~空から女の子が降ってきたけど別にラ●ュタに行く予定は無い~
突然だが、「キャトルミューティレーション」と言う現象をご存じだろうか?
名前の方は知らない人がほとんどだろうから説明しておこう。
キャトルミューティレーションとは「UFOが牧場の家畜なんかを連れ去って行くアレ」だ
正確に言えば、アメリカで起こった家畜の惨殺事件なのだが・・・・
まぁ、正確な話は置いといて
いや、置いとけねぇけど、惨殺って酷いけどさ
とにもかくにも重要なのは
目の前でそれが起こっていることだ
空から光が降ってきて我が家のベランダを照らしだしている
「・・・・・・・・・」
悪いが口で状況を説明はできない。
そりゃそうだろう、だってありえない。
自分で言うのもなんだが俺は割と合理的な人間だ。だから頭の中で割り切れてる。目の前で起こっている事はあり得ない、実に非現実的だ。
だが、今その現象が目の前で起こっている。目の前で起こったことは信じるのが人間という生き物。俺こと星原宙もその例外ではない。
だから余計に混乱する。起こり得ない現象が目の前で起こっている。
どう説明しろと言うのか。
・・・・・・・・・・・・・・・あ、そうだ!これを説明しきれる真っ当な理由があるじゃないか!
「・・・・・・・・・夢、か」
そう、夢だ。よくあるだろ?夢だと気づく夢。
西から上ったお日様が東へ沈もうとも、豚が空を飛ぼうとも、机の中からドラ●もんが出てこようと、お鍋の中からぼわっとイン●キおじさんが登場しようとも
「・・・・・・・・・・・・」
そうそう、こんな風に空から女の子が降ってこようとも、すべて夢だ。現実じゃない。
しかし、空から降ってくる女の子っていうのは本当に美少女だよなぁ
こんな風に神様があつらえたかのような顔立ち、グラビアアイドル真っ青のスタイル、そしてきれいなロングの黒髪から可愛らしくぴょこんと生えている・・・雪のように真っ白な・・・・・ウサミミ?
「まぁ、それもアリか」
なんて言ったってこれは夢だ。なんでもアリ。
しかし俺はこんな趣味してたんだな。いや、確かに俺の趣味は他人よりもいくらかZ軸の足りないものかもしれないが、へぇ俺ってバニーガール好きだったんだ。
そんなのんきなことを思っている間に、黒髪バニーガールは光に包まれながら俺の目の前のベランダの淵にちょこんと降り立った。
「あのぉ・・・・こんばんはっ」
にこっ、と慎ましくありながらも明るく笑いかけてきた彼女は・・・・か、可愛いっ。
何なんだ、この子が発する守ってあげたくなるオーラッ!?
夢の中の幻想が作り出したとはいえ、ここまで可愛いと気恥ずかしいな。
「えっと・・・・・・・こ、こんばんは!」
「あっ」
思わず見惚れていた俺はやっと彼女が声をかけている事に気付き
「こ、こんばんは」
とぎこちなく答えてしまう。
「えっと、星原・・・・宙さん・・・・ですね?」
「あ、はい」
「あのっ早速ですが、お、お願いがあるんですけど・・・・」
お、なんだろ?悪い奴らに追っかけられてるから助けてくださいとかかな?
「ボクと契約して魔法●女になってよ」ってわけでもないと思うが、てか俺男だし。
「その・・・・・」
彼女は俺を見てまっすぐ言った
「私と、赤ちゃん作って下さい!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まぁ、夢だからこれもアリ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
んなわけあるかああああああああああああ!!!!!!
「ちょっと待てっ!」
「え?何故ですか?」
「何故ですかじゃない!さも当然のようにとんでもないことを初対面の相手に頼むなっ!どんな神経してんだアンタ!?」
「神経系はあなた方人間と同じですよ?」
あなた方人間?妙な表現だなていうか今は
「そういう問題じゃなくてっ!」
「神経じゃないんですか?あ、身体の方ですね?大丈夫です、ほとんど人間と同じですから安心してください」
「そうじゃない!」
「あ、言葉足らずでしたね。誤解させてすみません。安心して××してくださいっ!」
「余計な言葉をつけたすなあああああ!!!」
何故だ!何故夢でこんなに激しいツッコミをかまさなければならないんだ!
「あ、あの、そそそ・・・そんなに、怒らないでくださいっ・・・・・うぅ」
「あ・・・・」
ぐすん・・・・ってあぁ、泣き出してしまった。なんか耳までふにゃんって垂れ下がったぞ?
流石にバツが悪い。例え夢でも女の子を泣かせるのはいけないよな。
「あ、えっとすみません。初対面なのにいきなり怒鳴っちゃって・・・・・」
そう言えば敬語を使ってもいなかった・・・・・・・・彼女が発したのがそれぐらいの爆弾発言だったわけだからしょうがないっちゃぁしょうがないが
「うう、じゃ、じゃあ代わりに・・・・・」
「代わりに?」
まぁ、いきなり泣かせてしまったわけだから何か埋め合わせないとな
「子作りしましょう!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・却下ッ!
「しません!!!!」
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
うう、深夜に外に出たせいで体が冷えたぞ。
部屋に座りなおした俺らはさーっと煎れたインスタントコーヒーを囲んで床に座った。
「あの、寒そうですね?」
「ま、まぁ」
「暖めましょうか?体で」
「丁重にお断りします・・・・・」
お分かりだと思うが、これは現実だ。認めたくないが・・・・・現実、である。
でなければ、こんなに喉が痛いわけが無い。叫びすぎた。主にツッコミで
とりあえず色々確認しないと、読者も俺も彼女について知らなさすぎるはずだ。
「えっとですね、とりあえずあなたは誰ですか?」
「あ、えっと月乃って言いますっ」
へぇ、月乃って言うんだ・・・・いや、今の質問の主な内容はそっちじゃない
「あぁーっと、じゃあ、月乃さん・・・・あなたは何者ですか?」
「はい、えーっとですね・・・・・人間で言う所の、『宇宙人』です」
・・・・・はい出ました。宇宙人だってさ・・・・・・まぁ、あの登場されたらただの人間ですっていう方が疑わしいよな。
「じゃあ、宇宙人の月乃さんは一体宇宙のどこから来たんですか?」
「どこから・・・・と言いますと、『月』ですね」
月・・・・・・か、意外と近所だな。いや、天体規模で離れてるけどさ。
「はぁ、じゃあ月出身の宇宙人の月乃さんは一体何が目的で俺の所に?」
「子作りですっ!」
・・・・・そうでしたね。はい
「じゃあ、質問を変えます。何で俺のとこで・・・・その、こ・・・子作りを?」
「えっと、話すと長くなりますけど・・・・構いませんか?」
「あ、はい」
長くなっても事情が分からければ。俺だって貞操がかかっている。
「えっとその前に・・・・ですね、一つよろしいですか」
「はい?」
「その、敬語でなくてもかまいません。名前も月乃って呼び捨てにしてください」
「え?いや・・・・」
いくらなんでも知り合って十数分の相手にそこまで馴れ馴れしくは・・・・
「いずれ、××する仲なんですからっ!壁を作るのはいけません!」
「話が飛躍しすぎだろうがあああああああ!!!!」
「はい、それで構いませんよっ」
・・・・しまった、まんまと術中に嵌った。
「じゃ、じゃあ、月乃がここにきてそんな行為に及ぼうとしている理由を教えてくれ」
「はい、では・・・・・・・・・・・・
私たちは「月人」と呼ばれる生命体です。
私たちの文明は月の地下深くにあります。なのでまだ人類にも発見されていないんですよ。
ですが私達の方は、随分前から人類の存在を認知していたんです。
私たちの文明は数百人と、かなりの少数だったんですが人類が開発するだけでもあと500年以上は必要とされる科学技術を持っているんです。その技術のおかげで月の地下にこの地球と同じ環境を再現しています。私たちは限りなく人類に近しい存在・・・・いわば亜種ですから同じ環境が不可欠だったので・・・・そういう所に私たちは暮らしていました。
ところが70年程前からとある問題が発生しました。
遺伝子の異常から人類で言う「メス」にあたるものしか生まれなくなってしまったんです。
私たちの技術でもこの問題を解決するには至りませんでした。
当然、遺伝子を提供する「オス」がいなければ子孫は生まれません。それによって月人は一気に数を減らしてしまい・・・・・今は私を含めたったの47人です・・・・・
このまま行くと残りもう数十年で私たちは絶滅してしまいます。そこで私たちはある賭けに出たんです。
我々と限りなく遺伝子構造の異なる亜種。人類との交わりです。
それによって、悪影響の出ない範囲で「オス」を形作る遺伝子を掛け合わせ、子孫を残そうと決めたんです。
私はその計画の・・・・ぶっちゃけて言えば実験体なんです。でも自分で志願したんですよ?同志のためですしね。とにかく私の結果を元に、オスの遺伝子を培養するなり、新たな道を模索していくなり・・・・・そういう目的で、私はここへ来たんです・・・・・
・・・・・・というわけです」
「な、なるほどな」
随分ぶっ飛んだ話だ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だが
「・・・・・・・」
今の俺はそれを疑うことがどうしてもできなかった。
それだけ、今の彼女が必死に見えたからだ。分かるのだ、その顔に嘘も何も交じっていない真摯な気持ちがこもっているのが。
桜の花弁の様な唇を固く引き結んだ月乃は話を続ける。
「人類もそうですよね。今の所はオスとメスの割合はほとんど5:5ですが、ほんの僅かに女性の方が出生率が高いんです」
「あぁ、そういえば」
以前友人がそんなこと言っていたな。
しかし、唯一の疑問がまだ・・・
「あのさ、お前達がそういう事態に陥ってるのは分かったし、信じるよ。たださ、何で俺なんだ?」
そう、俺はただの高校生。そんな大層な事態に巻き込まれる道理が無いだろう?
「まさか、ただランダムでって訳じゃないよな?」
「はい、さすがに私達も子孫の存亡がかかってますし・・・・そんなに適当には出来ません」
「じゃ・・・なんで?」
すると月乃はそのナイスバディをもじもじとさせて
「その、月人は実は随分前から地球に潜入自体はしてたんです・・・・3,4年に1度ほど・・・です」
あらら、とっくに宇宙人が潜り込んでたのね、この星は
「そして、実はいろんな場所で・・・・いろんなデータを獲らせていただきました。遺伝子情報もその時に・・・・・それを元に様々な検証を繰り返した結果・・・・・」
あたかも悪いことをした子供の様な上目遣いでとんでもないことを告げてきた。
「星原宙さん、あなたがこの地球で最強クラスの遺伝子を持っている個体なんです」
「ま、マジで・・・?」
「はい、マジです。知力体力諸々の才能が他人よりも抜きんでてます。その気になれば有名大学の教授兼オリンピックのメダリストも夢じゃありません」
なんてこった、俺ってそこまで言われるほど人類最強の存在だったのか?
「いやいや、でも俺運動なんてそんな得意じゃないし、勉強もせいぜい中の上だぞ?」
「そりゃそうです、努力してませんから」
・・・・・・・・はい?
一瞬で表情を歪ませた俺の気持ちに気付いたのか
「あ、すみませんっ!その、それ相応の努力っていう意味なんです!決してあなたが怠け者っていうわけじゃありませんっ!も、申し訳ございませんっ!!」
み、三つ指突きやがった!
「分かった!分かったからその体勢やめろっ!」
た、谷間が!む、胸の谷間がぁ!!
「すみませんっ!」
がばっと上体を起こし、今度は大質量ゆえに半秒遅れぽよんと跳ね上がった・・・・
眼福だが目に毒でもあるぞ・・・・・・・・・・この光景は
「大丈夫だから、お前はみだりに体を動かすな、理由も聞くなよ」
「あ、はい・・・・」
ちょこんと床に座りなおした月乃は先ほどと同じ上目遣いで話を続ける。
「その、能力っていうものはそれ相応の才能と努力が掛け合わさってやっと発現するものなんです。オリンピックに出るにはオリンピック級の才能と努力が必要って言うことです」
まぁ、そりゃそうだ。才能にものを言わせても限界は来るが、努力に限界は無い。だからと言って生まれつき病弱体質の人間はどうやっても無理が来る。そういうことだろう。
「後、もう一つ理由が・・・」
「もう一つ?」
俺を選んだ理由に遺伝子以外にも何かあるのだろうか。
・・・・・・・・・・・・そしてこの理由は、後になって聞かなければ良かったと後悔することになるものだった。
「遺伝子情報だけなら他にも候補はたくさんいました。ただ、その中であなただけがもう一つの条件を満たしていたんです。」
「もう一つの、条件?」
「『占托』と呼ばれる・・・・分かりやすく言うと占いなんですが・・・・・・あ、けど占いと言うよりは高度な科学力によって導き出され、ほぼ100%的中する未来予知みたいなものなんですけど・・・・」
「へぇ」
そんなものがあるのか、今度占ってもらおう。朝の12星座占いよりは信憑性がありそうだ。
「それによって分かった結果なんですが・・・・その言い辛いことなので確認しますが、聞きたいですか?」
おお、とっくに占われていたようだ。
「あぁ、ぜひ聞きたいね」
先程も行ったが貞操が掛かっている、妥協する訳にはいかない。多少悪い結果でも、まぁ何とかなるだろう。所詮占いだ。
そしてこの一言を俺は深く後悔する、数秒後に
「そのですね、あなたは・・・・その、優れた遺伝子を持つにも関わらずですね・・・・・・一生・・・・・・お、女の子と・・・・ごにょごにょ・・・・に、至れないんです」
「は?」
「で、ですから・・・・あなたは一生女の子と××できません!!!」
「はあああああ!?」
な、なんちゅう放送禁止ワードをでかい声で言ってるんだこの子は!
ていうか、それ以前の問題だろ!?
「ま、マジなのか・・・・?」
「はい、99.99999999999999999999%という驚異の確率で、マジです。私もこんな高い数字始めて見ました」
はい、今後悔した。聞かなきゃよかった。
今まで女性に興味を持ったことは・・・確かに皆無だが、俺だって年頃の男子高生。そういう、性的な意味での欲求がまるで無い訳じゃない。
そして、そういうことは大人になれば自然と相手が見つかって出来るもんだと思ってたのに・・・
「子孫の存亡が懸かっているとはいえ、その人の感情を無視してそういう行為に及ぶのはいけないことです・・・・人生最大のトラウマになってしまいます。だから私達は『将来女性と交わる可能性が皆無』と言うもう一つの条件が揃った・・・・あなたの元に来たんです」
「それは、まぁ、殊勝な心がけだけどさ・・・・」
つまり、将来女性とそのような行為に及ばない人間なら、今それをしても問題ないだろう・・・・・・・・・という理屈だ
でもさ、俺の心にはある意味、人生最大のトラウマが残ったぞ。
「どうしても・・・・できないのか?」
「どうしても、できません」
「どんなに努力してもか?」
「こればかりは努力しても無理です」
「残りの0.00000000000000000001%になることは?」
「まず、あり得ませんね。キスも無理です」
「・・・・・嘘」
「ではありません、残念ながら」
沈んだ、メッチャ沈んだ。俺の心の中の地盤が凄い勢いで沈降している。
orzの体勢になった俺を覗き込むように、月乃も屈んできた。
「ちゃんとあなたについての情報も確認しました。星原宙さん、性別オス、17歳、生年月日は1994年7月21日、家族構成は御両親と妹さんの4人家族でしたが3年前に事故で両親が他界・・・・・あ、ご冥福をお祈りします・・・・・その後妹さんとの2人暮らし。お陰で家事は一通り得意なようですね?これも才能の開花ですっ」
さらっと俺のプロフィールと過去と唯一の特技を挙げた月乃はさらに続ける。
「趣味はアニメ鑑賞とゲーム。どちらもかわいい女の子が出てくるものばかりですねっ・・・・・現在は県立天川高校に進学。しかし、性格に少々難があり人づきあいはよろしくないと・・・・」
「大きなお世話だ」
「私達はこれらの事を、占托によってあなたが生まれた瞬間に分かっていました・・・・そしてこの後のことも」
「それが、俺が一生童貞だと・・・・」
「はい、残念ながら」
そんな沈んだ俺の肩に、つ・・・と月乃の細い手が慰めるように触れる。
「でも大丈夫です。だからこそ、私はここに来たんですから」
見上げた彼女は・・・・・
それはそれはとても美しくて、彼女の生まれ故郷の月をバックにしたその姿はすでに神々しいまでに見えた。そして見るものすべてを蕩けさせる様な明るい笑顔で
「だから私とえっちいことしましょうっ!」
・・・・・・・・・こういうことを言わなければな!!!
「だからちょっと待て。確かにそこまで合理的な理由を出されると、俺が選ばれた理由までは納得できるがな・・・・今さっき知り合ったばかりの、しかも人間じゃない娘と・・・・いきなりそういう行為は・・・・」
「・・・・その、大丈夫ですよ。今すぐでなくて結構です」
「は?」
そんなことを言うと、今度は恥ずかしそうにもじもじしながら
「当初の予定では、昨晩・・・・その・・・・・・事に及んで・・・そのまま帰る予定だったんですが」
「ですが?」
「ま、迷ってしまいまして・・・・」
「は?」
人差し指同士をつんつんと合わせながら・・・・ていうかこのポーズ、本当にやっているヤツ初めて見たぞ。なんか違和感無いけど・・・・
「で、ですから・・・・その、迷子になってしまったんです。それで到着が1日遅れてしまいました」
「本当は、昨日来る予定だったってことか?」
「・・・・はい」
・・・・・なるほど、コイツ、ドジっ子の気があるな。予想にたがわず。
「しかし、なんでそれが・・・・その、今そういうことをしない理由になるんだ?」
自分から聞くのが恥ずかしいけど・・・・ていうか、まるでそういうことを望んでいるようではないか。
はっきり言っておくが今そういうことは1ビットも望んでいないからなっ。
「その、またまた話が変わってしまいますが・・・・それは月人と地球人の相違点の話をしなければいけません」
「いいから、聞かせてみろって」
すると予想外に顔を赤くして、耳をビクビク震わせながら、ぼそぼそと呟き始めた。
「その、月人と地球人の数少ない違いのうちの一つなんですが・・・・・その生理の期間なんです・・・・・地球人は、個人差はありますが一般的に約1カ月周期で生理の期間が訪れますよね?」
うーん、そういう知識は乏しいからよくわからんが、保健体育の教科書にそんなことが書いてあった気が
「私達はその周期がとても長く・・・・5年はかかるんです」
「ご、5年!?」
「そして、私は・・・・その・・・・・・・昨日が生理の最終日でした・・・・・なので、そのぉ・・・・・・今そういう行為に及んでも、こちらの目的が達成できないんです」
最終的に月乃は顔を真っ赤にして俯いてしまった。相当恥ずかしかったらしい。
「あぁ、すまん。多少デリカシーに欠けたことを言っちまったな」
「いえ、元はと言えば迷子になった私の責任です」
いや、そこはそれで良かった。じゃなかったら昨日俺は訳も分からず貞操を奪われていたわけだからな。
「故郷の方にも今朝連絡しておきました。無論叱られちゃいましたけど、逆に言われたんです。『それなら5年かけて、星原宙と友好的な関係を築き行為が円滑に進むようにしろ』と」
・・・・おい、ちょっと待て!
「お前、まさかとは思うけど・・・・一緒に暮らすなんてことは」
ないよな?と続けようとした俺に先駆け
「お察ししてくれましたかっ?では・・・・・ふ、不束者ですが、よろしくお願いしますっ!」
なんてこった、宇宙人の家族が増えてしまう!
「ま、待ってくれっ!いくらなんでも急すぎる!」
「大丈夫です、あと5年あります!」
「そっちじゃねえ!」
「そっちじゃない?・・・・あ、やっぱり今すぐですか?はい、すること自体何ら問題はありませんし、練習するのは悪いことではありませんねっ!」
「だから、そうじゃねえ!」
「あ、すみません!誘い方が違ったんですね!?」
すると俺のベッドの上に這い上がると四つん這いのまま振りかえって色っぽい表情と口調で
「さぁ、カモォン」
(ぐああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!)
・・・・・どこかの女芸人が同じようなことをしていたような気がする。確か、山田なんとかだよ、あのちっちゃい人。
相当ふざけた行為だと思ってたんだが、見た目がこれだとここまでの破壊力があるものなのか!?やべぇ!鼻血を抑えるのにこんなに精神擦り減らすとは!
「ってそうじゃないっ!!そういう関連の話じゃねえ!」
理性が飛びかけてたことは忘れよう。
・・・・・・ていうか、月乃の服装。降りてきたときにちょっと言ったけど
バニーガールだよな、それ
黒を基調としたぴちぴちのハイレグの服、チョーカー、そして頭についているフッサフサの長い耳、ご丁寧におしりの部分にちっちゃな丸い尻尾も付いている。
「あのさ、その服装って?」
「あ、これはその、あなたの趣味を調べていたときに・・・こういう服装を着た女の子が出てきていたので、私達の容姿に一番似合うかなって思ったものですから・・・・」
やっと普通に座りなおしてくれた月乃が解説してくれた。失礼な、別にバニーガールに限った覚えは無いぞっ
後、もう一つ聞いておきたいことが・・・・
「その、頭のそれって・・・・・なに?」
とウサミミを指さして聞いてみた。月乃の頭部をよく見るとちゃんと側面に人間的な耳も付いているが、やはり耳なのだろうか?
「あ、これですか?」
と俺と同じように自分の頭頂部を指して
「これは触手ですっ」
と満面の笑顔で返してくれた。その表情に連動してそのウサミミもぴょこんと跳ねる。
・・・・・・・・・・・いやいやいやいやいやいや、ありえんだろ。
あの真っ白で、やわらかそうで、1日中頬擦りしていても飽きなさそうなフサフサのそれが・・・・触手だと?そんなグロテスクなものなのか?
「伸縮自在でパワーもスピードもあるんですよ?」
いや、機能の問題では無くてですね・・・
「ほらっ」
とウサミミ触手がピクンと動いたかと思うと
ものすごい勢いで俺に絡みついて来やがった!
しかも首にいいい!!!
一気に気道が締め付けられ、頸椎が縛られ、身もだえしてしまう。
ギリギリっ・・・・な、なんちゅー力だっ・・・し、死ぬっ!
「つ・・・・つきっ・・・・・やめ」
「あ、すみませんっ!」
と急いでそのウサミミ触手を戻してくれてるが長く伸びすぎたものが一気に絡まったのでなかなか解けない。
まずい、このままだと両親に3年ぶりの感動の再会を果たしてしまうっ!
無意識のうちに動かしていたバタバタと動かす俺の手が
ガシッ
と何かを掴んだ。
なんだこれ?すっげー柔らかいけど・・・・
瞬間
「きゃああああああ!!!」
「?」
月乃が悲鳴を上げ、死んだ蛇のように一気に触手から力が抜けてふにゃふにゃと俺の首から外れていく。
俺が掴んでいたのは、月乃のウサミミ触手の根元。
・・・・・・・・・・いや、まぁ~良くある展開では・・・・・胸とか、そういう所に触ってしまうんだろうが・・・・・いや、望んでないからな!そっちの方が良かったとか本当に思ってないんだからなっ!!
「うう、ひっく・・・・」
「え・・・?月乃?」
彼女がまた泣き始めてしまった。意味が分からないぞ?確かにいきなり頭に掴みかかられたら俺だって嫌だけど、な、泣く程なのか?
「す、すみません・・・・その、放してもらえますか?」
「あぁ、すまない。いきなり・・・」
と、俺はそのウサミミ触手を握り込んだ手を離した。
「は、はぅ、その・・・・いくら将来××するとはいえ・・・・そのいきなりこんな恥ずかしいことされては・・・・こ、困っちゃいます」
もじもじと元の長さに戻ったウサミミ触手に手を当てると恥ずかしそうに反対側を向いてしまった
「・・・・?」
「あ、説明してませんでしたね・・・・・その、触手の根元は・・・・私達の体の中で、一番感度が高い・・・・・
せ、性感帯なんです
ぐすん、と鼻を鳴らして俺の方を振り向いた月乃の表情に一気に罪悪感が増す。
「あ・・・・そ、そうなのか・・・・すまん」
ある意味、胸よりもとんでもないとこを触ってしまったようだ。
いや、だからって胸の方が良かったとかは微塵も思ってないぞっ!
「いえ、私の触手の動かし方が下手だからいけなかったんです・・・・あ、どうせなら私がおかしくなるまでここを触りまくってくれても・・・」
「いや、遠慮しておく」
これ以上、そういう行為に踏み込ませないためにも少し距離を置く。
「あ、そうだ」
俺は思い出したようにクローゼットに駆け寄ると、中から自分のジャージを出した。
「ほれ、これ着ろ」
「え?これですか?」
いつまでも、その露出度高めのバニーガールで居られるとこちらが恥ずかしいからな。
「えっと、じゃあ借りますねっ」
と素直に聞いたかと思うと
「よいしょっ」
と
いきなりその胸元から腰まで服をずり下ろしたっ!
「うわっ!」
回れ右!俺史上最速の勢いで回った。
そして急いで今の光景を頭の中で消去しようと心がけるが、そのせいで逆に頭にフィードバックしてしまった。
・・・・神が起こした奇跡か前に垂れた長い髪の毛のおかげで先端は見えなかったが、俺の妹の3、いや6倍以上は余裕でありそうな胸、白磁の肌、細い腰がはっきりと見えてしまった。
時すでに遅し、消去するつもりのその光景は1コマ残らず俺のフォルダに保存されてしまった。しかも俺では解除できない永久保護付きで
「ん?なんでそっちを向いているんですか?」
「バカか!?逆になんでマジマジと見ることができるかっ!」
「裸を見られるのは確かに恥ずかしいですけど、今の段階で恥ずかしがったらこの先へ進めませんよっ!」
「早すぎる!いくらなんでもお前の発想はちゃんとしたルールを5段ぐらい飛ばしてる!」
「もう、挑戦しないと道は開けませんよっ・・・・・ほら、もう着替え終わりましたよ」
その言葉に安心した俺はゆっくりそっちを向くと
黒いジャージを着た月乃が笑顔で待っていた。
「いっ・・・・・」
・・・・・しかし、これもこれで・・・・・なんか、えっちぃぞ
ブカブカ過ぎるとペラペラめくれては困ると踏んだから、体のサイズに合いそうな少し小さめのを選んだんだが・・・・
ジャージの下は・・・・・まぁ問題ない、ぴったりだろう。
問題は上だ。生地が引っ張られて胸の輪郭がリアルに浮き出ているし、チャックも上まで締めきれなかったのか中ほどで止まって谷間を思いっきり見せつけている。ま、まさか・・・ノーブラ!?
「ちょっと・・・胸元が苦しいですけど、イイ感じですねっ」
「あぁ、その・・・・使ってなかったから埃っぽいだろ?」
「いえいえ、では明日に備えてそろそろ寝ましょうっ」
と言った月乃は俺の手を引きそのままベッドに・・・・・・
「ちょっとまてっ!」
「はい?」
「はい?じゃなああああい!!!」
「・・・・YES?」
「英語にしろって訳じゃ無くてだな!何故一緒に寝る!?」
「何故一緒に寝ないんですか!?」
「さも不思議そうに聞き返すなや!!」
「大丈夫です!一緒に寝るって言っても川の字じゃなくて、しっかりべったりくっつきますっ!」
「逆逆!むしろ逆!」
「え?あなたの方がくっつきたいんですか?まぁ、さっそく取り組んでくれるなんて嬉しいです!」
「そ・う・じゃ・なあああああああああああああいいい!!!!!」
「おにぃ?さっきからなに騒いでんの?」
ビクゥっ
こ、この声は・・・・
「振り返るとそこには鬼の様な形相で立っている1つ年下で、俺より小柄でロリ体形の我が妹『星原昴』が立っていた・・・・・・なんて感じだけど、おにぃ」
「よ、よぉ・・・」
勝手に解説するなや・・・・あと、自分でロリ体形って言ったな?自分で言ったな!?
「え~と、あたしから見るとおにぃが知らない女の子を知らない間に連れ込んでるって状態なんだけどぉ・・・・・」
や、やばい・・・こいつを怒らせるとそれはそれは鬼神の如し!
な、なにか武器はないのか!・・・・・じゃなくて言い訳は無いのか!?
とアム●・レイみたいな勢いで探すが・・・・駄目だ、バルカン以下のものしか見つからない。コイツにはコロニーレーザー級の言い訳が無いと穏便にすまないのだ!
そうしているうちに・・・あ、月乃が昴に歩み寄っている!!
危険だ!危険すぎる!
「えっと・・・・どちらさん?」
「はい、この度あなたのお義姉さんになることが決定しました、月乃と申しますっ・・・どうぞよろしくお願いします!」
ぺこん、と頭を下げた月乃をぽかん、と眺める昴を見ながら俺は天へ祈りを捧げた。
・・・・・助けて、死んだお父さんとお母さん
あなたの息子が宇宙人に貞操を奪われちゃいます・・・・・