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第2章

 年が明けて、元号が長保に改まった。

 携行している叙位の勅を確認した俺は、心の中で溜息をついた。大きなうねりが内裏に押し寄せようとしている。その引き金がこの叙位であることを考えると、勅使に任命された俺はこの先、生じる悲しみに同情しないわけにはいかなかった。

「勅使がいらっしゃいました」

 俺の行先は土御門第、すなわち左府の邸宅である。そして、この日の主人公は左府の長女彰子あきこ様という十二歳の少女だ。

「今日は私のためにお集まりくださり、感謝申し上げます」

 女子の成人の儀式である裳着が終わり、俺が主上の代理として従三位に叙す勅を読み上げると、御簾の中からまだあどけない少女の声が聞こえた。従三位というのは中宮定子さだこ様が最初に賜った従四位下と比べて破格の待遇なのだ。要するに、左府は長女を近々、女御として入内させることを目論んでいた。

 ひとまず大役を果たした俺であったが、左府主催の酒宴に出席してもなかなか晴れやかな気分になることができなかった。上司の娘の成長は喜ばしいけれども、中宮と少納言の心情を慮るといたたまれない。

「おう、頭弁、恙なく勅使を務めてくれたな。ご苦労。まぁ、好きなだけ飲んでくれ」

 物思いにふけっていると、大そう上機嫌な左府が目の前に座って酒を勧めてくる。俺が平素から酒を苦手としていることなど、今はきれいさっぱり忘れていらっしゃる。

 俺は時々不思議に思う。性格が真逆な主上と左府の関係が危ういながらに保たれていることを。左府に人としての魅力がないかと言えば、そうではない。機が熟して朝廷を担うことになったわけではなく、左府に上り詰めてもこの人なりの苦労があるのだ。本当はもっと気楽に生きたかったかもしれない。結構いい加減なところがあって、乗馬だとかどちらかというと豪快なものが好きな人だ。

「おめでとうございます。滞りなく裳着が終わって、私もほっとしました」

「うむ。今年中にはあれを入内させるから、忙しくなると思うが、励んでくれ。頼む」

「承知しました」

 並々と酒が注がれた杯に、さてどうしようかと逡巡していると、運良く左府は右衛門督を見つけて、そちらに行ってしまった。助かった。俺は杯をそっと膳に置き、新鮮な空気を求めて宴を退出した。


 一枚の桜の花びらが夜風に舞って簀子に着地した。三月も半ば、吉野山の桜もだんだんと見頃になっているらしい。花見でもしたいものだと思いつつも、俺にはそんな贅沢な余裕はなかった。だからせめて、職曹司に通うことくらい許されるべきだ。

「少納言、いますか?」

「ええ、その声は頭弁様ね。今敷物を用意します」

 良かった。いつもと同じように迎えてくれた。俺は御簾の下から差し出された敷物を受け取った。

「中宮の体調はいかがです?」

「安定なさってるわ。桜の枝の贈り物があってとても機嫌がよろしいの。皆で産着を縫ったりして、素敵よ」

「裁縫できるんですか」

「ま、失礼ね! 一通りのことは並みの女くらいにはできます。ところで、頭弁様こそ寝ずに走り回ってるのではないのですか。ご自身だけの体ではないのよ」

「気をつけます。でもここに来るだけの時間はありますからね」

 中宮の機嫌が良いと少納言の機嫌も良くなる。それは彼女の声が弾んでいることからもわかる。彼女は最近の面白かった出来事をあれこれ一方的に話した。仲間の女房のことや中宮のご様子や、心底楽しそうだ。

 宰相中将斉信殿ならきっと気の利いた返事などをして少納言を喜ばせるのだろうが、俺は相槌を打つので精一杯だ。

「少納言、ちょっと真面目な話をしていいですか」

 俺はここに来たもう一つの理由を忘れてはいなかった。

「左府様の御息女のことね?」

 さすが打てば響く女人だ。単刀直入に仕事の話ができるのは助かる。

「女御として入内する話が本格的に動き始めました。年内は確実です。もしかすると、中宮の里下がり中か御出産直後か、いずれにしても左府は御息女が優位に立つようにと考えていますから」

「思ったよりも早く事が進むのですね。私からきちんと中宮にお話申し上げます」

「お願いします。表向きはどうあれ、主上のお気持ちは常に中宮に向けられていると、俺は思っていますから」

 そうして二人とも何となく黙り込んでしまった。遠くで女房たちのさざめき笑いや楽の音が聞こえる。

 ふいに少納言が忍び笑いを漏らした。今、彼女はどんな表情をしているのだろう。親友といいつつも、俺は未だに顔を見せてもらえなかった。

「あら、ごめんなさい。あの華やかなさざめきを聞いたら、私が宮仕えを始めた頃の権大納言様の素敵なご様子を思い出してしまって」

 当時の権大納言とは中宮の実兄、藤原伊周殿のことだ。

「夜中にね、仕えていた童がどこからか鶏を捕まえてきたのですけれど、犬に追いかけられて鳴き声を上げたの。皆起きてしまって、お上も何事かって驚かれて。そしたら、権大納言様は『声、明王の眠を驚かす』と漢詩を引用されておっしゃったのよ。まだあるの。次の日、私が局に下がろうとしたら権大納言様が付き添ってくださって、有明の月を眺めながら『遊子なほ残りの月に行けば』と吟じるのが本当にすばらしかったわ」

 そんなことがあったのか。俺は漢詩を反射的に声に出していた。

「……佳人尽く晨粧を飾りて、魏宮に鐘動く。遊子なほ残月に行きて、函谷に鶏鳴く。確かに権大納言様はこの孟嘗君の詩がお気に入りでしたね」

「もし、権大納言様が今も宮中でときめいていらしたら、こんな風にはならなかったのだわ…… 中宮様もどんなに心強かったでしょう」

 しかし現実は伊周様の失脚と、道長様の左大臣就任であった。栄華は居座ってはくれない。あまりにも儚い輝きだった。

 その後、俺たちは少しばかり昔話をしみじみと語り合った。

 いつの間にか周りのざわめきは消えており、夜が更けつつあることに気づいた俺は慌てて立ち上がった。

「すみません、明日は主上の御物忌があって宿直しなければならないんです。丑の刻になったらまずいのでこれでお暇します」

「あら、そうだったの。頭弁様とおしゃべりしてると時間が経つのを忘れてしまいます」

 局の内側がほのかに灯りで白く光っている。もしかしたら顔が見えるのではと期待したが、少納言はきちんと扇で顔を隠していた。彼女の息遣いが感じられるほどの距離なのに、風に揺れる御簾が俺たちをしっかりと隔てていた。

 宿直中はいくつかの雑務があるだけで、俺は仮眠を取った後、蔵人所の紙と筆を持ち出して文を書いた。早々と退席してしまって、こちらの意図を伝えきれていないのではないかと思ったからだ。

 空を見るとまだ夜は明けきっていない。

――今日はとても心残りでした。昔話に興じて夜明けを迎えるつもりでしたが、鶏の声が急き立てるもので。

 いつも一言二言しか書かない俺にしては珍しく長文だ。少納言へ持っていくよう使いを出すと、折り返し返事が来た。

――早朝に鳴いた鶏の声とおっしゃるのは、孟嘗君の嘘鳴きの鶏のことでしょうか。

 それですよ、少納言。俺たちの中の伊周様と主上と中宮のきらきら光る記憶は、簡単に消えたりはしないのです。

 また返事を書いた。

――そう、その嘘の鶏の声は、函谷の関を開かせ、三千の食客とともに孟嘗君を逃しました……

 ここまでは伊周様のお好きな漢詩の話だ。本当はここで終わらせてもよかったのだが、俺は次の句を思い切って書き付けた。

――と言うけれど、これは逢坂の関のことなのですよ。

 まぁ、たまにはこのくらい遊んでもいいよなと思い、俺はまた使いを出した。逢坂の関とは男女関係を司る関所のたとえだ。

 少納言からの返事を受け取った俺は珍しく和歌であることに驚いた。この辺でけじめをつけてやろうと考えたのだろうか。

――夜をこめて鶏のそら音ははかるともよに逢坂の関は許さじ。しっかりと守りは固めてありますよ。

 なんて人だ。一寸の隙もないじゃないか。俺は少納言の返歌のあまりのできの良さに苦笑するほかなかった。俺は最後にできるだけ挑発してやろうと考えた。

――逢坂は人越えやすき関なれば鶏鳴かぬにもあけて待つとか

 俺はこの時、本気で少納言との逢坂の関を越えたいと思っていたかというと、それはわからない。彼女でなかったらこんな戯れの和歌は詠まない。遊び言葉を許してくれるだろうと思ったから、筆が進んだのだ。

 結局、夜が明けてからも少納言から返事はなかったので、昼過ぎになって局を訪ねてみた。

「俺の和歌に気圧されて返事ができなかったんですか? あなたにしては感心しないなぁ」

 ここぞとばかりに強気に言ってみたが、あれは和歌とは言えないから返事の必要はないでしょうとかわされてしまった。

「あなたの文ですけど、筆跡も相変わらず美しかったし、中宮様にお見せしました。それで良かったかしら?」

「はい」

 俺は安堵した。少納言が必ず中宮に文を渡すことを見越して、兄君が好んだ孟嘗君の話題を振ったのだから。

「ありがとうございます、頭弁様。お優しいのね」

「俺がではありませんよ、主上がお優しいのです」

 左府御息女の入内の話はあるけれども、主上は中宮をお見捨てにならないと、少しは伝わったはずだ。

「頼りにしていますわ」

 暖かい春風と共に、少納言の局から香の匂いが流れてきた。頼りにしているのは、主上だろうか、それとも頭弁だろうか。


 長雨の気配を感じる五月の闇夜に、仲間の公達らがいたずら心を起こして、職曹司の女房たちと歌を詠もうなどということになった。竹がお題らしく、清涼殿の呉竹を持ってぞろぞろと連れ立っていく。俺は中宮側の事情が事情だけに、なんとなく心配になって後からついていくことにした。

 皆が集まって、がやがや騒いでいると御簾越しに耳慣れた声がした。

「ちょっと、一体どなたですか、そんなに目立っているのは?」

 少納言の声は少し苛立っているように聞こえた。身重の中宮がお休みになっているところを、男どもが押し掛けてきたのだから当然だろう。

 すると誰だったかは覚えていないが、御簾を途中まで上げて、無言であの竹を差し入れた奴がいた。突然そんなことをされたら、普通の女人は騒ぎ立てるだろうが、少納言はあっさりとこう言った。

「おや、どなたかと思えば『この君』でしたのね!」

 この君とは竹の別名なのだが、俺は彼女がとっさに思い浮かべたであろう漢詩が、実は中宮にとって不謹慎な内容を含んでいることに気づき、青ざめた。要するに、彼女は意図せず失言をしてしまったのだ。

 しかし幸い、そこに気づいた仲間はいないらしく、源中将を始めとした連中は「さてさて、これは殿上の間に戻って皆に語らないとな」などと言いながら職曹司を去ってしまった。

 俺は一人残って少納言の様子を探った。

「おかしな人たちだ。呉竹を持ってきて皆さんと和歌を詠むことになってたんですけどね。竹の名をさっさと言われてしまって、気の毒です。ところで少納言、誰に教えてもらって、普通の女人じゃ知らないようなことを言ってしまったんですか?」

 いつものように御簾を介しているので、少納言の表情はわからない。しかし、俺は少納言が「あっ……」と息を飲んだのを聞き逃さなかった。どうやら、「この竹」が失言になり得る、つまり殿上人たちに中宮への批判材料を与えてしまう恐れがあることに気づいたようだった。

「ねぇ、頭弁様。私、竹の名前だなんて知らなかったのよ。失礼なことを言ったものだって受け取られてしまったかしら……」

 そう弁明する声がわずかに震えていた。俺はこの時、初めて少納言の動揺を見た。

 いつだって大胆かつ華麗に振る舞い、中宮一の女房として名を馳せている少納言であったが、その肩には並々ならぬ重責が圧し掛かり、男たちの何気ないやりとりにさえ神経を尖らせなければならない。彼女の明るい言動に接していると、そんなことをうっかり忘れてしまう。

――嘗寄居空宅之中、便令種竹。

 漢籍の故事はこうだ。その中に、「空宅」という言葉がある。実家を火災で失い、今は内裏ではなくその外である職曹司を居住地とせざるを得ない中宮の実態はまさに「空宅」ではないか。「この君」から「空宅」が連想されてしまえば、少納言は自分の主人を揶揄したということで、殿上人から嘲られる口実を作ってしまったというわけだ。

 きっと今、御簾の向こう側の少納言は混乱しているに違いない。すがるような声に、俺はその手を取って安心させたい衝動に駆られた。なぜあなたがそこまで追い詰められなければならないのだ。中宮の楯になり続けた才女も、ただ一人の女人ではないか……。

 もし公達らが余計なことを吹聴するようであれば、俺は少納言に代わって弁解するつもりだった。

「本当に、いくら博識のあなたでも、そこまで知っているはずありませんよね」

 そう、少納言は漢籍など知らなかったのだ。ただ単に、竹の別称を言ったまでのことだったのだ。少納言も、俺が調子を合わせたことは理解してくれたに違いない。

 それから俺たちは少し生暖かい風に吹かれながら、真面目な話などをしていた。初夏に亡くなった俺の岳父のこと、入内のこと、書のこと――。

 そのうちまた庭先が騒がしくなった。源中将などが戻ってきて、「えてこの君と称す」と声高に吟じている。

「こちらで和歌を詠むのではなかったのですか。途中で帰られてしまって、どうしようかと思いましたよ」

 俺が呼びかけると、一人が上機嫌な様子で答えた。

「いやぁ、あんなことを言われてしまったからには、下手な返事はできないだろう。殿上の間で少納言はやっぱりすごいって騒いでたらさ、主上も面白がっていらっしゃったよ」

 ああ、良かった。この人たちは俺が思い至った漢籍ではなくて、別の漢詩しか思い当たらなかったらしい。藤原篤茂という識者が作った漢詩の一節――栽称此君――をしきりに口ずさんでいる。もちろん竹が題材の詩だ。

「少納言? 『栽えてこの君と称す』だそうですよ」

「そのようね」

 張りつめた緊張が解けたように、少納言はふふっと笑った。連中はまだ竹を持ち歩いて騒いでいる。夜も遅いというのに祭りのようだ。女房達も姿を見せて、それぞれ贔屓の公達らとおしゃべりに興じている。

俺は少納言の名が傷つかなかったことに安堵し、例の一節を声に出しながら職曹司を後にした。


 久しぶりに自宅でくつろぎ、三人の子供たちと遊んだ。長男は母親を赤ん坊にとられて嫉妬しているらしい。やたらと母親の周りを駆け回って気を引こうとしている。

「父様のとこにおいで」

「嫌だよ。母様のとこがいいもん」

 あっけなく俺は息子から用なしを宣告されてしまったので、長女と人形遊びをした。少し癖毛なところやふっくらしたくちびるが冬子に似ている。

「母様みたいな美人になったら、公達が放っておかないな」

「立派な殿方が見つかると良いですわね、あなたのような」

 冬子は俺の向かい側に座り、扇で赤ん坊に風を送りながら言った。

 その夜、冬子の隣で熟睡していた俺は左府からの急使の到着によって叩き起こされた。穏やかな日々は続かないらしい。

「あなた、どうされました?」

「内裏が燃えてるらしい。すぐに参上しないと」

 冬子が素早く着替えを手伝い、馬の手配などを指示してくれたおかげで、俺は期を失することなく現場に駆けつけることができた。こんな時、冬子は妻の鑑だと思う。

 宮中は混乱の最中だった。煌々と燃える建物の中から衛府の武官が重要なものを運び出していた。下の者たちが水を懸命にかけているが、到底鎮火は無理だろう。

「主上はどちらに?!」

「職曹司に避難されている。君はここはいいから主上の側に」

 出火元は俊賢殿が責任を負う修理職とのことだ。

 俺は職曹司に急いだ。

「少納言、いますか!」

 大声で呼ぶと、若い女房に何か指示しながら少納言がばたばたとやってきた。

「頭弁、こちらです。主上はご無事でいらっしゃるわ」

 先導する後ろ姿は、こんな時に不謹慎だとは思いながら、凛として美しかった。

 主上は実母である女院の御所一条院に遷御され、中宮も職曹司を出られた。そしてその日から一条院が仮の内裏となった。

 怪我の功名と言っていいのかわからないが、再び同所に暮らすようになった主上と中宮は本当に幸せそうに見えた。身重の中宮はあまり動くことができないので、よく主上が中宮のもとへお渡りになり、笛を演奏されたり、物語をお読みになったりしていた。

 主上が退出されると、俺と雑談をしていた少納言が中宮にこう言った。

「宮様が羨ましいですわ、一人の殿方に一心に愛されて。一番に想われなければ意味がありませんもの」

「ふふ、あなただってそういう経験はあるでしょう? そうでなくとも、影ながら支えてくれる仲良しの殿方がいるじゃない。ねえ、頭弁?」

 簀子の柱にもたれかかって耳を傾けていた俺は中宮の言葉に盛大に噎せてしまった。少納言が日頃から俺とのやりとりや文を中宮に律儀に報告しているせいで、遠江の浜柳の仲、つまり離れても再び会おうと約束した親友であることをご存知なのだった。

「臣が少納言に手を貸すのは、恐れ多くも宮様を少しでもお助けしたいという心構えなのです」

 気を取り直してそう返事申し上げたが、笑われてしまった。

「ま、頭弁たら、私をだしにするなんて。主上に言い付けますよ」

「ええ、それがよろしゅうございます、宮様」

 少納言まで調子を合わせて、俺をからかうのだった。


 焼失した内裏の再建計画などを進めながら日常業務を行っていたが、先日、平中納言が中宮大夫辞表を持ってくるなど、中宮定子様に訪れる不安定な将来を見越した動きが出てきた。中宮大夫、つまり定子様の家政機関の責任者を辞退したということは、これ以上憂き目の中宮に関与したくないという露骨な意思表明であった。

 八月四日、主上から中宮が御産のために前中宮大進平生昌たいらのなりまさ宅に出御されることを伺った。生昌殿は辞任したあの中宮大夫の弟である。

 俺は中宮の元へ向かい、いつものように少納言にその旨を伝えた。

「まだ二月くらいはかかると思いますけど、男宮様だといいわ」

「ええ。……少納言、しばらく会えませんが体に気を付けて」

「でも、御用があればこちらにいらっしゃるのでしょう?」

 その時の少納言の声は俺の意思を探るように聞こえた。もしかしたら、俺も中宮の里下がりを機に疎遠になってしまうのではないかと不安がったのかもしれない。

 それも無理はない。生昌殿は、かつて大宰府に左遷された中宮の兄君伊周様が、密かに入京した際に左府に密告した張本人だった。本来、里下がりをするのは実家だが、中宮の御実家は火災でなくなってから、再建されていない。もはや再建するだけの権力がないからだ。

「本当にひどいわ。敵に人質に取られたようなものでしょう?」

「少納言、ちょっと言葉が過ぎますよ」

「ではもう頭弁様にもお話しないわ」

「困った人だ。いいですか、俺たちは離れても再び会おうと誓った仲じゃないですか。俺を信じて」

 けたたましい蝉の合唱が、かえって俺と少納言との沈黙を際立たせた。

「……信じているわ、誰よりも」

 その声は気恥ずかしくなるほど、素直で真っ直ぐ俺の胸に響いた。

 こうなれば少しでも中宮と少納言の不安を緩和できるよう俺は頭弁として全力を尽くすほかなかった。それが主上のお望みでもあるのだ。

 ところが、俺は予想以上に中宮の立場が危ういものであることを痛感せずにはいられない状況に直面することになった。

「どういうことだ、広業。本当に誰も来ないのか?」

「はい、皆差し障りがあるとかで…… これでは、中宮行啓の事を議題にかけることができません」

 中宮が出御される際の責任者を決めて、細かい手続きなどを確認しなければならないにも関わらず、上卿たちが悉く参内しなかったのだ。もちろん左府に憚ってのことだ。いつもは左府と距離を取っている中納言実資殿ですら、病が平癒していないことを理由に拒んでいる。

 俺は文字通り頭を抱えた。この事実だけでも主上と中宮に衝撃を与えるだろう。そして責任者が空白のまま、九日、中宮が生昌殿の邸宅へお移りになる日が来た。

「おお、頭弁か。朝早くどうした?」

 どうしたもこうしたもないでしょう、と俺は心の中で毒づきながら左府に現状を説明した。

「本日は中宮が前但馬守宅へ行啓されることになってますが、未だ上卿が定まりません」

 すると左府は、それについて関心のないことを次の言葉で表したのだった。

「急に決まったことだが、今日、右大将や宰相中将らと共に宇治に遊覧に行くことになった。夜も宇治の別宅に宿泊するので、戻らない。何かあったら宇治まで使いを寄越せ」

「そんな……」

 俺は絶句した。何と返してよいかわからず黙っていると、左府は準備があるから下がれと命じた。確かに俺は弁官として左府の指示に従わなければならない。だが、主上の側近でもあるのだ。怒りと呆れで気が乱れたが、ぐずぐずしていられない。

「……ということで、綱紀粛正などの勅許が下された次第です」

「一体、どういうことなのよ。どなたも宮様を気にかけてくださらないなんて」

 少納言の怒りを俺はただ受け止めるしかなかった。結局、主上から再び責任者を召すよう強く命じられ、俺は左府の遊覧に同行していない藤中納言時光殿に書状を送った。一度は体調不良を理由にしぶった藤中納言は、参内すると厭味ったらしく俺に言った。

「ここ数日の病をおして参りました。さらに実は今日は重い物忌みだったのですが、再三のお召しとのことでそれも破って来た次第ですよ」

 戌の刻、まだ夜になっても生暖かい風が俺たちを包んでいた。ようやく中宮は今内裏を出御された。今頃、宇治では盛大な酒宴が開かれているだろう。

 少納言が生昌殿の邸宅へ行ってしまってから十日ほど後、俺は物忌みで自宅に引きこもっていた。中宮とその女房たちがこぞっていなくなってしまったのだから、毎日が驚くほど静かだった。そんな中、日頃親しくしている大江匡衡殿が訪ねてきた。以前所望していた漢籍を持ってきてくださったのだった。大江殿は仰々しく扇をばたばたさせながら、俺の前に座り込んだ。

「いや、暑い暑い。頭弁という役職は、いくら身があっても足りませんな。主上と左府と中宮の間を行ったり来たり。その間にあらゆる仕事に関与しなければならない……」

 そこで大輔は声をおとして続けた。

「それはそうと、あなたもご存知でしょうが、唐の則天武后が尼になり、また宮中に戻ってあの大国は滅亡したということです。中宮様の入内を考えると、ありゃあ、この度の内裏火災は唐の旧事とそっくりですわ」

 大江殿は付き合いやすく人の良い男だが、時々言いたいことを隠さずにぶつけてくる。出家した身でまた主上の寵愛を受けている中宮への非難は、なにも彼だけが抱えているわけではない。けれど、こんな風に非難を口に出して言う者はいなかった。

「まぁ、確かになぞらえることはできますね」

 そう答えた後、大江殿が何か儒学のことを話していたと思うが、どのような内容であったかはさっぱり忘れてしまった。

 さわさわと風に踊る葉音を聞きながら、俺は床に就いた。夏の暑さと理不尽な立ち回りで、疲労は極度に達していた。「おやすみなさい」と言う冬子の額にくちづけて目を閉じると、すぐに心地よい声が聞こえた。

――行成様。こちらにいらして。そう。駄目ですわ、後ろを気にしては。あなたを縛るものから解放してさしあげたい。もうそんな肩書は捨てておしまいなさい。ええ、それでいいのよ、行成様。

 姿は見えなかったが、その声は柔らかく女人らしい少納言のものだった。眠りが浅かったのか、不思議な夢ははっきりと覚えていた。少納言に頭弁の辞職を促され、俺は辞職したのだった。そんなこと自分では思いつかなかったが、夢がそう告げたのだから従うべきなのかもしれない。そして、夢の中で少納言から名前を呼ばれたということが、ひどく新鮮で妙に胸が高鳴った。


 あの奇妙な夢を見てから後、もし蔵人頭を辞任できたら、という思いが次第に強くなっていった。弁官だけでも激務なのに、主上の側近まで務めることなど、そもそも無理がある。公任殿も俊賢殿も三年で蔵人頭から参議に昇進しているじゃないか。もう俺も三年は耐えた。主上をお支えするのはもちろん名誉なことだが、連絡調整に明け暮れ、左府との摩擦の只中に身を置かなければならないのは、正直言ってしんどい。

 俺はとうとう辞表と参議昇進の請願を提出したが、翌日、虚しく返却されてしまった。

「それだけあなたは主上に必要とされているのですね。でも、お疲れの時は迷わず私と子供たちの家に戻ってきてくださいな」

 辞職が叶わなかったことを告げると、冬子はそっと俺を抱き止め慰めてくれた。冬子のいる自宅はなんと暖かいことか。

 辞表が突き返された翌日は重陽の節句で、それから数日間の非日常が流れた。菊酒を飲んだり、御前で何度も漢詩作文会が開かれたり、つかの間の楽しみと言えた。

「鷹狩なんて久しぶりだな。主上もお出でになれれば、気晴らしにはなっただろうが」

 公任殿が馬上で腕の装着具の調子を確かめながら言った。

 俺たちは数日前から今日の嵯峨野行きを計画していた。鷹狩と紅葉狩りに行こうという話になり、左府が主催したものだ。嵐山の裾野を流れる大堰川の畔で騎馬をすると、俺は駆け出した左府に従って馬の腹を強く蹴った。

 迫り来る嵐山の紅や橙色のうねりと、透き通るような浅葱色の天が、内裏での鬱屈した気分から解き放たってくれる。馬を駈り、頬をすり抜ける鋭い風も今日は心地よい。

 馬と一体になるほど駆けた後は、大覚寺滝殿で紅葉を堪能した。鮮やかな山々を改めて見た時、この景色を見せたいと思ったのは少納言であった。あの人には大袈裟なほど華やかな色彩が似合うのだ。

「滝の音は絶へて久しくなりぬれど名こそ流れてなほ聞こえけれ。いかがですか?」

「さすが右金吾だな。枯れた滝が急に味わい深くなったぞ」

「恐れ入ります」

 和歌の才能も当代随一である公任殿が、滝殿から見える枯れてしまった庭園の滝を詠んだのだった。俺にはとうてい真似ができないくらい公任殿は世渡りが上手い。

――お前は情に流されやすいんだよ。中宮を見てみろ。一寸先は闇だぜ。

 以前、公任殿から言われた言葉が舞い散る葉のように俺の脳裏を駆け巡った。


 目の前には数十首の和歌が書き留められた普通の紙と、それを書き付けるための高価な色紙が散らばっている。俺はふぅと息を吐いて、筆を硯箱に収めた。まだ完成していないが、明日までの期限ではないのでこの辺で止めよう。

 数日前、試しに和歌を書いた色紙を冬子に見せると、目を輝かせていた。

「本当に美しいわね。あなたの筆跡はいつ見ても惚れ惚れしてしまう。入内される姫君もきっとお慶びになると思うわ。ねえ、今度私に和歌を書いて贈ってくださらない? 私、あなたからいただいた文は全部ちゃんと手元に置いているのよ」

「それは嬉しいけど恥ずかしいな」

「それにしても、左府様の姫君の入内なんてどれほど華麗で素敵なのかしら。見てみたいわ」

 冬子は銀箔が散らされ濃淡のつけられた色紙と俺の書を見て、素直に感嘆の声を上げた。いかにも女人らしい憧憬を抱いているようだったが、俺の心情は複雑だった。

 かねてからの左府の期待通り、裳着を終えた彰子様は入内することとなった。もう既に三人の女御が後宮にいる手前、最高権力者である左府の娘を入内させない理由はない。しかし、それだけで満足するような左府ではないことは、主上もご存知だろう。

 左府は姫君入内の贈り物として、殿上人たちから和歌を集め、俺を指名して倭絵の屏風に書き付けるよう依頼してきた。それで俺の目の前に華麗な色紙が散らばっていたのだった。


 十一月一日の深夜、姫君がしめやかに入内された。まだあどけなさの残る少女では、妃というよりも妹君のような気持ちかもしれない。

 それから六日後の朝、参内した俺は主上から直接、中宮が無事に男一宮をお産みになったことを告げられた。

「お慶び申し上げます」

「頭弁、これほど嬉しいことがあっただろうか。早速、産養うぶやしないの品を準備するように」

 明朗なお声が、主上の御心の全てを物語っている。そして、主上は一振りの御剱を示された。

「これを急ぎ中宮の元へ。院から奉られた品なのだ。母子の身を守ってくれるようにと」

「承知いたしました。すぐに」

 本当は俺自身が生昌殿の邸宅に参上したいところだが、右近権中将を遣わすことになった。俺は産養の品々を供する采配を採らなければならなかった。

 しかしこの日、慶事は男一宮誕生だけではなかった。左府の姫君に女御の宣旨が下ることになっていたのだ。落ち目の中宮の御出産と、権勢を誇る左府姫君の女御宣旨。公卿、殿上人らがどちらに重きをおくかは言わずもがなである。

 そして左府は同日の朝に中宮が男一宮を御出産されたことで、早々と次の策を講じなければならなくなった。男一宮が将来の帝になってしまえば、左府が外戚となって朝廷を動かすことができなくなってしまうからだ。

「世の中、なかなかうまくいかないものだね」

「ああ、宰相殿。酒はもう良いのですか」

 俊賢殿は頷いて、俺の隣に腰を下ろした。昨日と今日と、主上の計らいでちょっとした酒宴が設けられていたが、俺は例によって途中で席を抜けてきた。昼間から酔いつぶれている者も多くいる。

 漆黒の空を見上げると、今にも白い雪が姿を現しそうな気配がする。もうそういう季節なのだ。

主上のお気に入りの猫が行儀悪く宴の食事をさらってきて、俺の近くでぱくついていた。俺は犬が好きだけれど、この猫はひどく毛艶が良くて人懐こい。いつの間にか猫は、胡坐をかいている俊賢殿の上に乗りこんで、にゃあと挨拶らしき声を出して丸まってしまった。

「猫は気楽でいいな」

 俊賢殿が笑うと、猫は耳をひくひく素早く動かした。ちゃんと話を聞いているのだ。

「新女御のことどう思う、頭弁?」

「左府は…… 致し方のないことだと思いますが、新女御をできるだけ早いうちに皇后にという意向を漏らしていますね」

「前代未聞だな。一人の帝に二人の皇后を立てるなど。どういう道筋をつけるんだ」

「今考え中です。もう後戻りはできません。主上も大変苦悩されていましたが、左府の意向を無視すれば譲位を迫られる恐れがあります。それだけは避けたい」

「頼むぞ。君が頭弁に任じられたのはこの難局を乗り越えるために違いないよ」

 俺は懐に手を差し入れて、真新しい扇を取り出した。ぱちぱちとゆっくり開いていくたびに檜の良い香りが漂う。透かし模様の入った萌黄の紙が張られた扇は、昨日、主上から賜ったものだった。難しい局面に立たされた蔵人頭への労いと激励のしるしとのことで、俺はいたく感激した。

萌黄色は春の色。この色をお選びになった主上の心中を思うと、涙すら出てくる。

「さて戻るか。ここもあまり暖かくはないな」

 俊賢殿の膝の上のやわらかな生き物が顔を上げて、眠たそうに欠伸をする。俺は猫を抱き上げて床に降ろしてやった。猫は大きく伸びをすると、再び短く鳴いてどこかへ歩いて行ってしまった。

 ――後戻りはできない。

 俺は必死に二人の皇后を正当化する筋立てを考えた。そして、俺は私情を抑えて、主上に再三、奏上した。

「二后の件ですが、現時点での藤原氏の后宮は三人おります。東三条院、皇太后宮、中宮。しかし、いずれも出家しており、神事は勤めません」

「そうだな。仏門に入った者が、神事に関与することはない」

 主上は同意された。そこで俺はさらに力を入れて訴えた。

「我が国は神国です。神事が第一であることは誰も疑い得ません。中宮は正妃ですが、仏門に入り、もはや神事を行えません。それにもかかわらず、未だに中宮の地位にあり、神事をも含む費用を多額の税でまかなっております。従って、さらに女御を新しく皇后に立てて神事を行わせることは道理に適っていると言えましょう。現在はあまりに神事違例のことが重なっております」

 俺の考えを主上はいかにお聞きになったか。賢帝であらせられる主上は、もし俺が詭弁を弄しているのであれば、簡単にそうと見抜いてしまわれるに違いない。だから、俺は真剣に正当性を探った。

 何度か同じような奏上を行った後、主上は「頭弁の言に異議はない」とおっしゃられた。初めから主上は事の必要性を御理解されていたと思われるが、納得のいく説明を探しておられたのだと思う。俺はひとまずほっと胸をなで下ろした。

 それから間もなくのこと。

「頭弁、この寒い中ご苦労なことです」

 張りのある女人の声が御簾越しに聞こえ、俺は平伏して挨拶をした。東三条院、つまり主上の母君の御前に召しだされたのだった。この方は左府の実姉でもある。

「書状をお上に。単刀直入に言いますが、新女御を早く立后させるのです。左府も再三申し入れているとは思います。けれど、お上は未だ逡巡されているのではないですか。後ろ盾を失った中宮が男一宮をお産みになって、それはもちろんめでたいことでございますよ、でも次期天皇にするには不安が過ぎるのです。頭弁もおわかりですね?」

「はい、重々承知いたしております」

「ではよろしく頼みますよ。主上と私の愚弟をしっかり支えてください」

 国母直々のお言葉に、俺はただただ恐縮するのみだった。

 急ぎ内裏に戻り、院からの書状を主上にお見せした。時間をかけてご覧になった後、主上は俺に下問なさった。

「この事は、どう扱ったら良いものか」

 主上と言えども、母親からの指示や催促を無碍にできる男はこの世に存在しないだろう。俺は言葉を選んで申し上げた。

「新女御を立后に、という話は私事ではなく天下の公事です。それも最重要事項に値します。臣がご意見申し上げるのも恐れ多いことですが、左府の意思は真摯なもので、新女御を皇后となすのは当然の道理と言えましょう。先日、主上もご理解いただいておりますし、期日は決せずに、承知した旨を明らかにするのが良いかと思料いたします」

 俺はひと息に奏上した。返事を待っていた時間がどのくらいだったのかはわからない。短いようで長かったかもしれないし、その逆かもしれない。

「では、その通りにせよ」

 凛としたお声が昼御座ひるのおましに響いた。一人の天皇に二人の正妻が存在することが確定した瞬間だった。

 俺は御前を退出するとその足で、東三条院、そして土御門第へ向かった。

 昼も夜も関係なかった。主上から与えられたこの地位に見合った職責を果たすために、走り回った。犠牲にしてきたことはたくさんある。だが、それは俺だけではない。この国を支える全ての者がかけがえのない何かを手放しているはずだった。そして、その頂点に立つ主上こそが最も己を捨て、愛する者を素直に愛することができず、孤独のうちに戦わなければならないのだ。

 けれど、何のために戦うのだろう。もしも主上が玉座から降りてしまえば、いくらでも好きな道を歩けるのに。ただ一人の女人を愛し、誰にも邪魔をされずに生きることはそんなに難しくはない。それでも主上は棘の道を進もうとされる。

 車の中でとりとめもなくそんなことを考えていると、土御門第に到着した。

「申し訳ございませんが、殿は未だに臥せっておいでです。よろしけれ御簾の中へお入りになり、ご用をお済ませください」

 実は左府はしばらく体調を崩されて床に就いていた。ひどい病というわけではないようだが、起きて政務に就くことは控えている。

「頭弁が参上いたしました」

 簾の中に入ると、左府は上半身を起こして脇息に寄りかかっていた。顔色はあまりよくないが、頭は冴えているらしかった。俺は主上の勅の趣旨をごく簡単に説明した。すると左府は俺をしっかり見据えて、にっこりと微笑んだ。

「頭弁よ……」

「はい」

「感謝する。いや、感謝してもしきれない。お前が常日頃、俺のためによく尽くしてくれていることは知っていたが、次から次に難題を持ちかけるばかりで、礼を言ったことはなかったな。この度の立后の件で、ますますお前の忠義を見せつけられたぞ」

 突然、左府は俺の肩をばんばんと叩いた。痛え…… あまりの喜びように呆気にとられてしまう。左府は続けた。

「お前のこの先については心配するな。俺もお前も幼い子らがいる。互いに兄弟だと思って親しく付き合わせようじゃないか。俺は必ず、恩を報いるぞ」

 俺はひたすら恐縮した。これほど喜んでいる左府を見たのは初めてかもしれない。

 この後、長保元年の暮れ、主上は正式に立后をお認めになった。

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