アヌビスくんは、後輩です
「マウスポインターで、頭を叩かれるのは納得できません」
セトは頰を膨らませる。
「それは、セトちゃんがおっちょこちょいだからヨ。それより、カレー食べなさイ」
メジェドが差し出したカレーを受け取り、セトは表情を緩ませる。
「やっぱり、朝食はカレー……むっ、新型ウィルス」
「エクソダス社に、早めに連絡した方がいいネ」
カレーの入った鍋を眺めながら、メシェドが頷く。
「うぃるすばすたーが進化しても、新しいウィルスは次々出てくるよね。マスターにも、更新を忘れないように言っておかないと」
セトは右手をスライドさせると 無機質な空間にドアが出現。
「ちょっと、マスターのスマホに移動してきます」
「言ってらっしゃイ。今夜も、カレーヨ」
何を考えているか分からない微妙な表情で、メシェドはセトを送り出した。
♦︎♦︎♦︎
「アヌビス、お手だよ」
ミカの言葉に反応して、スマホ画面の黒い犬が手を出す。
その様子を見て、凛は目を細めた。
「うわぁ、アヌビスかわいい」
ミカも嬉しそうな表情で
「用もないのに、見ちゃうんだよ。ああ、スマホ依存になりそう……」
ピロリン♫
自分のスマホがなったのに気づいて、凛はポケットからスマホを取り出す。
「何か用? 別にメール出す予定はないわよ」
ドライな凛の対応に、セトはしょんぼりとした表情。
「マスターが冷たい……」
「……はいはい、別に機能のことは気にしてないわよ」
凛はため息をつく。
それを聞いて、セトは目を輝かせる。
「やったぁ」
喜ぶセトとは対照的に、凛は呆れた表情をしている。
「実は新しいウィルスを検出したので、きちんとパソコンのアップデートをするように警告に来ました」
凛は肩を竦めると
「それくらい、言われなくてもやってるわよ」
それを隣で聞いていたミカは
「クリックすると、警告音が止まらないことあったよ。あれ、心臓に悪いよね……」
不安そうな表情をする。
「だ、大丈夫よ。うぃるすばすたーも進化してるし」
凛が肩を叩いて励ます。
「おや、そちらはアヌビス君ですか。久しぶりですねー」
セトの言葉に反応するように
「ワン」
アヌビスが吠える。
親しげな様子を見て
「知り合いなの?」
スマホ画面のセトは腰に手を当て得意げに語る。
「なんと、アヌビス君は僕の後輩です」
それを聞いた凛は、申し訳なさそうな表情でミカに頭を下げた。
「ミカ、ごめん。欠陥品紹介したかも……」
ミカは特に気にした様子もなく
「開発している会社は同じだし、そういうのって結構あるの知ってるよ。へー、セトくん凄いね」
逆にセトを褒める。
「マスター、僕はこれでも有能なんんですよ。開発した、お父さんとお兄さんにちゃんと感謝してくださいね」
それを聞いた凛は額に手をあてた。
「確かに、エクソダス社で父さんと兄さんが共同開発してるのは聞いてたけど……エジプト神話元にしてるなら、セトに兄弟が居ても不思議じゃないわよね」