オリシス兄貴と再会
「もう、そろそろ11時か。今日は、結構進んだわ」
パソコンの画面を眺めながら、凛は大きな欠伸をする。
「明日は日曜日だし、寝溜めしておかないと」
「マスター、同人誌の作成もいいですけど早寝早起きも大切ですよ」
パソコン画面に映ったセトを見て
「学生は時間が足りないのよ。明日は休みだから、目覚しの設定オフにして」
おやすみなさい、とパソコンの電源を切る。
「ひーまーだーなー」
人間が寝ている間は、うぃるすばすたーは特にやることがない。
ごろごろと転がっているセトを見て
「暇なら、凛さんに必要な情報探して喜ばせてあげたラ?」
カレーの鍋を混ぜながら、メシェドが声をかける。
「……必要な情報」
セトは記憶をたどる。
「はぁ、秋月先生のストーリーって引き込まれるのよね。キャラクターも美しいし……服装も細かい所まで再現されてるから、きっと素敵な女性の先生よ」
目を輝かせていた凛を思い出す。
「よし、秋月先生の情報を集めて褒めてもらおう。メシェドさん、行ってきます」
「明日は、鯖カレーヨ」
セトはメシェドに横目を向け
「昨日も鯖……」
「明日のは、鯖味噌ヨ」
「うわぁ、さすがメシェドさん」
「……ツッコミがいないって、不便ネ」
♦︎♦︎♦︎
「ええ? マジで」
「確か、顔出ししたことないだろ」
広場に数人のうぃるすばすたーたちが集まっている。
それを見てセトも情報の確認に向かった。
「すごいニュースですか?」
セトが聞くと、スーツを着た女性が視線を向ける。
「BL漫画家で有名な、秋月先生よ。来週、神楽町の書店でサイン会を開くって」
女性は肩を竦めた。
「うちのマスター、全巻持ってるのよね」
「うちのマスターもです。良かった、さっそく有益な情報が集まりました」
早く戻ろう、とセトが踵を返す。
「ぶっ」
「あ?」
思いっきり背後に立っていた長身の青年にぶつかった。
「痛い、この巨人兵!!」
涙目でセトが訴える。
「背が低いのが悪りぃだろ。悔しかったら……」
しばしの沈黙。
「あ、兄貴? オリシス兄貴?」
犬のように引っ付いてこようとしたセトを、青年は急いで避ける。
「……気のせいだ。俺は、オリシスの双子の弟の従兄弟、アウサル」
「ほぼ、同一人物だよね? それなら僕はバアルでもいいし」
「嫌な奴にあった」
そう言って、オリシスは額を抑える。
「兄貴のマスターも、秋月先生のファンなの?」
「まあ、そんなとこだ……じゃあ、俺行くわ」
踵を返そうとしたオリシス腕を、セトが思いっきり掴む。
「うち、明日はメシェドさんの鯖カレーなんだ。兄貴も食べて行ってよ」
「いやいやいや、なんでそうなる」
翌日。
「マスター、こっち僕の兄貴だよ」
「……どうも、オリシスだ」
パソコン画面を見て、凛は眉を寄せる。
「……なんか、増えてる」