それから...そして町に
んー、趣味と思うとゆっくり書けるからいいなー。
俺は次の日もエシュナの家に居る。
あの日からエシュナは凄く元気だ。凄く元気になった。
俺が食料を取ってくるとそれを喜んで料理してくれて、食事が終わったらイチャイチャして...これがリア充ってやつか!俺は今勝ち組になったんだ!
......いやいやいや、まだちゃんとこの子を食わせていかないと...
はっ!俺、帰るんだったよ!半ば幸せすぎて忘れかけてたよ...でもなぁ...エシュナ可愛いし...もしちゃんと生活できるようだったら...
いやいやいや!俺は帰って学生を...でもなぁ...
くそう!幸せで帰りたくなくなってくるなんて...何て狡猾な罠だ!!
取り合えずもうゴブリンは居ないだろうと言う事で、村長からゴブリン退治の金を貰う銀貨44枚だった。
これ多いいの?少ないの?
良く分からないので防犯の為少しだけ魔法袋に戻して、銀貨14枚はそのまま袋だ。
そういえば防犯もだけど防スキルもしとかないとなぁ、
「えーと特殊防御、サイレンス無効、スキル看破無効」
よしこんなもんか、後は気がついた時やらでチェックしよう
ちなみに魔法袋があるので、そちらに荷物はほぼ移して手ぶらだ。
「旦那様」
エシュナが俺に話しかけてきた。
しかも旦那様!!やばい!頬がニヤけて緩みそうだ。
でも、ここは我慢我慢...冷静に冷静に...
俺は平静を装いつつ、エシュナの方を向いた。
「なんだいエシュナ?」
「旦那様承知してくれるかは分かりませんが...良いでしょうか?」
「何を?」
「私と同じく囚われていた2人を、同じく娶っていただけませんか?」
俺は彼女に言われた事をもう一度よく思い出した。
「エシュナ...それは彼女達も僕の奥さんにしろと?」
「はい」
「理由を聞いていいかな?」
でないと、いきなり奥さん増えても急いで稼がないといけなくなる。
「それは私達がゴブリンに襲われたからです」
「え?」
ゴブリンに襲われたからって...
「私達はあそこで囚われ、ゴブリンを増やすのを手伝いました」
「でも、それは君らの意思じゃなくて...」
「それでもです。それでも事実は変わりません...汚された事実も、恐らくそれがあってこの村からはまともに見てくれる人は居ないと思います。それに...本当なら...今すぐ死んでしまいたい位です。」
「ダメだ!」
そう言いながら俺は、エシュナの唇を無理矢理奪う
「死にたいなら、その命を救った俺の物になれ!勝手に死ぬことは俺が許さない!!」
俺はそう言って、強くエシュナを抱きしめながら、彼女と長くキスをした。
彼女の瞳からは涙が溢れていた。
そうだよなぁ...何処の世界でも人間って思い込みや先入観でイメージが結構縛られちゃうもんなぁ...思い込みってやつだ。
この世界でもゴブリンってやっぱいいイメージ無いし、それに囚われていたとしたら尚更なぁ...
少し考えて、先ず聞いてみる。
「この村には宿屋とかは無いよね?」
「ええ、ありません」
「ん~、一泊の値段は分からないかぁ...じゃあ食費とかは分かる?」
「食費ですか?」
「うん1日の」
「そうですね...大体一人身なら銅貨5枚といったところでしょうか?」
銅貨もあるんだそしたら...
「妙な事を聞くかもしれないけど気にしないでね、ちょっと山奥にいて世の中に疎いんだ」
「ああ、成る程だから旦那様は、今さっきから私にきいてらっしゃるのですね?」
良かった。誤魔化せた。
「うん。そういう事、後お金は金貨、銀貨、銅貨でいいのかな?」
「いえ、白金貨、金貨、銀貨、銅貨、石貨となっています」
「そっか、ありがとう」
「いえ、どういたしまして」
それから俺は魔法袋から1本の装飾のついた短剣を取り出す。
「取り合えずこれが高値で売れれば、冒険者として安定収入が見込まれるまで、食いつなげると思うんだけどなぁ?」
「どこの家紋でしょうねこれ?」
短剣をしげしげと2人で短剣を眺めていた。
「これ、絶対身分の高い人の物だよねぇ...」
「ですよねぇ...」
「売る前に確認して、それからにしよう」
「売るんですか?」
「持ち主が分からなかったら の話だよ。持ち主がいたら返すつもりだけどさぁ...」
「そうですか」
まあ、兎に角まず街に行かないとなぁ、それと2人を嫁に迎える...か...何か段々逃げられなくなってきてるような...と言うか自分でこの世界に進んで縛られてるような...(汗)
「とりあえず明日には街に向かう予定だし、2人に会ってくるよ」
俺はそう言うと、エシュナを抱きしめ再度キスをして出かけた。
「と、いう訳で俺が迎えに来るから、その間待っていて欲しいんだ」
俺が2人にそう説明すると、死にたそうな顔をしていたが、俺が話を切り出すと、本当に嬉しそうに頷いて待っていてくれると言ってくれた。
責任重大だなぁ
ちなみに2人の名前は、カーリとオリッシュだそうだ。
やっぱり襲われた事で、いい印象をもたれていないようだった。
彼女達が悪い事をしたんじゃあないんだろうけど、被害者も悪いイメージを持たれるのと一緒だなこれは、あんまいい例じゃないけど強姦された女性と一緒だな...いやそれよりも印象悪いか。
村長には俺が彼女達を迎えに来るので、大事に扱って欲しいと言っておいた。
多分、大丈夫だろう。
翌日、俺とエシュナは村を出る馬車に便乗し村を出た。
舗装されて無い道を、ガタゴトと揺れる馬車に揺られながら俺達は町へと向かった。
座り心地はあまり良くない、けど町まで乗せて貰うんだから贅沢は言えない。
そして馬車が町が見えてきた所まで来た。
ワクワクしてる自分を抑えて、町を見ていると馬がヒヒーン!という嘶きと共に暴れ出した。
どうしたのかと馬を見ると、馬の尻辺りに矢が突き刺さっていた。
「どうどう!」
御者の人が馬を宥めているが、馬は暴れている。
馬を落ち着かせないと!
俺はそう考えると、御者さんの所まで行き詠唱を唱える。
「治癒!沈静化!」
馬に治癒をかけて傷を治した後、沈静化で熱くなった頭を冷やしてやった。
すると、馬は徐々に静かになり、落ち着きを取り戻した。
「解毒」
一応、毒や破傷風があったら馬に気の毒なので、ならないようにかけておく。これで心配はないだろう。
すると馬が俺の顔を舐めてきた。
「うわ、やめれ!大きい舌が!」
「おー、お客人、そいつに気に入られたな」
「良かったですね旦那様」
「顔がーー!」
うわぁ...顔がベタベタだぁ...
そんな事をしていると、遠くの方から何人かの集団が見えてきた。
その集団は服装や格好から見るに、まともな職業の人達ではないだろう、恐らく盗賊とか野党の類だな。
俺がそう考えていると、その男達は馬車に近づくと下卑た視線を俺達に向けながら、人を不愉快にさせるような言い方で俺達に高圧的に言ってくる。
「はっはー!オメエら!死にたくなかったら身包み置いていけやー!」
「女は勿論、置いていけー!」
よし!こいつら終わらせる!
俺は、素早くそいつらの位置と人数をスキルで把握すると、即席で呪文を作り出す。
範囲は馬車の周り、ドーナツの形みたいな範囲で、効果は一瞬よし完成。
「俺達に逆らうなんて考えるなよぉ」
バカが何か言ってきているが、俺はそれを無視して御者さんに話しかける。
「御者さん、こいつ等捕まえたら金とか出るかなぁ?」
「へ?そ、そりゃ出るんじゃないかなぁ?」
「テメエ!無視するんじゃねぇ!」
「煩い、麻痺」
そう言った瞬間、周りのおそらく盗賊が一斉に悲鳴を上げ、その場に倒れる。
死にはしないだろうが、少し強めにしといたから暫くは痺れは取れないだろう。
「こ、これは?」
「ああ、魔法ですよ、それよりこいつ等纏めて縛って町に突き出しましょう」
「成る程、そうしましょう」
俺と御者さんは、その後いそいそと盗賊を縛っていった。
そして、全員を縛ると俺達は改めて町へと向かっていった。
町に着くと大きな門があり、その両脇に鎧を着た体の大きい兵士が2人ずつ並んでいた。
俺達はその兵士さん達に、盗賊を捕らえたので引き渡したいと伝えると、兵士の一人がそれを確認して他の兵士を引き連れてきた。
そして、盗賊はそのままお縄となり、兵士に連れられて行った。
「すまないね、最近はここいらも物騒でね。報酬は中に入ったら受け取って欲しい」
「分かりました。兵士さんも大変ですね」
「ああ、全くだ、早く平和な時代になって欲しいものだ。ああ、この町の者でない者が入るには、1人銅貨10枚だ」
兵士さんからそう言われたので、俺は素直に兵士さんに支払った。
「尚、仮住人の証であるカードは冒険者ギルドで発行してもらうようにね。でないといちいち出入りする度にお金を払う事になるから、ここで暮らすなら役所で住人登録しておくれ」
等と兵士さんと話をして、俺達は町の中へ入っていった。
「町に着いたけど君達はどうする?」
御者さんに聞かれると、俺は先ず宿を確保してその後冒険者ギルドに行く事を伝える。
すると御者の人は親切にその場所を教えてくれて、宿屋の前まで送ってくれた。
俺は御者さんにお礼を言うと、御者さんは<盗賊から助けてくれたお礼だよ>と言ってくれた。
そして盗賊を捕らえた分の賞金の半分を俺に渡してくれた。
銀貨3枚だった。
今は少しでもお金が欲しい時だから、これは有難い。
そして話もそこそこに、御者さんと別れると俺は宿屋に2人で入り、宿の確保をする為に宿屋の人に話しかけた。
ちなみに宿屋は大きくて4階建て、1階はかなり広く食堂も兼ねているらしく、椅子やテーブルが沢山並んでいた。
「すいません、宿を取りたいのですが」
「はい、いらっしゃいませ何名様で何泊でしょうか?」
「2人で2,3日泊まる予定です」
「でしたらお一人一泊10銅貨です。お2人ですから60銅貨になりますね」
単純に考えて、今の所持金で1ヶ月ちょい宿屋で生活できるのか、でもそれだけしか生活出来ないって意味でもある。
俺は金を払い、3階の部屋に案内された。
まあ、そこそこの部屋だった。
「お食事は朝と夜の2回、決まった時間になってます。食事代はお任せコースなら宿代に入りますが、それ以外は別料金となり、お金を支払ってもらう事になっております」
「分かりました」
そして宿屋の人が出て行くと、俺は彼女を宿屋に残して冒険者ギルドに向かう事にした。
「エシュナ、今から冒険者ギルドに行ってくるけど、留守番を頼んだよ」
「はい、あなた行ってらっしゃいませ」
くうううううう!可愛い顔でニッコリ笑ってそんな事言われたら、行きたくなくなっちゃうじゃないか!
なんて可愛いんだ!俺の嫁さん!
俺は出る前に少し長めのキスを、エシュナとして幸福感に包まれて冒険者ギルドへ向かった。
冒険者ギルドには昼頃だからだろうか、あまり人は居なかった。
俺は冒険者ギルドに入ると、カウンターらしき場所に行き尋ねる。
「すいません、冒険者登録をしたいんですが、ここでいいんでしょうか?」
「いえ、こちらは案内カウンターですので違います。初めての方でしょうか?」
「はい、初めてです」
「では、ここから私の左の方の奥の1番のカウンターで手続きをお願いいたします」
「1番ですね分かりました」
俺は言われた通りに1番と書かれたカウンターへ行くと、そこには新人さんぽい人が座っていた。
「すいません冒険者登録に来たんですが」
「初めてですか?」
「初めてです」
「では。この紙に名前、性別等簡単な事を記入お願いします」
そして俺はサラサラと紙に簡単に記入していく。
「はいはい...お名前はヤコウ・クロガ さん性別が...え?男?」
「男ですよ、ええ!」
悪かったなぁ!女顔で!
俺が職員を睨み怒鳴ると、即座に職員の先輩であろう猫顔の人が飛んできた。
「お客様、職員が何か不手際をしましたでしょうか?」
「俺、普通にちゃんと性別記入したのに、声に出して驚かれましたが」
「それはどうもすいません。コラ!新人!もっと落ち着いて接客しないといけないだろう!」
「す、すいません...」
「では、改めまして冒険者登録をさせて貰います」
「お願いします」
俺は気を取り直して、確認作業をすると職員から1枚のプレートの様な物を渡された。
「そのプレートに自分の血液を付着させてください、そこからプレートが貴方の大まかな情報を読み取ります」
血かぁ、痛いの嫌いなんだけどなぁ、仕方ないかでも俺碌な刃物持ってないなぁ。
「刃物をお持ちでなかったらお貸ししますが?」
職員さんがそう言ってきたので、俺は有難く刃物を借りて指先を傷つけプレートに血を擦り付ける。
すると、プレートが光り文字が浮かび上がってきた。
おお!何か格好いい!
「これで登録は終了です。貴方は初心者なので最下位のTからですね」
物凄く簡単だった登録、まあいいけどさ。
兎に角俺は急いで金を稼がなくてはいけないのだ。
嫁さん達の為に!
「何か初心者向けのクエストはありますか?」
「そうですねぇ...コボルドや狼討伐、採取等が有ります、壁に張り紙が貼ってありますが、そこには必ずランクが同時に記載されていますので、それを確認してください、そのランクがその討伐における適正ランクです。まあ私達もチェックしますので間違いはありませんが」
「そうですか、後この短剣の鑑定というか、持ち主を探しているのですが?」
俺はそう言いながら、装飾のついた短剣を差し出す。
すると、猫顔の職員さんの顔色がみるみるうちに変わった。
「こっこれをどこで?」
「ゴブリン達が巣くっていた場所にあった物です」
「そうですか、少々お待ち下さい」
すると職員さんは、何やら神妙な顔で奥に引っ込んで行った。
一体何なんだ?そう思ったら奥からまた別の職員が出てきて、奥に通された。
何なのだろう?
通された部屋は少し大きめでドアノブが付いており、広さは人が5、6人程入れる大きさでソファや事務机などがあった。
執務室みたいなもんか?よく知らないけど。
そこで少し待つように言われたので待っていると、ドアが開き別の職員さんが入ってきた。
今度の職員さんは眼鏡をかけて神経質そうな金髪のエルフの男性だった。
「失礼ですが、これを持ってきたのは貴女ですか?」
「先に言っておきますが、男ですからね俺」
これ以上性別で言われるのはもう嫌だからな、ついでに言うと今俺の事女みたいな感じで問いかけてきたよね?この職員さん。
「え......おほん、失礼しました。それは兎も角、これを持って来たのは貴方ですね?」
このやろう...やっぱそう思ってたな、髪と髭を伸ばそうかなぁ...まあ今はともかくこの人の問いに答えよう。
「ええ、そうですよ。ここから少し行った村の近くに小さな村があって、そこにゴブリンが巣を作っていたんです」
「規模とかどれ位の数が居たかは分かりますか?」
「んー...性格な数は覚えていませんが、10匹以上居ましたが全部退治しました」
「お1人で?」
「1人でです。ああ、断っておくと一人で10数匹いるゴブリンをいっぺんに倒した訳じゃあないですよ?少しずつ相手をしましたから」
「ははは、それはそうでしょう。ランクの高い冒険者で無い限り、そんな事は無理ですよ」
その後も何だかんだ問答が続いた。
何を俺から探ろうというのだろうか?この人は?
俺がそう考えていると、ガチャリとまたドアが開き今度は精悍な顔つきの人が入ってきた。
髪は赤く体の所々に傷があってガッチリした体格をしており、いかにも歴戦の勇者という感じだ。
「マスター!まだ話の途中なのですから入ってきてもらっては困ります!!」
「いいじゃないかルーカス、細かい事を言うなそれと俺の判断だ。こいつはやましい事はしてないし嘘もついてない、そして何も知らない、そうだなお嬢ちゃん」
「だから男だっつってるだろ!!」
「はっはっは、そうかそれはすまんなボウズ」
チクショウ!何で毎回毎回......女顔に生まれた事が煩わしい。
「兎に角!何でこんな取調べを俺受けてるんですか?」
俺がそう言うと、マスターと呼ばれた人は真面目な顔つきになり俺に語りかけてきた。
「お前さんの持って来たこいつはな、さる大物が持っていた物なんだ」
「その表情と名前を出さない事からから察するに、あまり深い事は聞かない方がいいようですね」
「その通りだ。聡いな嬢ちゃん」
「男だっつーてるだろ!帰るぞ!」
「ああ、悪い悪い、つい...なそれで話を戻すんだが、まあその大物なんだが...その短剣の持ち主な、ある所の重要人物で今必死に捜索中なんだ」
ああなるほど、どこぞの重要人物が行方不明になって、その人物の持ち物を俺が持って来ればそりゃ真っ先に俺が疑われるよなそりゃ...