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中学二年生  作者: 多摩屋
ニート編
29/33

第11話


 村長宅前に到着。


 しかし中に入ろうとしたら、じじい以外の気配を感じたので様子を伺う。しょぼいログハウスなので会話も筒抜けだ。



「村長、聞いてるのか?」




 ハッ。

 このソプラノボイス……間違いない。


 奴だ。





「村長、やはりこれは貰い過ぎなんじゃないだろうか。薪割りの手伝いで1000ゴールドは流石に……。親切に紹介して頂いたクエストに文句を言うつもりはないのだが……」



「ほっほっほ、きょうもいいてんきじゃのう」



「あと、最初のクエストの時も50ゴールドをくれた後、なぜこっそり私のポケットに500ゴールドを入れたんだ?他のプレイヤー達に聞いても初期クエストは皆100ゴールドしか貰ってないと聞いたぞ?」



「ほっほっほ、きょうもいいてんきじゃのう」



「特別扱いは困る。僕は普通にゲームを楽しみたいだけなのに……」







 ――――――な ん だ と ?



 奴のリアルでの一人称は『僕』なのか!

 同じだね!




 違う、そこじゃない!



 色々と突っ込みたいところはあるけど、まずは『他のプレイヤーは皆、初期クエ報酬が100ゴールド』だ。


 僕、50ゴールドでしたが?

 何その差は。


 んで、何で奴は550ゴールド?

 こっそりポケットに入れた?


 僕が居たから「この不細工には内緒じゃよ(ニヤリ)」って事?



 親切に紹介してもらった薪割りクエ?

 知らんぞ、僕は。聞いてない。





 ……………………。


 ドンガラガッシャンガッシャーン!





「おい!どういう事だ、じじい!!」



 窓をぶち破り、中に転がり込む。

 怒り具合を演出です。




「……ほっほっほ、きょうもいいてんきじゃのう」



「そうですね〜。雲ひとつ無い晴天でホントに気持ちが良い。 一緒にピクニックでも行きまふざけんなっ!」



「や、やめい、こら、ガクガク揺らすでない!入れ歯が落ちるじゃろがー!フガフガ」



 やっぱり中身居たな、この野郎。



「じじい。お前、差別したな? 僕とコエンザイムQ10のみならず、他のプレイヤーと僕を比べても底辺の扱いにしたな?」



「……ほっほっほ、きょうもいいてんきじゃのう」





 否定しない、か……。

 ほぅ、なるほどなるほど……。



 あれ、こんな所にひのきの棒があるな。

 急に人の頭をカチ割りたくなってきたよ。

 お、丁度良く手の届く距離に頭がある。

 こりゃ振り下ろすしかないよね。




「こ、こりゃ、ヒエンイカルガ。何を物騒なことをブツブツ言っとるんじゃ……。冗談じゃろ?冗談じゃよな……?」



 死ねばいいと思うよ。(にっこり)




「ま、待て!待つんだ、ヒエンイカルガ殿!」



 じじいの頭ギリギリでひのきの棒を止める。



「何だよ、コエンザイムQ10。文句あんのか」



「……Q10? た、例えキミの言った事が事実でも、ご老人に手をあげるのは如何なものかと!」




 心までお綺麗なんですなぁ超絶イケメンともなると。素晴らしいですなぁ。



「ならお前が僕の損失を補填してくれんのか? …………おい、随分いい装備してるじゃねぇか。僕が貰うはずの報酬をお前が貰って楽しくショッピングをした訳ですか、なるほどなるほど」



「いや、その、ちょっと貰い過ぎかなと思ったけど、みんなそうだと思ってたからであって、別に悪気があってとかじゃないし、あの、その……」



 僕の見立てではこいつの装備は……。


 武器:鉄の槍

  盾:青銅の盾

  鎧:青銅の鎧

  兜:羽飾り

  靴:青銅のブーツ




 鉄の槍なんてこの村の武器屋になかったぞ。

 どうやって手に入れたんだ?

 しかも羽飾りなら僕も装備できるはずなのに武器屋のやつは何故リストに挙げなかった。まさか、似合わないから除外された?クソッ。


 ますます許せん。




「ほぉ、悪気が無ければ何をやってもいいと。そう言う訳ですか。なるほどなるほど」




 気付けば普通に喋れてる僕が居ましたよっと。怒りのあまり、それどころじゃなくなっているだけですけど。



 人間変わるものですねー。





「やめぃ! コエンザイルガは悪くない!全てワシが悪いんじゃ!」



「その通りだよ、糞じじい。どの面下げてそんなセリフを言えるんだ、お前は」



 再びひのきの棒を振り上げる。



「ま、待て待て! とは言ってもこのゲームには隠しパラメータで『好感度』というものがあってじゃな、それによってNPCの対応も変わるんじゃよー!コエンザイルガは多分『かっこよさ』がむちゃくちゃ高いせいで、好感度もデフォで高いんじゃよ……」



「それと僕を底辺扱いした事はどう繋がるんだ。……おい、まさか僕が不細工だから報酬を減らしたとでも言うつもりか? 」




 ……………………。




 うん、カチ割ろう。

 死んで償ってもらおう。



「ま、待て待て!ワシが悪かった!今更報酬を追加することは出来んが、金になるクエストを教えるから勘弁なのじゃよー!」



 は?

 そんなんで許す訳ねーだろ。

 そうだな、まずは……。



「な、何をする気じゃ!か弱い老人をいたぶる趣味でもあるのか!……ん?こ、これ、何をしておる」



 がさごそと家中を漁る。


 お、あるじゃねーかよ。クエストの報酬を払うぐらいだ、溜め込んでてもおかしくはないわな。



「な、な、何をしとるか!!」



「何って。僕の心を踏みにじった慰謝料を貰うに決まっているだろうが」



 おし、大体こんなもんか。金貨が12枚と銀貨が80枚と銅貨が100枚くらい。銅貨が1枚で10ゴールドなんだから、多分金貨が1,000ゴールドで銀貨が100ゴールドだろう。



 大体21,000ゴールドってとこだ。




「わ、わしの全財産が……」



「ちょ、ちょっと……ヒエンイカルガ殿。流石にそれは酷いんじゃないだろうか。村長さんにも生活があるだろうし、有り金を全てなんて……強盗みたいなことは、ね?やめよう?」




 後半ややデレやがった。

 く、眩しい。可愛い。こいつ、分かっててやってるんじゃなかろうな。




「なら半分残してやってもいいが、条件がある」







 ――――今日から1ヶ月間、僕とパーティを組め。それが僕の出した条件だ。







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