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~とりあえず屋上で飯を食うけど大体の学校は侵入禁止だから~

その後、なんとか『実はコイツはすっごく遠い親戚で、我が家に居候している』というでっち上げで何とか乗り切った俺は今は昼食中。

本来なら一人で(ないし織姫と二人で)・・・・・が俺の昼食スタイルなのだが・・・・・・・

場所は屋上(我が校は珍しく出入り自由)が意外と穴場スポット。基本一人になれるため随分と落ち着く。

・・・・・・・・・・・・・・・・一人ならな!

俺の隣には・・・・・ご想像通り

「こ、これは・・・見たことありませんが・・・とても美味しそうですね・・・・」

と焼きそばパンを眺める月乃が居る。

ちなみに誘ったのは実はこちらから

転校生恒例の『質問攻め』で俺のあること無いことクラスの連中に吹き込まれたら、もう学校に行けなくなる。むしろ俺の方が聞きたいこともあるしな。

ということで『慣れない親戚のための付き添い』という名目で、購買で昼食を購入し、現在に至る。

「では、いただきますっ!」

はむっ・・・・と小さなお口でパンにかじり付くこいつの頭には・・・・・ウサミミが無い。

「なぁ・・・・ウサミミ・・・・・じゃなくて、触手はどうしたんだよ?」

「ふぇ?ふいへまふよ?」

とモグモグしながら返してきた。こら、口にものを入れたまま喋るな。

「いや、見えないんだけど・・・・」

「んぐっ・・・・・・あ、触手としっぽは擬態できるんですよ・・・・・人間に見えますか?」

「まぁな・・・・・ていうか、しっぽ?」

「気付いていらっしゃらなかったんですか?しっぽも本物ですよ?」

あ、あのバニーガールの衣装についてたフサフサモフモフの丸っこいあのしっぽまで本物だったのか・・・・・・

「人間社会に溶け込むための能力ですね、でも結構集中しないといけなくて・・・・ちょっと大変です」

なるほど、つまりカメレオンとか・・・・そういう類の能力か・・・・しかし全く見えないな。擬態っていうか完全に消し去ってるようにしか見えん。

「んじゃ、何でここにいる?」

「?・・・・ご飯を食べるためです」

「そっちじゃなくてだな・・・・・」

「あ!屋上プレイをご所望ですか!?」

「何でもかんでもそっち系につなげるな!」

だーかーらー!と俺は続け

「どうしてお前が学校に居るんだよ?」

「それは・・・・・宙さんと友好的な関係を築くためです」

「・・・・みだりに外に出るなって言ったよな?」

「みだりには出てませんよ?きちんと出てきました!」

「・・・・・・・・」

無茶苦茶な・・・・

「どうしましたか?とてもお疲れの様ですが・・・?」

「誰かさんのせいでな・・・」

「むむむ、それではその誰かさんには警戒しないといけませんね・・・・」

・・・・・つ、疲れるッ

ここは早急に折れて次の話題に突っ込もう。

「その制服はどうしたんだ?服の替え、バニーガールしか無かったんじゃないのか?」

「あぁ、これは昴さんにお借りしました。なんでも『私、すぐ服がボロボロになるから10着ぐらい替えがあるんだぁ~』とのことでしたので・・・・しかもサイズもいろいろあったようなので、お言葉に甘えさせていただきましたっ」

「待て、いつ聞きに行った?」

「えっと、宙さんがご就寝なさった後ですよ。お手洗いを借りようと思ったのですが、場所が分からなくて・・・・・・宙さんを起こすのも気が引けましたし・・・・・・なので隣のお部屋の昴さんに教えてもらいまして・・・・・・その後、一緒に話しました。そのときついでに・・・・」

ってことは、ずっとコイツと寝てたわけじゃないのか・・・それはそれですこし気が楽になったな。

「てか、どうやって入ったんだよ・・・・宇佐美って苗字も」

「それは、故郷の方から情報操作していただきましたっ・・・・親は外国で働いてて一人暮らし・・・ということにしてもらっています」

「すっげー都合いいな・・・」

恐るべし月の科学力。もう地球侵略とか余裕だろ・・・・


。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。


「しかし、この焼きそばパンはとてもおいしいですねっ」

「そんなに気に入ったのか?」

「はいっ」

まぁ、安価なのに種類も豊富で学生の胃袋を満たすに足りるボリュームもある。我が学校の購買には文句をつけられないだろう。

「初めて食べました・・・・焼きそばとパンを一緒になんて、故郷では考えたこと無い組み合わせですぅ・・・・」

「そ、そうか・・・・・・・」

「これさえ食べれば、エヴァン●リオンもケーブルなしで戦えるのに・・・・・」

「さすがにそれは無理だろ・・・・・・・」

焼きそばパンはS2機●じゃないし、ていうかなんでそんなネタ知ってんだよ。

そんな会話を繰り広げる俺たちの所に


「星原ぁ!いるか!?」


「あ?・・・・・・・織姫?」

これはこれは、今朝俺の耳を引き千切ろうとした織姫ゆかりさんじゃないですか。

「ほぉ、噂の転校生と一緒か・・・・」

「悪いかよ、親戚と一緒に居て」

「親戚かぁ・・・・・なんか取って付けたような理由だな」

ギクッ

「しかもクラスでは『旦那さん』と言われたそうだな?」

「よ、良く知ってるな・・・・」

ちなみに俺は2年2組。織姫はお隣の3組だ。

「あ、あの~」

と月乃がおずおずと織姫を覗きこむ。

「む、挨拶が遅れたな。私は織姫ゆかり、このバカ面の唯一の友人をやっている、よろしく」

誰がバカ面だ、この仏頂面っ!

ドコッ

「痛ってえ!」

いきなり蹴ってきやがった!口に出してないのにっ!織姫、お前いつエスパーになったんだよ!?

そんな加害者の方は知らん顔で

「すまんが、しばしコイツを借りるぞっ」

「いででででででっ!ひ、引っ張るな!」

再び俺の耳を引っ張り屋上から連行していった。

階段の踊り場あたりまで引っ張られた後、やっと耳を解放してくれた。マジ千切れるぞ・・・

「何だよ・・・?」

「お前、あの子と付き合っているのか?」

・・・・・・・・・何を言い出すかと思えば

「んなわけねぇだろーが、どいつもこいつも・・・・」

「ほ、本当か・・・・・?」

「・・・・・?」

何でそんな必死そうなんだよ、百歩・・・いや、一万歩譲って月乃と付き合っててお前なんか迷惑を被るのか?

「だから、親戚だって・・・・・」

「嘘だな」

「ぐっ・・・・・」

・・・・即答かよ、合ってるけどさ

「だが・・・・まぁ、あの子と付き合ってるというのも・・・・・本当のことではないようだな」

え・・・・・?

「な、何で分かるんだよ?」

と返すと織姫は、ニヤリ・・・と小さく笑って

「ふっ・・・・やっぱりそうか、付き合ってないようだな」

・・・・・・・・あ!こいつ、わざと俺の反応見やがったのか、探偵かコイツ?名探偵ゆかり。

「ま、お前ごときの器量の男があのような女の子と逢引きなどできようはずもないか・・・・」

と、俺をバカにしているくせに・・・・・なんだか嬉しそうに「ふんふん♪」なんて言ってやがる。

とにかく、訳が分からん。

「もう開放してくれるか?腹が減った」

そうだ、こちとら未だに一口も物を入れていない。食べ盛りのお腹が悲鳴を上げている。

「待て」

「まだ何かあるのか・・・?」

「私の見立てでは、お前らは俗に言う『友達以上恋人未満』の予備軍のように見える」

「予備軍じゃまだ友達じゃねぇか・・・・・ぐふっ!」

ごすっ・・・と鳩尾に拳が入った。い、いきなりすぎるだろ・・・・

「とにかく、趣味もひん曲がったお前がこのままあの子をその毒牙にかけない様に・・・私が唯一の友人として監視するからな」

「は?」

ひん曲がった趣味だとッ・・・くっ・・・・言い返せないけど・・・・・毒牙とはなんだ!?

しかし、これはこれで助かるかもな。

ほぼ男友達・・・・・いや、並の男より男な織姫が居れば、月乃と二人っきりで息苦しい感じにならなくても済むからな。

「か・ん・し・す・る・ぞ!?いいな!!?」

「はいはい・・・・」

月乃みたいにお家に上がって来なければ結構だ。

「そ、宙さ~ん?まだですかぁ~?」

おやおや、お家に上がり込んだ方が呼んでいる。

ま、織姫も女友達とか欲しいだろうしな。

仲良くやってくれればいいさ。


。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。


「あのさ・・・・ダンマリって、いくらなんでも・・・・」

「何故だ?飯を食べる時間だろう?」

コイツ(織姫)の場合昼休みの昼食タイムは「食事を取る時間」と割り切っているようで、そのため一緒に食べる機会があっても本当に一緒に食べるだけ。つまり会話が無いのだ。無愛想な奴め、だから友達いないんだぞ?俺が言えたことじゃないけどさ。

「えーっと・・・・・・・織姫、さん・・・・・・?」

「なんだ?」

「いえっ」

ほら、月乃が怯えてるじゃねぇか。もし触手が見えてたらビクッっていってるぞ、マジで

初対面の奴が相手でもコイツって態度変えないからビビられるんだよな。

「そ、その・・・・宙さんとは・・・・ど、どのようなご関係で?」

「さっきも言ったろう?コイツの唯一の友人だ」

何故そんなに「唯一」を強調するんだろうか。

「それはむしろ私の方が聞きたいな、何故昨日今日出会った宇佐美が・・・・・」

いきなり呼び捨てかよ、怖っ

「・・・・・・・・・・・・・コイツとこんなに親しげに話しているのだ?」

「それは、私は宙さんと最終的にからdッ・・・モゴモゴ」

「や、やめんか!」

間一髪、強引に焼きそばパンを月乃の口にぶち込んで何とか黙らせた。

コイツ、「最終的に体の関係を築く仲ですっ」とか無邪気に言うつもりだったのだろう。間違い無い。

「・・・・・・・・星原、何故止める?」

ぎろり、と切れ長のツリ目がこっちを睨んできた。

「だから、こいつは・・・・その、ちょっと頭の方が宇宙人だから・・・・言ってることが訳わからないんだっ・・・・・だから適格な状況説明はできないっ!」

実際宇宙人だしな、間違ったことは言ってない。

「・・・も、モゴ・・・・・んぐっ・・・・頭じゃなくて体も宇宙人でs・・・・うぐっ・・・・・むぐぅうう」

焼きそばパン(本日3個目)を投入。お財布に優しくないね、この方法。

「だが、親戚ではないのだろう?なら何なのだ、えぇ?」

「ぐっ・・・・・」

どうする、本当のことを言った時点で何故か俺のバッド・・・・・否、デッドエンドフラグがバリバリ立つような気がする。だからと言って何か他の理由も思いつかないぞ・・・・・!

どうするどうする・・・・どうするんだよ俺!


・・・・・・・・・・・・そうだ


だが、これで行けるか?

デッドエンドかもしれないがまだ真実を伝えるより生存率が高いか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

と、俺は思い切って口を開いた。


「コイツは・・・・・俺の・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺の彼女だ!!!」


・・・・・そうだ、ある意味では間違っていない。そう言っておけば下手に月乃がベタついて来てもそういう関係ならまだ言い訳は付く。

それにこの織姫のことだ、他人に言いふらすことも無いし、そもそも言いふらすほど友達はいないはずだ。それに織姫がこの事を知ってショックを受けることなんて無い。そりゃ多少驚くだろうが、コイツと俺は友人。さらに織姫の方がそのように主張しているのだから問題無いはずだ・・・・・・・・・・・・・・・・


「は・・・・・・・・・・・・・・?」

よ、よし・・・・これは想定内の反応、もし俺が逆の立場だとしても最低限この反応はしてしまうだろう。

さぁ、その後の反応「は、ははは、まさかぁ?冗談だろ?」を続けろ!何とかゴリ押しで納得させてやるっ

「・・・・・・・・・・・」

あ、あれ?何で硬直?目も驚愕に見開かれている。

「ああああ、ありえんだろ・・・・・?冗談はよせ・・・・・だ、だってさっき・・・・・」

そういえば、確かにお前は「友達以上恋人未満の予備軍」なんて訳の分からない位置づけしてたけど、実はもう恋人になってました・・・・・ていうオチだったのは確かに驚きだろうが・・・・・

「あ、ありえん・・・・・・だだだだってお、お前が・・・・・・」

なんかコイツ、動揺しまくってるけど・・・・お前のそんな顔初めて見たぞ?

悪いがこれから超事実をねつ造するからな。

「実はだな、コイツとは幼馴染で、小さい頃から仲が良かったんだが・・・・その、親の都合でコイツは引っ越しちまって・・・・で、昨日帰ってきて・・・・・・で、こうなったんだ!」

我ながら無茶苦茶だと思うけど・・・・今はこれしかない!今この瞬間死なないために!

アワアワしたままの織姫は今度は月乃の方を向いて

「う、宇佐美・・・・・・コイツの言ってることは・・・・・・本当なのか・・・・・・・・・?」

やっと3つ目の焼きそばパンを食べきった月乃が首を傾げながら


「えーっと・・・・・まぁ、結果的にはそういう関係とも言えますね」


よ、良かったぁ・・・・・・・・・・・・

ここでまた体の関係云々言われたら間違い無く死んでいたが・・・・・イイ感じにオブラートに包まれた回答だった。


急に顔を真っ赤にした織姫は

「つ、つまり・・・・・お前らは、本当に・・・・・こ、恋人同士だと・・・・いうのか・・・・・?」

「あぁ、そうだよ・・・・・黙ってて悪かったな」

「う、嘘だっ」

「本当だ」

「嘘だ嘘だ嘘だ!!」

「ッ・・・・本当なんだって!」

「そんなわけあるか!バカ!アホ!不潔!ウジ虫!」

なぜそこまで罵るか・・・・

いい加減頭に血が上った俺は思わず叫んでしまった。


「あぁ、もう!何でお前がいちいち否定すんだよ!俺に恋人が居ようが居まいがお前には・・・・関係ないだろうがっ!!!」


「あっ・・・・・う・・・・・」

あ、さすがにちょっと引かれたか

しかし、俺だって立派な高校生だ。確かに世間的に結構隔絶された生き方してるかもしれないけど彼女が居ると言えば居てもおかしくは無いはずだろう・・・・・

「・・・・・・・な・・・・」

と、俯いてしまった織姫がなにかぼそっと呟いた。

「あ?」

「けん・・・・・な・・・・・・」

「何だよ?はっきり言・・・・・」


「ふっざけんなあああああああああああ!!!!!!!!」


という大絶叫とともに


バッチイイイイイイイイイイン!!!!!


と思いっきり平手を叩きこまれた

「????????」

目に「!」と「?」マークを浮かべる俺と月乃を置き去りにして、織姫は長い黒髪を振り乱し、屋上から逃げるように走り去った。

この時見た光景は、幻だったのだろうか。

あの侍の様な織姫が、頑固一徹の織姫が・・・・・・・・・・・・


涙を、流しているように見えたのは・・・・・・


喰らった平手打ちはいつもの蹴りやパンチに比べていくらか弱かったはずなのに・・・・・

何故か俺は、しばらく立ち上がることが出来なかった。


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