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中学二年生  作者: 多摩屋
中学生編
8/33

第8話

 俺は慢心していた。



 異世界に来て2年。 ギルドランクはこの世界でも数人しか居ないSSとなり、ドラゴンすら単身で討伐可能な程の力をつけた。


 なのに、俺の力は奴には通用しなかった。






 ――――魔女の森。


 そう呼ばれる森が王都から北に250キロ程行ったところにある。


 最近その森で大量の瘴気が確認されたとギルドに報告が入り、平均Bランクの冒険者パーティー、その数18人が調査に向かったが1ヶ月を過ぎても誰1人帰って来なかった。



 そんな状況など露知らず、ふらりと王都グランデロンに立ち寄った俺は久しぶりに会えるであろうサラ=ブライトの事を想い、顔を綻ばせていた。




「おぉ!? イカルガさんじゃねぇか! 王都にいつ来たんだい!?」



 王都に着いた途端に魚売りのオッサンに話し掛けられる。 ちなみに名前がオッサンで、33歳の独身だ。(某RPGのハッ○ンの発音)。




「さっき着いたばかりだよ、オッサン。 相変わらず商売に精を出してるみたいだな」



「いやいや、最近は景気が悪くてしゃーねーよ。 魔女の森のせいで……」


「魔女の森?」


「あら? イカルガさんともあろうお方が知らないんでさぁ?」


「だから来たばかりだって」


「ガハハ、そりゃそうか! いやね、最近大王都の北にある魔女の森ってとこに……てかギルドで聞いた方が詳しく聞けると思いますぜ?」



「それもそうか。 邪魔したな」


「いえいえ、今度はウチの魚も買って下さいよ、旦那!」



 オッサンに笑顔で見送られ、俺はギルドへ向かう。 その間にも見回りの兵士や酒場の女主人、噴水の近くで遊んでいた子供達などなどにことごとく話し掛けられ、ギルドまで5分のところを1時間も掛かってしまった。


 半年前にある事件があり、それを単身で解決してしまったがために救国の英雄扱いされてしまったのだ。 人気者は辛い……というか目立つつもりなど欠片もなかったのだが、極大殲滅魔法を無詠唱で連発してれば嫌でも目立つか……。







 ――――とにかく、やっとの事でギルドへ到着するとギルドマスターのお出迎えがあった。 はぁ……ま、仕方ない。



「イカルガ様、お待ちしておりました」


「その言い方やめてくれ……また面倒事を押し付けるつもりか?」


 にっこりと笑うギルドマスター。


 彼女は元Sランクの冒険者で、結婚を期に引退し、旦那が高齢のギルドマスターであったことからそのまま引き継ぐ形でその役に収まった人だ。


 彼女には様々な依頼を頼まれた……。

 ドラゴン討伐は勿論の事、本来なら王国騎士団総出であたる魔王封印の魔方陣再強化など、単身で秘密裏にやらされた。


 人妻の色香に踊らされた俺も俺だが……。



「ふふ、仕事モードのわたしは嫌い?」


「……魔女の森だろ?」


「あら、つれないわね。 でも話が早くて助かるわ」



 髪をかきあげ、微笑む彼女。ふわりと花の香りが俺の鼻腔をくすぐる。



「さっき噂で聞いたばかりなんだ、詳しく聞かせてくれ」



「ここじゃアレだから中に入って」



 周囲を見渡すとギルド内に居る全ての冒険者達が俺を羨望の眼差しで見ている。



 ひそひそ。


「マジかよ、あの女みたいな顔した奴が竜殺しのヒエン=イカルガ……」


 ひそひそ。


「俺、危なく声掛けようとしちゃったよ……めちゃタイプだ」


 ひそひそ。


「……人族初のSSランク者……イカルガ様の為だけにSSSランクが新設されるなんて噂もあるのよ……素敵っ」


 ひそひそ。


「あの方とパーティーが組めたらアタシ死んでもいいっ」


 ひそひそ。


「あの熱い夜が忘れられないわ……」


「なにっ!? あんたイカルガ様と何かあったの!? 許せないっ!」


「少女のようなお顔であたしの……きゃーっ、これ以上言えなーいっ」



「きぃぃーぃ! 羨ましいっ!」






 …………………。




 俺は周囲の喧騒にうんざりとしながらもカウンター裏の部屋に入る。



「凄い人気ね、ヒエン? あたし妬けちゃうわ」



「よく言うよ、俺がいくら誘ってもなびかない癖に」



「誘ってくれた事なんかあったかしら?」



「……もういい」



「ふふっ」



 彼女の名前はシオリ。


 顔立ちは名前の通りアジア系で、性格とは真逆なおっとり形美人。 スレンダーなボディでありながら主張すべきところはしっかりと主張する均整のとれたスタイルで、男なら誰しもが目を奪われる存在だ。


 なぜこんな美人があんなじじいと結婚したのか謎だ。



「あなたも変わったわねー、出会った頃はウブなお子様だったのに。 そんな顔して今では性の化け物らしいじゃない」



「化け物って……どこでそんな情報を……まぁ、時が経てば人も変わるさ」



 うーん、サラの影響かな……。


 何せあれからサラを平民にするまでの間に彼女から求められ続けたからな……。 俺も調子に乗ってサラが壊れるほど抱いたから彼女ばかりを攻められないが。


 ま、あれで俺が目覚めてしまったのはどうしようもない自然の流れだ。 サラも自分だけではどうにもならないから他にも女を囲えなんて言い出す始末だし。



「ちょっとヒエン? 何遠い目してるの?」


「何でもない。 ほら仕事仕事」



 首を傾げつつも本当の仕事モードになるシオリ。



「実はつい先月のことなんだけど……」




 ―――――――。




「――と言う訳なのよ」


「Bランク18人がねぇ……」


「王家からも何とかしろって依頼されてて……ご自慢の騎士団はこんな事に使えないんだってさ」


「相変わらずか、王家の馬鹿どもは」



 前回のドラゴン退治も対外的には王国騎士団が討伐した事になっているらしいが、人の口には戸は立てられない。 俺が倒したことは冒険者なら誰でも知っている事実……とはシオリの言葉。



「ま、金払いだけはいいからギルドとしては問題ないんだけどね」



「で、俺に依頼する内容は?」



「秘密裏に魔女の森の調査及び、瘴気の発生場所の封印よ」



「秘密裏って……Bランク冒険者18人が戻らない事実プラス、こんなとこに俺を呼び込んだんだ、解決したとしても冒険者達は絶対に勘ぐるだろう?」



「建前上でいいのよ、誰が噂しようと王家が『王国騎士団が解決した』って御触れを出せば対外的にはそうなるし」



「ま、名誉なんかいらんから別に構わんが……王家のプライドか」



「他国になめられない為にもそういう事にしておきたいのよ。 馬鹿らしいけどね」



 魔女の森は人族が治めるグランデロン、亜人が治めるシャイニング、魔族が治めるカタストロフの三国の中心に位置しており、世界危険地域ランクがS指定となっている(瘴気発生前はBランクだった)。


 瘴気は種族を問わず身体に悪影響を及ぼす為、どの国も魔女の森に対して対策に躊躇していたが、名誉やプライドを重んじるグランデロンは1番に対策を掲げ、自らの国家の勇気を他国に発信したのだ。


 とはいえ実際は王家や貴族の人材は1人も使わず、いくらでも代えの利く冒険者(人族のみ)を使用したところがグランデロンの王家らしいと言えば王家らしい。



「冒険者18人はどうする?」


「それも調査に含まれるわ。 とりあえず生死だけでも確認出来れば上出来ね」


「で、報酬は?」


「1000万コールよ」


「サラ1人分か……」


「サラ?」


「いや、何でもない」


 こほんと咳払いし、その場を誤魔化す。


「個人的に褒賞はないのか?」


 いつものやりとりだ。

 彼女は俺がいくら言い寄ってもキスのひとつもさせてくれない。


「そうね……18人の冒険者達を連れ戻してくれたら――――してあげようかな~」


「期待しないでおくよ」


 いつも通り苦笑いを返し、ギルドを出る。



 さて、さっさと終わらせてサラに会いに行こう。 今日も絶好のセックス日和だ。

毎回オチを考えられる程

頭良くないのです。


ごめりんこ。

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