表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
中学二年生  作者: 多摩屋
中学生編
9/33

第9話

ストーリーとか無視。

色々読んでて思った事を書いてみたのー。

 俺は慢心していた。



 異世界に来て2年。 ギルドランクはこの世界でも数人しか居ないSSとなり、ドラゴンすら単身で討伐可能な程の力をつけた。


 なのに、俺の力は奴には通用しなかった。






 ――――魔女の森。


 そう呼ばれる森が王都から北に250キロ程行ったところにある。


 最近その森で大量の瘴気が確認されたとギルドに報告が入り、平均Bランクの冒険者パーティー、その数18人が調査に向かったが1ヶ月を過ぎても誰1人帰って来なかった。



 そんな状況など露知らず、ふらりと王都グランデロンに立ち寄った俺は久しぶりに会えるであろうサラ=ブライトの事を想い、顔を綻ばせていた。




「おぉ!? イカルガさんじゃねぇか! 王都にいつ来たんだい!?」



 王都に着いた途端に魚売りのオッサンに話し掛けられる。 ちなみに名前がオッサンで、33歳の独身だ。(某RPGのハッ○ンの発音)。




「さっき着いたばかりだよ、オッサン。 相変わらず商売に精を出してるみたいだな」



「……」



「どうした? オッサン?」



「……SSランクの冒険者だからって、お前調子乗ってんのか?」



「へ? ちょっ、どうしたんだよオッサン」



「お前いくつだ」



「16だが……」



「『だが』? なんだその口のきき方は。 俺は33だよ」



「し、知っているが……」



「その『が』ってのやめろ! 何様だテメェ」



「オッサン……あの、どうしたの……?」



「目上の人間には敬称を付けろ!」



「……あ、はい。 あのオッサンさん、どうかされたんですか……?」



「チッ……仕切り直しだ。 魔女の森のせいで商売あがったりなんだよ」



「魔女の森……ですか?」



「なんだお前知らないのか」



「は、はぁ魔女の森は知っていますけど、何があったかまでは流石に……来たばかりなので」




 ………。




「ガハハ、そりゃそうか! いやね、最近大王都の北にある魔女の森ってとこに……てかギルドで聞いた方が詳しく聞けると思いますぜ?」



(何この人、躁鬱病……?)



「そ、そうですか、わざわざ教えて頂きありがとうございました」



「いえいえ、今度はウチの魚も買って下さいよ、旦那!」



 礼儀に厳しいオッサンに笑顔(目が笑ってない)で見送られ、俺はギルドへ向かう。 その間にも見回りの兵士や酒場の女主人、噴水の近くで遊んでいた子供達などなどにことごとく話し掛けられ、ギルドまで5分のところを1時間も掛かってしまった。



「この面汚しが! おめおめとよくもまあ王都グランデロンに戻ってこれたものだな!」



「この鬼畜! あんたのせいでウチの店はめちゃめちゃだよ! 馬鹿の1つ覚えみたいに魔法をぶっ放して、周りの被害も考えられないくらい馬鹿なのか、アンタはっ」



「あ、英雄気取りが来たぞー、みんな逃げろーっ」



「ママーあの人泣いてるよー」



「見ちゃ駄目よ」




 うぅっ。



 ……半年前にある事件があり、それを単身で解決してしまったがために救国の英雄扱いされてしまったはず……なのに。


うぅ、辛い……というか目立つつもりなど欠片もなかったのだが……ですが、極大殲滅魔法を無詠唱で連発してれば嫌でも目立つし、周囲への被害も甚大だったのかな……?





 ――――とにかく、やっとの事でギルドへ到着するとギルドマスターのお出迎えがあった。 はぁ……ま、仕方ない。



「イカルガ様、お待ちしておりました」


「その言い方やめてくれ……また面倒事を押し付けるつもりか?」


 無表情でこちらを見るギルドマスター。


 彼女は元Sランクの冒険者で、結婚を期に引退し、旦那が高齢のギルドマスターであったことからそのまま引き継ぐ形でその役に収まった人だ。


 彼女には様々な依頼を頼まれた……。

 ドラゴン討伐は勿論の事、本来なら王国騎士団総出であたる魔王封印の魔方陣再強化など、単身で秘密裏にやらされた。


 人妻の色香に踊らされた俺も俺だが……ですが。



「おい、妄想はそこまでにしろ。 あんた目上の人間に対する口のきき方知らないみたいだね」




 うわー、この人も礼儀に厳しい人だー。





「あなたのこと、みんな嫌ってるよ」




「あの……魔女の森の話をしませんか? もう辛いです……」



「あら、心脆いわね。 でも話が早くて助かるわ」



 無表情な彼女。冷たい雰囲気が俺の背筋を凍らせる。



「さっき噂で聞いたばかりなんですよ、詳しく聞かせてもらえますか?」



「ここじゃアレだから中に入りな」



 周囲を見渡すとギルド内に居る全ての冒険者達が俺を親の敵でも見るような眼差しで見ている。



 ひそひそ。



「マジかよ、あの女の腐ったような奴が竜殺しのヒエン=イカルガ……殺してぇ」



 ひそひそ。



「俺も殺したい」



 ひそひそ。



「……人族初のSSランク者と同時に災害指定された人族……あいつのせいで何人の冒険者がとばっちりを受けたか……死ねばいいのに」



 ひそひそ。



「ギルドに何の用よ、また片っ端から依頼をうけて形だけ成功の下、他の冒険者に迷惑かけるつもりかしら……アタシ死んでもいいからあいつだけは殺したい」



 ひそひそ。



「熱い……この胸の殺意が熱いわ……」



「許せない……、あいつのせいであたしは……。女の腐ったような顔であたしを無理やり……うぅ」






「「「「「殺そう!」」」」」






 だだだっ。




 俺は周囲の喧騒に心が砕けそうになりながらもカウンター裏の部屋へ逃げるように入る。



「凄い人気ね、ヒエン? あたし妬けちゃうわ」



「生まれてすいません」




「ふふっ」



 彼女の名前はシオリ……さん。


 顔立ちは名前の通りアジア系で、性格とは真逆なおっとり形美人。 スレンダーなボディでありながら主張すべきところはしっかりと主張する均整のとれたスタイルで、男なら誰しもが目を奪われる存在だ。


 なぜこんな美人があんなじじい……ナイスミドルと結婚したのか謎です。



「あなたのこと、みんな嫌ってるよ」



「どこでそんな噂を……まぁ、誤解ですよ」



「あなたのこと、みんな嫌ってるの」



「いや、あの……」



「あなたのこと、あたしも嫌ってる」





 …………。





「ちょっとヒエン? 何遠い目してるの?」



「生まれてすいません……」



 俺を睨み付けながらも仕事モードになるシオリ。



「実はつい先月のことなんだけど……」




 ―――――――。




「――と言う訳なのよ」



「Bランク様18人ですか……」



「王家からも何とかしろって依頼されてて……ご自慢の騎士団はこんな事に使えないんだってさ」



「相変わらずなんですね、王家の方々は」



 前回のドラゴン退治も対外的には王国騎士団が討伐した事になっているらしいが……ですが、人の口には戸は立てられない。 俺が倒したことは冒険者なら誰でも知っている事実……とはシオリさんの言葉。



「ま、金払いだけはいいからギルドとしては問題ないんだけどね」



「で、俺に依頼する内容は?」



 …………。


 …………。


 …………。


 ……うぅ。



「……家畜にも劣る、下賎なウジ虫である私は何をさせて頂けるのでしょうか?」



「秘密裏に魔女の森の調査及び、瘴気の発生場所の封印よ」



「秘密裏ですか……Bランク冒険者様方18人が戻らない事実プラス、こんな……このような素晴らしい奥部屋に私のようなウジ虫をお呼びになったのであれば、解決し……させて頂いたとしても冒険者様方は勘ぐらないでしょうか?」



 …………。


 …………。



「……建前上でいいのよ、誰が噂しようと王家が『王国騎士団が解決した』って御触れを出せば対外的にはそうなるし」



(セーフ)



「(ま、名誉なんかいらんから別に構わんがと心で言いつつ)……王家の方々も大変なんですね」



「他国になめられない為にもそういう事にしておきたいのよ。 馬鹿らしいけどね」



 魔女の森は人族が治めるグランデロン、亜人が治めるシャイニング、魔族が治めるカタストロフの三国の中心に位置しており、世界危険地域ランクがS指定となっている(瘴気発生前はBランクだった)。


 瘴気は種族を問わず身体に悪影響を及ぼす為、どの国も魔女の森に対して対策に躊躇していたが、名誉やプライドを重んじるグランデロンは1番に対策を掲げ、自らの国家の勇気を他国に発信したのだ。


 とはいえ実際は王家や貴族の人材は1人も使わず、いくらでも代えの利く冒険者(人族のみ)を使用したところがグランデロンの王家らしいと言えば王家らしい。



「冒険者様方18人はどのようにいたしましょうか?」



「それも調査に含まれるわ。 とりあえず生死だけでも確認出来れば上出来ね」



「あの、その……報酬は頂けるのでしょうか……」



「13コールよ」



「13……」



「豚野郎が」



「頂けるだけで幸せです」



 こほんと咳払いし、その場を誤魔化す。



「13コールだけじゃあまりにもアレだから

個人的に褒賞を出そうか?」


 いつものやりとりだ。

 ニヤリと笑うシオリさん。



「そうね……18人の冒険者達を連れ戻したら、あんたの汚らしいあそこ、潰れるまで踏んであげる」



「有り難き幸せ」



 いつも通り媚びへつらい、ギルドを出る。



 さて、さっさと終わらせてサラに会いに行こう。


 あの娘だけが人間扱いしてくれるんだもん。

チートになると礼儀というか一般常識がなくなるのは仕様?

今回の斑鳩飛燕の場合は卑屈過ぎますが。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ