第13話
DURACUE世界。
DURACUE本部。
オペレーター用ロッカールームにて。
「あ、キャミル、もうあがり?」
「ローラ先輩お疲れ様です! 今日担当になった人がログアウトしたので、あがりまーす。今日の人は大変でしたよ……。ずっとレベル上げをしてるので、ずっとアナウンスし通しでしたもん」
「分かる分かるー。 あたし昨日は新人の担当だったんだけど、そいつさ、スライムを延々と狩ってるの。親の敵かって言うくらい」
「新人の担当って大変みたいですねー。レベルも上がり易いし、レベルアップ時のアナウンスなんて、ひと息で言わなきゃだから息切れしますもんね」
「まあそれも大変なんだけど、何よりさ、今の時期のスライム平原ってアレじゃない?」
「アレ?…………あ、繁殖期か!」
「そうそう、んでスライム達が交尾してた訳だけどさ。今回のあたしの担当がね、モテない君でさぁ、スライムに嫉妬の嵐(笑)」
「あはは。気持ちは分からないでもないですけどね、彼氏居ない歴1年の私としては(涙)」
「でさ、からかってやろうと思ってさ、スライムの気持ちをアテレコしてみた訳」
「アテレコ?」
「『私達は幸せな毎日を過ごしてきた。そう、この人間に会うまでは……。や、やめて!彼を殺さないで!イヤーッ!』的な感じで」
「先輩、超ウケる。それでそれで?」
「暫く呆然としてた(笑)。んでその後あたしの心を抉るアナウンスがお気に召さなかったのか、イヤホン外されたけどね」
「先輩、自由過ぎますよ〜。私はせいぜいマニュアル通りやるのが精一杯ですもん。常時【タカの目】でMPだって枯渇気味ですし……。私、最大MP少ないんですよねぇ」
「大丈夫だよ。アナウンス業務でもレベルは上がるし、すぐ最大MPも上がるって。あたしも最初はキツかったけど慣れたしね」
「はい。頑張ります!」
「じゃ、お疲れ様。ゆっくり休んでね」
「はーい。失礼しまーす」
さてと、今日の担当は……あ、また新人だし。……あ!彼だ!期待のルーキー、コエンザイルガくん。
うふふ、役得役得。
今日は1オクターブ高めの声で頑張っちゃおうっと。
地球世界。
株式会社Fake Worldがあるビルの地下。
ログイン、ログアウト施設にて。
「ふんふふーん♪」
「なんだタロウ、やけに上機嫌じゃないか。何かいい事でもあったのか?」
「うわっ、先輩居たんですか!? まだ休憩時間中ですよね!?」
「なんだ、居ちゃマズいのか」
「いや、その、この時間は僕がひとりでしっかりやろうかなーと思ってまして……」
「怪しいな。お前がそんな勤労意欲ある訳が無い。吐け」
「う……、あの、その」
ヂリリリリーン。
「お、ログアウト来るぞ。準備しろ、タロウ」
「あ、は、はい……」
ぶりりっ。
「ん? 女……? いや、ちゃんと付いてるモン付いてるから男か」
「何見てるんスか!」
「何ってチ○コだよ。間違えてこっちに女を送ってきたかと思ったからな、確認だ」
「れ、冷静過ぎますよ!よ、よくそんなマジマジと見れますね!?」
「ほほぉ、読めたぞタロウ。お前、コイツが目当てだったな?」
「な、な、な、なん、何のことっスか? ぼ、ぼかぁ真面目に仕事をし、してるだけっス」
「まあ無理もないか。半年以上ここに缶詰で女っ気なんか全くないからな。こんな見目麗しいヤツが現れたらそんな気分になってもおかしくはない」
「…………ですよね? 僕はおかしくないですよね!? こんな美人、今まで見た事ないし、男とか女とかそういうのを超えた美しさというかエロさがこの人にはある気がして!」
「…………」
「何で引いてるんスか!」
「お前、やっぱり両方イケる口か……。頼むから俺の半径3メートル以内に来るなよ」
「違いますから! 僕はどストレートですから!」
「DURACUE規定、第2章、ログイン/ログアウトに関する規約の第4項を暗唱してみろ」
「……ログイン、ログアウト時のプレイヤーに対し移動、衣服の着替え以外の身体的接触を禁ずる……で、でもゆっくり眺めるくらいなら!」
「DURACUE規定、第2章、ログイン/ログアウトに関する規約の第7項」
「……移動、衣服の着替えを含め5分以内に完了させる事」
「今、何分経った?」
「2分くらいです……」
「さっさとやれ。いや、危ねぇか。こいつは俺がやる」
(せっかく先輩が休憩に行く時間を操作して、この時間に1人になれるようにしたのに……)
「なぁ、タロウ。俺からも事務局にお前の外出許可を早めるように言っておくからよ。地球の娼館もなかなかいいもんだぞ。今ならまだお前も『こっち側』に戻って来られるはずだ」
「……すいません。僕、僕は、グスッ」
「俺のオススメは『亀頭戦士ガンナメ』ってトコだ。お前の趣向にも合うだろう」
「先輩……詳しくお願いします」