卒業
思いつきで書いたものです。突っ込みどころ満載だと思いますが、広い心で読んで頂けると幸いです<(_ _)>
「お前の事が好きなんだ」
「・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・おい?」
「・・・・・・・・・・・は?」
うん?反応遅いって?いやいやいや。しょうがないじゃん。だって・・・・だって・・・・・・・
「毎日毎日いい加減にしろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
あぁ・・・。また、やっちゃった。クリーンヒット。
目の前の男はうずくまって泣きそうだな。
「げっほ・・。うっ・・・。お、おっまえ・・・・・、と、とおさんになんて事・・・・・・」
うん。この目の前にいる男は紛れもなく現在の義父。
血は繋がってないよ?もちろん。
だって義父って言ったって5歳しか変わらないんだよ?
さすがに5歳のときに・・・ってねぇ・・・。ないでしょ?
あぁぁ、誤解のないように言っておくけど、決してなにかヤマシイ関係があるわけでもないのであしからず。
「・・・おい。一体だれにそんな説明してるんだ」
あれ?声に出てた?
いやぁ・・。うっかりうっかり。
「ってか、もう復活したの?さすがだね。・・・・しぶとい」
最後はぼっそとね。
聞こえない様に言ったつもりだったんだけど、どうやら義父には聞こえていたらしい。
「しぶといってなんだ!!しぶといって!!それに、里桜はどうして、そんなに手が早いんだ!!」
「ちょっと!!聞き捨てならない事言わないでよ!!そっちが悪いんでしょ!!バッカなこと言うから」
「こら!里桜。とおさんに向かってそっちとはなんだ!しゅうちゃんって呼べっていってるだろ!!」
・・・・しね。本気でいっぺんシンデクレバイイ・・・・。
冷めた目で義父を睨みつけると私は自分の部屋へと戻った。
三村 里桜18歳。
私が16の時にママが再婚して、あいつ・・・三村 周二が私の義父になった。
だけど、再婚して半年もしないうちに酔っ払いが運転する車にはねられてママは帰らぬ人となってしまった。
あの時、あいつは半狂乱になってママの死を悲しんでた。
その時初めて本当にママが好きだったんだって思った。だって、いつもひょうひょうとしているのに、周りに構わずあんなに泣き叫んでいたんだから。
それまで、私は絶対にあいつをママの旦那なんて認めたくなかった。
何をしても、何を言っても笑ってごまかして・・・。
そんなあいつをママは「もう、しょうがないわね~」ってにこにこ笑って許してた。
それがなんだか無性に腹が立っていた。
だから・・・・・あの日、あんな事を言ってしまった。
『男に媚びて一体何なのよ!アンタなんてもうママじゃないわ!!』
言った言葉はもう取り消せない。
例えそれが最後の言葉だったとしても・・・・・。
「里桜、起きろよー。学校に遅れるぞー!今日が最後なんだからしっかりしろよ」
眩しくて目が覚めた。
次に、なぜ奴がここにいるのかと疑問に思った。
それから頭が働き始め、まず一発殴っておいた。
え?だって、いくら義父とはいえ勝手に乙女の部屋に入るとかありえなくない?
「・・・ぐぅ・・・・。朝から・・・・愛情感じるぜ・・・・・うぇっ!!」
うん?床にはいつくばっているところを踏んで部屋を出ましたが何か?
さて、気を取り直して、今日は卒業式。
今日で高校も終わって4月からは社会人だ。
あいつは大学に行けっていってたけど、いつまでもあいつに迷惑をかけるわけにはいかない。
私は未成年だけど、社会に出れば一人でだって暮らしていける。
そろそろ、解放してあげなきゃ。
あんなのでも、私を高校に行かせてくれて、生活もさせてくれた。
そんな所は本当に感謝している。
血もつながらないただの他人なのに。
「なぁなぁ・・・。卒業式、この格好でいいかなぁ?」
洗面所で顔を洗っているとにょきっとあいつが顔をのぞかせた。
「え!?来るつもりなの!!??」
アイツの格好に思わず振りかえる。
「あったりまえじゃん!!可愛い愛娘の晴れ姿を見なくてどーすんだよ!」
・・・・愛娘ね。
溜息をつきながら顔を拭けば、あいつを無視して私はさっさと洗面所を出て朝食の用意をする事にした。
「なんだよー!無視するなよ!また反抗期なのか?」
遠くで何か聞こえるけど、聞こえない事にしよう。うんうん。
さて、今日は軽いものでいっか。
トーストと、目玉焼きとサラダ。あとはヨーグルトでもつけとこうかな。
しょうがないから2人前用意する。
「ご飯出来たから、置いとくよ!」
洗面所に向かって声をかけると返事が聞こえた。
なんか、すぐいくーとか言ってたけど、聞こえないきこえない。
「いただきます」
もしゃもしゃとご飯をたべていたら、慌ててあいつもやってきた。
「もぉー!すぐ行くから待ってて!って言ったのに!!」
なんていいながら席について手を合わせて「いただきます」と言うとむしゃむしゃとそれを食べ始めた。
私は、あいつが食べ始めたころにはすでに終わりかけ。
食器を下げようと立ちあがったところで、一言言っておかなければいけない事があった。
「私、一人暮らしするから」
それだけ言うと、さっさと食器を流し台に持って行ってカバンを持って出掛ける。
・・・・口から何か出てたけど、見えなかった見えなかった。
扉を閉めた途端、何かすごい音が家から聞こえたけど、それも聞こえなかった事にする。
「ふふ。これから覚悟しててね」
ママが死んで、泣けなかった私を泣かせてくれたのはあなた。
最後にいった一言にずっと悔やんでいた私を開放してくれたのもあなた。
この2年、悲しいときも辛いときも嬉しいときも楽しいときも傍にいてくれたのは貴方だった。
だから、いつも思ってた。
ずっとずっと他人だったらよかったのに。
義父なんて嫌だ。って。
でも、これから私は一人で生きていける。
一人の女として見てもらう。
子供としての役目はもう卒業する。
貴方の言う『好き』を『愛してる』に変えてみせるわ。
待っててね。しゅうちゃん。