土曜日 ティータイムの三十分前
神@Eden
全世界の皆様にお知らせいたします。一年前よりお知らせしていましたが、明日世界は滅びます。
ツイッターにそうつぶやくと、私は携帯をかばんにしまった。ほかのSNSには帰ってから投稿すればいいだろう。
明日になれば大洪水が始まり世界は沈む。
これは一年前から決まっていたことである。神は言った『一年後、悪のはびこるこの世界を再び浄化する。』と。そのためだけに私たちは創られた。神の代弁者として私たちは人々にこの事実を伝えなければならなかった。私は日本担当のため黒髪黒目の日本人の外見で創りだされた。年齢は二十代後半、名前は佐藤舞というありがちなものをつけられた。日本ではSNSを利用することが一番効率の良い方法だと判断したので、私の仕事はほとんどデスクワークで済んだ。先進国の担当者達は私と同じ方法らしいが、アフリカの担当者達は最後の一か月も毎日移動してばかりだったと聞いた。運がよかったらしい、これこそ神のおぼしめしというものなのだろうか。
そんなことを考えているとしまったばかりの文明の機器が震えた。電話をしてくるのは上司しかいないので怒られる前に素早く電話に出る。
「はい、佐藤です。」
「最後の代弁は済んだか。」
「もう少しです。あと二時間後には終わります。」
「最後の最後で詰めを誤るなよ。」
なんと高圧的な上司であろうか。まあいい、この上司とも明日でおさらばだ。
「はい、代弁が終了次第連絡いたします。」
「ああ、メールで構わない。早急に済ませろ。」
「はい、では失礼いたします。」
上司とのつまらない会話を済ませ、20分ほど前に買ったアップルパイを持って一年暮らしたマンションの一室に帰った。
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自室のドアを開けると、ギャルソンエプロンをつけたメガネの男がキッチンに立っていた。
「あ、お帰り。お使いありがとう、寒かったでしょ?すぐにお茶にしよう。」
「ああ。甘くないのにしてくれ。」
「わかった。」
この男と出会ったのは五日前、月曜日の夕方のことだった。