魔法を覚えたら楽しくなった。やっぱファンタジーなら魔法だよね。
目の前の3匹のゴブリンはジリジリと俺に近寄って来る。
もう1匹は後ろで弓に矢をつがえている。
畜生。絶体絶命じゃないか...でも...足掻いてやる!!
最初は手斧を持ったゴブリンが手斧を振りかぶって上から振り下ろしてきた。
ゴブリンの動きは大振だが、俺の動きはまだ鈍い、動きの鈍い体を無理矢理動かす。
ブオン!手斧が俺の左側を通り過ぎていく
避けた俺の所に棍棒を持ったゴブリンが更に襲い掛かる。
「ウケキョー!」
意味の分からない叫び声を上げながら棍棒で殴りかかってくる。
これも大振だが、恐怖で体が竦んでいる俺は必死に避ける。
ゴンッ
棍棒が空しく空を切り地面を強く叩く
「ギャギャ!!」
更に短剣をめったやたらに振り回して、くる3匹目のゴブリン
「うわっ!」
避けようとして足をもつらせる。
「ギギョー!」
短剣を持ったゴブリンが上から短剣を振りかぶり、襲い掛かってくる。
ザッ
振り回した短剣は、ギリギリ避けたので致命傷にはならなかったが、浅い切り傷を作った。
「いたたたたた、痛い!」
「ギョー」
更にゴブリンは抑えにかかる。
「くっやめろ!離せ!」
抑えられまいと必死にもがく、ゴブリンもそうはさせまいと揉み合いになる。
「こいつこいつこいつ!ゴブリンのくせに!」
がむしゃらに手足を振り回す。
そうしてるうちに足がゴブリンの腹に当たり、ゴブリンが怯む、そこに後ろのゴブリンが放った矢が飛んでくる。
しかし、矢は外れガッツと八幸の近くに落ちた。
「ちくしょう。死にたくない死にたくない」
近くに落ちた矢を握り締める。
「ギ、ギャー!」
「死ぬもんか!俺は...帰るんだーー!!」
再び短剣ゴブリンが襲い掛かってくる。他の2匹も少し遅れて襲い掛かってくる。
「うわああああああーー!」
グサッ
「ギャーー!」
襲い掛かろうとした2匹は前にいるゴブリンが上げた悲鳴で一瞬足を止める。
ゴブリンの片目には矢が突き刺さっている。
ゴブリンは短剣から手を放し、片目の辺りを押さえ暴れまわっている。
カランと乾いた音をたてて短剣はその場に転がった。
「や...やった...いや、まだだ!」
そう言うと、安心して気が緩みそうになった自分を戒め、転がっている短剣に手を伸ばし掴む。
短剣は、刃渡り20cm位で、刃は錆などが浮いていている。
「こんなので切りつけられたのか...いたたたた」
後で川の水で消毒しないと傷が化膿するかも...
<技能獲得 回避 >獲得 (回避率上昇)
その時、また頭の中に謎の声が響いた。スキルかぁ...スキル!?
そうだ、スキルだ!今この状況を少しでも好転させるなら、スキルとやらを獲得していけばいい
俺、覚悟を決めるんだ。
「ギャッギャッ」
「ギャへー」
手斧のゴブリンと、棍棒を振りかぶったゴブリンがこっちへ襲い掛かってくる。
(落ち着け...落ち着くんだ...勝てる...勝てる筈だ...いや...勝ってみせる!)
八幸は自分に気合を入れると、拾った短剣を両手に持ち、構え少し腰を落としながら半身に構える。
(こうだったかな?いや、今はそれよりもスキルだ、俺の考えが正しければ...)
八幸は2匹のゴブリンの攻撃を避けると、片方のゴブリンに短剣を力を込めて突いた。
「ギャー!」
短剣はゴブリンの鳩尾辺りに突き刺さった。
刺した時にゴブリンが暴れて短剣を離しそうになるが、力を入れてゴブリンから短剣を引き抜く。悲鳴をあげて苦しそうにのたうち回るゴブリン。
〈スキル短剣〉を獲得
やっぱり。このスキルというやつは、何かしらそれに関連する行動をすれば獲得出来るんだ。
問題は、スキルに熟練度やらLvがあるかって事なんだよなぁ......
そう考えていると、近くに矢がガッ! ど刺さる。
いけない、まだ俺は生き死にをかけた最中だった。何をよそ見をしているんだ!
自分に気合いを入れ直す。
残るは、弓を持ったゴブリンと棍棒を持ったゴブリンの2匹だ。
人間、余裕が有れば落ち着くものである。
ゴブリン達の勢いが無くなり、怯えが入っている事に気が付く。
(怖がってる?ああ、そうか、確かゴブリンって弱い者には強気で来るけど、強い者には弱くなる。後、集団で行動する事が多い。だったな)
と、なればもう油断しない限り自分は勝てる。 と思う。
弓矢を持っているゴブリンの対角線上に、棍棒のゴブリンがくるように移動しながら戦う。
「ギャー!」
棍棒を持ったゴブリンが襲い掛かってくる。だが、今さっきよりは怖くない。
大振な攻撃をしてきたので避けた後、喉にナイフを突き刺す!
「ギョ...ボ...」
よし、これで残り1......じゃなかった目に怪我をしたのを含めて2匹!
だがそんな心配は必要無かった。残りのゴブリンは一目散に逃げていったからだ。
「ふ~~~......い...生き残れた...」
ゴブリンを追い払って、一安心してその場に尻餅をつく、すると今頃手がガタガタと震えていた。
今になって抑えていた恐怖が現れたのだ。
更にその後、ゴブリンとは言え生き物を殺した事に吐き気を覚え嘔吐したのであった。
八幸は暫く休んだ後、今後の事を考えた。
帰るにしても、先ずは生きるのだ。
先ずは武器を確認する。今さっきゴブリンが持っていた。
短剣
手斧
棍棒
どれもこれも手入れが悪いらしく、状態が良くないでも無いよりはマシという所かな?
次に傷つけられた場所、腕を浅く傷つけられたけど、ばい菌が心配だなぁ...
俺は川で腕の傷を洗い流す。
「いっ...いてててて...」
ここで現代なら消毒とかするんだけどなぁ...
呪文とかに消毒とか無いのかなぁ?<治癒>とか<解毒>とか
<呪文獲得 治癒・解毒>獲得 (外傷回復・毒治癒)
......こんな感じで魔法って覚えれるの?何か違うくない?...まあいいやどれだけ覚えれるか確かめてみよう。気分転換だ。
「火球、水玉、氷槍、土壁、土槍、風刃、風壁、聖光、闇雲、倍速、守備、怪力、...器用...器用は何て言うんだっけ?DEX?いや違う! 手技...手技、飛行、炎球......etc etc」
結果から言うと全部覚えられた。でも、<MPが足りません>とか使用したら倒れそうになったり、倒れたり...よし!高速回復、鍛錬高速反映、疾走、加速
ちなみに転移も会得できたけど......これもMPが足らなかった...って言うか良く考えたら町にすら行ってないよ俺!
しょうがないので、歩きながら魔法を使って遊んでいたら<熟練度>とやらが上がってその魔法のLvが上がった...俺自身のLvとは別なのね......まあいいや上げておいて悪い事は無いだろうし。
そんな感じで遊んでいたら
火Lv10
水Lv10
土Lv10
風Lv10
聖Lv10
闇Lv10
治癒Lv2
補助魔法Lv1
その他LV1
うん、物凄く遊んでました。だって楽しかったもん魔法が使えるの、治癒がLv低いのは...回復呪文は傷を治さないと上がらないらしい、自分で自分を傷つけて治すのが嫌だから!
補助は後回しでいいや自分しか居ないし。
そして歩いていくと...煙が見えてきた!やった!俺は煙の方向に走り出した。すると、村らしき集落が見えてきた。やった!やっと人と会える!
喜びに俺の足は速くなっていった。
(加速・疾走Lv2にUpしました)
そんな声を聞きながら、俺は煙の見える方向へ駆けていった。
そのまま進んでいくと、本当に小さい村があった。遠目から見える家が、粗末な木で作られていて結構脆そうに見える。
周りに柵など無く、簡単に進入できそうだけど、それやったら不法侵入だろうか?てか異世界で不法侵入ってどれ位が適用されるんだろう?
等と走るのを止めて、考えて更に近づいたら誰かが鍬を持って立っていた。
ここが門・・・・・・なのかな?
人が立ってる側に太い木が2本打ち込まれていて、その側に多分この世界の農家の人であろう人が1人見張りをしていた。
意味ないんじゃない?こんな村じゃあ?
と思ったがそこは諸事情とか大人の事情があるのだろう、考えない事にした。
俺が近づくとその人は少し身構えた。髪はボサボサで服は所々継ぎ接ぎ、それに土仕事をしていたのか所々に土が着いている。
「すいません」
俺が話しかけると、その人は今気がついたのか驚いた顔を僕に向けてくる。
「どこのもんだ?」
どこのもんって言われても、正直に話す訳にもいかないしなぁ...
ここは差し障り無い言い方しとくか
「旅の者です。!村を見かけたので休む所を探しているのですが!」
...ここで初めて人に会えて、逸る心を抑え切れなくてつい勢い良く話しをしてしまった...
「お...おおう...元気なやつだべな...そか、でもなぁ...」
ん?何か問題があるんだろうか?
「どうしたんですか?」
よし、今度は普通に言えた。
「最近なここらでゴブリンが良く出るだよ。だから今もみんなで警戒の最中さぁ」
成る程、あのゴブリンは最近ここらで多数発生しているのか。
「倒したりしても構わないですかね?」
俺がそう言うと。
「やめとけ嬢ちゃん。オメーじゃあ殺されるか、こまされるかだ」
「俺!男です!」
うん、間違われるとは思ったよチクショウ!!
それを聞いた村の人がビックリした顔で。
「オラをからかってるんじゃなかべぇな?」
「だから男だっつーに!」
しつこいよ!
「いいから村に入れてよ!村の偉い人と話をしたいから」
そう言うと村人は少し考えた後。
「ちょっとそこで待ってるだ。村長に聞いてくるべ」
そう言って村人さんは走っていった。
おいっ!いいのかよここ!
そして暫くして村人さんが帰ってきた。
「村長が会うそうだよぉ」
「ありがとうございます」
そして俺は村へと入っていった。
村の中はあんまり男の人が居なかった。
「何か男の人が居ませんね」
すると村人さんが
「ああ、男手は村の警戒か畑仕事だぁ」
ああ、成る程だから居ないのか、俺農作業する自信ないからパス。
周りの家々を見ると少し古っぽい家が立ち並んでいる。相変わらず粗末な家にしか見えない、だがここに住んでいる人々にとっては住み慣れた家なのだ。俺があーだこーだ言う気は無い。
俺は帰る足がかりが欲しいだけなのだから。
まず、その1つが情報、最低限町が何処にあるかを教えて貰う。
次に路銀、お金である。何処の世界でもこれは重要だと思うんだよ。
それらが今俺の欲しいものである。
「よくきなすったの若いの」
頭も髭も真っ白なお爺さんの前に僕は通された。
「なんでもゴブリンを退治したいとな?」
「ええ、少しそいつ等で路銀を稼ぎたいんで」
「村としてはありがたいんじゃが...お嬢さんで大丈夫かの?」
......ここで怒っちゃ駄目だ......
「お嬢さんではありません。僕はれっきとした男です」
額に青筋を立てて、なるべく冷静に村長に話しかける。
「ごん太が言うとったが...ほんまかいの?」
この爺......
「兎に角僕は男です。それよりもゴブリン退治の話をしたいのですが?」
すると村長
「つーてものぅ...腕前も分からん、ギルドも入ってないでは信用していいものか...」
そう村長に<冒険者カード>はもっとるかの?と言われて、自分の迂闊さを呪った。
この世界がファンタジーなら有る筈じゃないか、自分の身分証明書とも言える物が。
...仕方ない...
「では村長さん、何か適当な的は有りませんか?」
そう村長に尋ねる。
「何する気かね?」
「腕前を見て貰うんですよ」
そう言って外にでる。すると村長は近くにある痩せた木を指した。
「あんなもんでいいかの?」
「ええ十分です」
俺はそう言うと、右手の人差し指を伸ばし痩せた木に向ける。
そして、指先から半月状の風の刃をイメージしながら唱える。
「風刃(ウィンド」
ふうじん、でも良かったのだが...まあそこは気分だった。
風の刃が痩せた木を切り刻んでいく...うわぁ...思ったより威力高かった!
あっという間に痩せた木が薪になっていく、それを見ていた村長が驚きの声を上げる。
「何と!魔術師さまであったか!これは失礼した...」
「分かりましたか?それで報酬の相談なんですが...」
そこからはスムーズに話が進んだ。後、この近くにある街の話しも聞いた。何で知らないのかと聞かれた時、今まで人里離れた場所で修行していた。 と言ったら納得してもらえた。誤魔化すの楽でいいわ...
話によるとゴブリンは10匹以上、森の奥の洞窟に巣を作っているらしい
「村のもんも何人か攫われておりますじゃ...」
それは大変だろうなぁ...よし頑張ろう。
「数が多いので1日と言うわけにはいきませんが...手を尽くします」
すると村長は俺の手を握ってきて
「お願いしますじゃ魔術師のお嬢さん」
だから男だって!!
取り敢えず食料を分けて貰い、バックを背負って歩き出す...ん?
村から森に入って少し、確認したい事があったので止まって確認をする。
「えーと...<魔法袋>」
...出来た...自分で空き空間があるのが分かる...
「何で今まで気がつかなかったんだろう...」
少しガックリした。
まあでも、見せかけでバックに入れとくのはいいかな?偽装にもなるし。
「どれ位の大きさがあるんだ?」
まず入り口をどれ位開けれるか開けてみた。すると丁度俺がスッポリ入れる位の大きさの穴が出来た。LV上がれば広がるとか?
そして中に入ってみる...さむ!少し肌寒い...でも息苦しさとかは感じないなぁ...いいなぁこれ,ここに引き篭......いやいやいや!帰るんだから俺!危ない危ない。
そしてかなりの量が収納出来る事を確認すると、俺は森の奥へ歩いていくその際に<知覚鋭敏、探索>を使うのを忘れない、また襲い掛かられたら嫌だもんなぁ...
そして歩く事10分、居た今いるのは2,3匹程度だ。さて試してみるか<風刃>
ちなみに言い方はそれっぽい言い方をすれば、ちゃんと発動してくれた...いい加減だなファンタジー...
俺の放った3本の風の刃が2匹のゴブリンの喉笛を切り裂く、1本外した!
俺は咄嗟に別の呪文を放つ
<土絡め>
ゴブリンの足元の土が盛り上がり、ゴブリンの足を止める。その隙に<土槍>
土が固まって岩のようになった槍が、ゴブリンに突き刺さる。そして最後のゴブリンも息を引き取った。
その時、ピキーン という頭の中の音と共に(LVUP、LV1、職業<魔術師>を獲得)という表示が脳内に...どこまで適当...まあいいや...
にしてもやっとLV1なのかよ!
これから先が長そうだ......
黒賀八幸
Lv1
職業<魔術師>Lv1
HP100/100
MP88/100
火Lv10
水Lv10
土Lv10
風Lv10
聖Lv10
闇Lv10
治療Lv2
補助Lv1
その他Lv1