帰りましょうか」


そう言って九条さんは、僕を促して席を立った。


「ここは払っておくからいいわよ、お姉さんに任せなさい。」

僕が財布を出す前に言われてしまいました。

ありがとうございます。今月ピンチなんです。

いや、男としてどうなんだ?それは。

なんて事を僕が考えているうちに九条さんは会計を済ませて、入口で待っていた。


「うん。雨大丈夫そうかな?皐月君はお家近所?」

「はい、駅向こうなんですぐです」


「そっか、はい、じゃあこれ」

そう言って九条さんは僕に傘を差し出した。


「えっいや、大丈夫ですよ、すぐそこですし」

僕に傘を貸しちゃうと九条さん、雨降ったらマズイじゃないか?そんなわけにはいかない。

「大丈夫よ、わたしは会社に戻れば傘あるから、また今度・・・水曜日に返してね」


彼女はそう言って、悪戯っぽく笑うと僕に傘を押し付けて、雑踏の中に消えていった。



ちなみに僕はというとその彼女の笑顔に見惚れていて何かいうことも出来なかったのは言うまでもない。









お読み頂きありがとうございます。

並びに、ブックマーク、評価頂いている皆様本当にありがとうございます。


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