現実逃避の最中
貴方は異世界に行くのと、現代で穏やかに生活するのとどちらがいいですか?
まあ異世界が良い、という人が何人か居るのかも知れません。
どっちが良いなんてその人の基準次第なんですが
いや、これは違う!俺の勘違いだ!!そうだそうに違いない!!
八幸は一人納得する。
これは、ここは異世界等ではないそうだ。
無理矢理に自分を納得させている。
これは神隠しやテレポートと言われるあれに違いない。どこぞの記事にあったバミューダなんちゃら現象によって、<日本ではないどこかの外国の大陸>に瞬間的に、偶然に、移動しただけなのだ!
間違っても、中学卒業まで真面目に勉強した俺が異世界なんてあり得ない、ここはカナダかアマゾンあたりの大陸だ。
うん。きっとそうだ!
この手元にある青くて甘い果物も俺の知らない果物なんだ、世界は広いなぁ
......少し混乱したが落ち着いた俺はそこらに実っている青い実を2、3個食べるとまた考え始める。
取り敢えず。ここが何処か知らないが、外国の森(多分)なら帰れる可能性を少しでも上げる為に、人を探さなければ、帰れる可能性を少しでも上げなければ、
......何が悲しくて、もうすぐ高校生なのにサバイバルせにゃならんのか......
まあ、都合のいい事に今日は遠出をする予定だったのでリュックを背負ってきていて、食べ物もいくつか入れている。
俺はリュックの中にいくつか青い果物を入れると、これからどうしようかと思案した。
「まあ、とりあえず川に沿って下に歩いていくか」
しかしこの川の幅かなりあるなぁなんて名前の川なんだろう?
そんな事を考えながら、歩き出す。
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歩き始めて1時間後.....
「ひぃ...はぁ...もっ...もう歩けん......」
歩けど、歩けど風景はほぼ変わらなかった。自分の体力を消耗したのみ。
俺は疲れ果てて、その場に腰を降ろすと荒れた呼吸を整える。
「...はー...はー...み...水」
近くを流れる川の水を犬のように顔を近づけ、ゴクゴクと飲み喉を潤す。
カラカラに乾いた喉に水が流れ込む度に、生き返る。そんな気分だ。
「ぶっはーーー!!生き返った。疲れたーー!」
俺は川べりに仰向けになって、一息つく
「疲れるまで歩いてみたけど、人に会う所いか風景が変わらない...どうしよう...このままだと...」
俺の脳裏には数年後に、身元不明の遺体事件がとりあげられるのが脳裏に浮かんだ。
人知れず......嫌だー!
「俺はまだ15だ。これから高校に行って、卒業して、そこそこの会社に就職するんだーーー!!」
え?夢が無い?小さい?ほっといて!後、小さい言うな!!
夢を見るんじゃなくて現実を見ているだけなんだから。
それにしては、逃避が激しいのであった。
しかしそこで彼の脳裏に文字と説明が入り込む
<技能獲得 体力増強・HP上昇・耐久力上昇・頑強>獲得 (生命・体力を上昇させるスキル)
......は?今何かの説明が......否!今のは幻だ!!中二病が再発したんだ!!そうに違いない!
兎に角、今は落ち着いて、少し休憩しよう
「落ち着け・・・落ち着け」
するたまた今さっきの文字と表示が
<技能獲得 精神統一・回復上昇>獲得 (魔力を高める・体力回復速度を上げる)
......うわああああああ、と頭を振り乱す。
嘘だ。そんな馬鹿な!こんな事信じられるか!
高校はどうするんだよ!父さん、母さんが心配するよ絶対
でも、少し嬉しいような......ってちがーーーーう!!
またも一人でボケ・突っ込みをしてしまう八幸であった。
「もうこうなったら仕方ない、認めたくは無い...認めたくはないけど......認めよう、ここは異世界だ」
やっと認めたようだ。
「こんなタイミングじゃなくて、もっと早くに来たかったなぁ...」
そうしたら今頃大喜びしてただろう、だが今は、今の俺は世間を知ってしまったのだ。
サラリーマンで平和に過ごせれば良いなぁ。
と小さくまとまってしまったのだ。
「あーあ、今更なぁ...これからどうしよう?」
このまま異世界で生涯を過ごすか、頑張って元の世界に戻る事を模索するか
「まあ今は人を探そう、村が何処かにあるだろうし」
そう言うと、腰を上げて歩きだそうとする。
ヒュン! ガッ
いきなり八幸の足元に矢が突き刺さる。びっくりした八幸は矢が飛んできた方向を見る。
そこには自分より少し小さなやつがいた。
肌の色は緑、服は所々破れた服を着ており、ギョロっとした目つきに醜い顔。
手には粗末な短剣や、手斧、棍棒、弓矢等を手に持って、ギャギャ とか言いながらこちらに4匹程がやって来る。
これは...もしかしてこの姿は...ゴブリンってやつですか!
こいつ俺より小さい、ちょっと優越感...いやいや今はそんな時じゃなくて...いきなりピンチだ。
確かに、体の大きさは戦いにおいて優劣の1つだろう。
でも、自分より相手は小さいとはいえ人数が多い、しかも相手は武器を持ってる。
体が硬直し喉がカラカラになる。
分かる。こいつ等は俺を<獲物>として認識している。
このまま何もしなければ、やられてしまうだろう。
(嫌だ、俺はまだ何にもしてない)
挫けそうになる自分を奮い立たせ、なけなしの唾を喉に流し込む、それで少し落ち着いた。
まずは状況を整理
(相手は4匹、手には武器。俺の方は一人で持ち物はリュックだけ...分が悪すぎる...)
(ここで勇者とかチートなひとなら力に目覚めてパパッとやっつけるんだろうけど、俺喧嘩苦手だしなぁ...
逃げ足なら少しは自信あるけど......背中向けたら弓で......)
ゴブリンの弓矢で射られる姿を想像し、嫌な気分になる。
かなり分が悪い、でも相手は待ってくれない、やるしかないのだ
ちなみに八幸クン146cmに対してゴブリンは、身長100cm程度です。
世間一般的なモンスターです強いのは、名前のゴブリンの後にファイター、シャーマン、等が付きます