第9話
ログイン2日目。
ログインしたら、またあのムカつく神父の居るあの教会だった。んで何故か神父は顔中に包帯を巻いて、右手を吊っていたけど怪我でもしたんか?
まさかねー。日替わりでビジュアルチェンジする設定でもあるんだろう。なぜに包帯姿なのかは分からんけども。
ま、いっか。
今日もVR世界に来ちゃいましたよっと。
学校とか行ってないから時間はいくらでもある。ふふっ、毎日通い詰めてレベル上げして、トッププレイヤーになったるわ!
学校や会社があるプレイヤーの皆さーん、ご苦労様でーす。すいすい抜いちゃうので勘弁な!あははっ。
さてさて、今僕が居る場所だけど、その名も『スライムの平原』だ。捻り無し。
村の中央に案内板みたいのがあって、村を出て東に少し行ったとこに初心者にはうってつけの狩り場『スライムの平原』があると書いてあった。
早速来てみたんだけど居るわ居るわ、スライムの群れ。どうやらノンアクティブモンスターの設定らしく、襲われることはなかった。
ただ、予定外だったのは……。
他のプレイヤーが4人ほど居たことだ。
邪魔くさい。俺の狩り場に……クソッ。
みんな初期装備姿で右手には『ひのきのぼう』だ。同じスライムを3人で叩いている。
ダサっ。スライムくらい1人で狩れよ。
あれ?1人だけ『こんぼう』を使ってソロってるぞ。
うわ、スライムを潰した……うへぇ、グロい。目玉がコロコロ転がってるし……。
ザ 筋肉自慢。
居るよねー、あーいう奴。
布の服の胸元をわざと大きくはだけて「俺の筋肉を見ろ」的な。バカだねー、ここはリアルじゃないんだよ?筋力だって全てパラメータの数値上のものだっての。
でも何でこんぼうを装備出来るんだ?
あいつのレベルが上がって単純に『ちから』が底上げされただけだよな。
同じレベル1で『ちから』に差があるとしたらリアルを反映してるってことになっちまう。さすがにそんな不公平なことしないよな?……しないよな、運営?
まぁどうでもいいや、あんな肉男。
無視無視。
よし!初めての戦闘だ!
先手必勝ぉぉぉぉぉっ!
『スライムがあらわれた!
スライムはこちらが身構えるより先に襲いかかってきた!』
エー。なんでー?
『スライムの攻撃!
ヒエンイカルガは6のダメージを受けた!』
痛っってぇ!!
ぷよぷよゼリー状のくせに、体当たりがめちゃ痛いんだけど!
この野郎っ!
べしっ!
『ヒエンイカルガの攻撃!
ミス、ダメージを与えられない』
エー。なんでー?
結果、ボコられました。
こっちの攻撃当たったの1回だけ。
与えたダメージは1のみ。
2回目のぷよアタックであばら折れた。
3回目は痛恨の一撃。
喉元にガブリ。ぶちゅぶちぃって音がした。
生まれてはじめて血を吐いた。
死ぬ程痛い。てか死んだ。
教会にて、ぐんもーにーん。
…………怖ぇから!!
何だよ、あの痛みは!
もう怖くて戦えねぇよ!
これ何て無理ゲーだよ!
やめよう、このゲームやめよう。
トラウマになるわ。
と、今までの僕ならやめていただろう。
やめんよ。ヤツを打ち負かし、本当の意味で僕が斑鳩飛燕になる日まで。
こんなに萌える……いや、燃えるのは生まれて初めてかもしれない。ふふっ、僕らしくも無「おぉ、しんでしまうとはなさけ「うるせぇな!!」な……」
「今、回想の最中だろうがっ!それにそれは神父のセリフじゃなくて、ドラ○エⅠⅡあたりの王様のセリフだ!グズが!」
「…………」
まったく不愉快だ!
生き返ったと思ったらこの糞神父の顔だ。
もうこの顔を見るのも嫌だ。
死なないよう、最善の注意を払おう。
何でこんなにこいつが嫌いなのか分からんが、とにかく大嫌いだ。死ねばいいのに。ログアウト時にまた来なきゃいけないと思うとうんざりする。
「もうお前は喋るな。いいな分かったな?俺が言うことだけを淡々とやればいい。お馬鹿なNPCのお前でも言ってることは分かるよな?分かりまちゅかー?」
「…………」
ん?
こめかみあたりがヒクヒクしてるな。
いや、気のせいだろう。
「そうだ、それでいい。出来れば白い布でも頭から被れば尚いい。お前の顔を二度と見なくて済むからな」
思いきり糞神父に向けて溜め息をついて外に出る。駄目だ、やっぱりあいつは遺伝子レベルでソリが合わない。NPCのくせに。
早く次の町に行こう……。